復党問題と総裁の権力

  • 米山 隆一
  • at 2006/11/23 06:12:08

 先の衆議院議員選挙で郵政民営化法案に反対し、党から公認されなかった方々の復党が、まもなく実現するとの報道がなされています。
 
 この問題は極めて政治的で、どちらにすべきかと言う判断は困難です。

「復党」はあくまで「復党」であって「公認」ではありません。政治の世界で政党間、政治家間の合従連衡は日常茶飯事です。「『過去のいきさつはどうあれ現在意見を同じくするなら手を組む』と言うことを否定したら政治は成り立たない」と言う容認派の意見は現実的には正しいと思います。

 しかしそれは一方では「原則を離れた選挙対策」と言う批判を避けがたいでしょうし、そうは言っても、いったん「復党」すれば、それはやがて公認争いにつながります。その火種を抱え、党内抗争に陰に陽にエネルギーを費やすのは、果たしてプラスか、と言う反対派の懸念もそれはそれでもっともだと思います。

 ただ、よく言われているこれらの問題の他に私は、この復党問題には、比較的言われていないもう一つの側面があると思います。それは、「小泉首相が変容させた自民党総裁の権力を部分的にせよ元に戻すだろう」と言うことです。

 私は小泉首相の最大の功績は、「総理総裁の権力を確立したこと」であったと思っています。かつて自民党総裁は総裁といえども各派閥の領袖の意見を聞かなければ何も出来ませんでした。その原因は複数ありますが、党三役を始めとする党の人事が派閥均衡的になされ、幹事長を始めとする党の役員が他派閥出身であったこと、中選挙区制の下では、「党」の支援がなくても当選が可能であったこと、等が代表的なものだと思います。小泉首相は一本釣りによる人事で党役員を自派(派閥は別な場合もありましたが)で固め、党の支援がなければ当選が難しい小選挙区制下で公認権を一手に握ることで、「総裁」の権力を絶対的なものにしました。その善悪には議論もありますが、今まで当たり前だった物事のあり方を変える「改革」を行うには、そういった「絶対的権力」は不可欠だったのだろうと、私は思います。

 「権力」と言うのは、通常なんらかの「力」を背景とします。その「力」は実際に使われる必要はありませんが、少なくとも、「使うかもしれないし、使われたら怖い」と思わせることを要します。小泉首相の場合、それは「公認権」であり、「落選の恐怖」であったわけです。現在も公認権は党執行部にあり、党の支援無しで小選挙区制で勝ち残ることが困難であることに変わりはありません。その意味で、「復党」が「総裁の権力の減少」を即座にもたらすわけでは勿論ありません。しかし、例え「総裁」に逆らっても数年で復帰できると言う前例を作ることは、総裁の力の「怖さ」を、現実として幾分か減らします。それは、直接ではなくても、やがて「総裁の権力」の何分の一かを減らすことにつながるでしょう。

 それは実のところ小泉首相の権力に疲れた自民党には必要なことなのかもしれません。又もしかしたら安倍総裁の権力はむしろ、「公認権」と伴に「復党権」を握ることで強化されるのかもしれません。しかし、いずれにせよこの復党問題が、「総裁の権力」に何らかの変化をもたらすことに、間違いはないでしょう。その真の効果は、これからの政局運営と、最終的には次の解散時にどの様な判断がなされるかによって決まるのだと私は思います。


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コメント

権力闘争に負けた人が、どのツラ下げてのこのこと復党するのでしょうね? いかに理念・政策・信念がないかを自白しているようなものです。 また、民主党も、自民党内部の権力闘争に負けた人と、「大地」と、共産党・社民党と、全く異質な者と連合して自民党を潰そうとは、バラエティー番組を観ているようです。

  • Posted by エミュー
  • at 2006/11/23 07:38:29

エミューさんへ。 貴殿のご意見を否定するものではありませんが、一つお聞きします。 生まれも育ちも政治理念も大きく違う「自民党と公明党」が、連立を組んで数年を経過しましたが、この関係はどのように理解すればよいのでしょうか?

