新型コロナウィルス感染症の軽症患者にPCR検査を行う事に付いては、
①「特効的治療がない以上陽性でも陰性でも結局自宅待機だから検査の意味がない。又陰性患者には偽陰性が含まれるが、偽陰性患者が間違って出歩いて却って感染を広げてしまう」という反対論
と、
②「軽症患者に検査をせず自宅待機を求めた場合、それが守られると考えるのは現実的でなく、真陽性患者が出歩いて感染を広げてしまう。真陽性患者が早期に診断されることでより厳格に出歩かなくなるし、特効的治療がないといっても、症状が軽いうちに厳格に療養する事で軽症・早期に治療する可能性は高い。偽陰性の患者が出歩くリスクは確かにあるが、症状があるうちは自宅で待機するように求めれば、そのリスクは①において陽性患者が出歩くリスクと比べて特に高いわけではない」という賛成論
が拮抗していますので、両者のメリット、デメリットを論じたいと思います。
先ず、
罹患率 x
PCR検査 感度s
①PCRしない人 N人 出歩く確率 p
②PCRする人 N人 検査陰性の人が出歩く確率 q
とします。
すると
①で真陽性患者で出歩く人数: Nxp
②で偽陰性(真陽性)患者で出歩く人数: Nx(1-s)q
で
s=0.7とすると
(a) p>0.3q ならば Nxp>Nx(1-s)q
(b)p<0.3q ならば Nxp<Nx(1-s)q
したがって、仮に
p(PCR検査をしない人が出歩く確率)~q(PCR検査で陰性になった人が出歩く確率)
とするなら、(a)で、②のPCR検査をした方が感染拡大を防げることになります。
これは、PCR検査をした方が、真陽性の人が(施設に入ったり入院したりして)完全に出歩かなくなるので、pがすごく小さいとか、qがすごく大きいとかが無ければ②のほうが真陽性の患者が出歩く確率は低くなるという、ある意味当然のことを反映したものです。
ここで賛成論の立場からは、qをすごく大きくしないために、②の陰性の人に「症状がある時は出歩かないで下さい」と言うことになりますが 、それでも②の陰性の人にとっては、症状が治りかけ位で出歩けるメリットがあり、その時はすでにウィルスの排出が減っていると思われるので、それ程qは大きくなりません。
またこの際、②の陰性の人は、自らが新型コロナウィルスに罹ったかどうかでやきもきすることなく、安心して療養できるメリットもあり、むしろ、「症状があるうちは自宅で療養する」ということのコンプライアンスは上がりうると思われます(そうでないと、診断を求めて病院を渡り歩き、感染を拡大してしまう恐れもあります)。
以上を纏めると、
軽症者へのPCR検査を行うことのメリットとデメリットは
(メリット)
・出歩く人がNxpからNx(1-s)qに下がる
・陰性の人が、症状が治りかけで出歩ける
・陰性の人が、安心して療養できる
(デメリット)
・PCRをするコストがかかる
・陽性者を施設に収容・入院させる・自宅療養させるコストがかかる
であり、これらをどう比較衡量するかで軽症者へのPCR検査を行うべきかどうかが決するという事だと考えられます。
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