  • Posted by sinkoh
  • at 2006/11/24 07:53:23

↑ sinkoh 様 私は庶民の民間人なので、推測の域ですが、率直に言って、公明党は小泉政権で「利用」しているだけです。 公明党・創価学会は、自民党を操り利用しているつもりでしょうが、実際はその逆です。 対立するより、「政権」という飴を与えてなだめているほうが得策ですから。 しかし、自民党が「その気」になれば、公明とを潰すのなんかかんたんじゃないでしょうか?なぜなら、あの朝鮮総連と部落解放同盟の横暴を鎮圧したのですから。 公明党も、池田先生の「個人商店」に過ぎず、池田先生もご高齢でかなりの病状の悪化だと週刊誌にありました。 「Xデー」の時は・・・・・。

  • Posted by エミュー
  • at 2006/11/24 14:50:05

sinkoh さん 自民党が、公明党を利用しているだけでしょう。

  • Posted by エミュー
  • at 2006/11/24 19:21:53

復党問題が「総裁の権力」に何らかの変化をもたらす、という視点は非常に興味深いですね。 経過を見守りたいと思います。

  • Posted by ぬこ
  • at 2006/11/25 00:13:50

今回の復党問題、バラエティを見ているようだとの言葉、非常に同感です。 特別に政治意識の高い私では無いですが、何でもありだなぁ感は否めません。せっかくあそこまで信念を貫いて、良きにせよ悪きにせよ何かを変えようとしていたメッセージは私にも解りやすい形で見えたのですが・・・。 勘違いでしたでしょうか?

  • Posted by 民間人
  • at 2006/11/25 15:23:31

エミューさん、sinkohさん、ぬこさん、民間人さん、コメント有難うございます。 こういうことを言うと怒られるのかも知れないのですが、私は、自民党、公明党、民主党を含め、全ての政党の離合集散自体は、否定されるべきものではないと思っています。政治は現実との戦いです。立場が違うもの同士で納得できる結論を導く為の「多数派工作」を否定しては、そもそも政治の存在理由がなくなってしまうように思います。 重要なのは、守らなければならない原則が守られることと、「何故、何の為に」立場が違う同士で手を組んでいるのかの説明が明確になされることではないでしょうか。 公明党さんの存立基盤に異論のある方もおられるとは思いますが、掲げている政策を先入観なく見てみると、「モデレートな中道」と言う形容が当てはまると思いますし、公明党の先生方の勉強熱心さは、つとに知られるところです。いくつかの点で相互に譲れない相違点はありますが、「政策を実現する為に手を組む」ことそれ自体は、私は政治家として正しいことだと思っています。 他党の事情に口を挟むのは恐縮ですが、民主党さんが左右両極に非常に触れ幅が広いことは、自他共にも認めるところでしょう。傍でみていて「政策の整合性を取るのに苦労するだろうな」とは思うのですが、「日本に政権交代可能な二大政党制を根付かせる為に、小異は捨てて反自民で結集するべきである」と言う理念それ自体は、認められて良いように思います。自民党の為すべきは、民主党の批判の正しい部分は取り入れ、非現実的であったり整合性が取れていなかったりする部分はそれを明確に指摘することで、政策論争の質を高めていくことだと思います。 自民党の復党問題に関して、私自身は、実はどちらの選択肢もありうると思っています。やや議論が錯綜していますが、復党は「公認争い」の火種にはなりますが、「公認争いそのもの」ではありません。「公認に関しては、昨年選挙において、党公認で立候補した議員を優先する。それが解散までして郵政民営化を進めた政党としての筋だし、党議拘束がかかった議案に反対票を投じた以上は、その点は覚悟していたはずだと思う。ただそれを理解したうえで、現自民党と協力してこれからの自民党をつくって行こうと言うのであれば、自民党は開かれた政党であり、拒否するする理由は無い。また逆に、優先される議員もそれはあくまで『優先』に過ぎず、努力を怠れば状況次第で交代もありうることは、政治の世界に飛び込んだ以上覚悟しておくべきことだ。」と説明するなら、それは一つのあり方だと思います。又逆に、「党の機関決定に個人として反対意見を有するのは自由だし、議論も歓迎される。しかし一旦党議拘束がかかった以上、公的な行動はそれに従うのが公人としての筋である。そうしなかった以上復党を認めないのは、公党としての自民党の筋である。」と明言するのも又、一つの見識でしょう。問題は残念なことに、その「何故、何の為」かの説明が必ずしも明白でないことだと思います。トップの明快な説明を、自民党も国民も、待っています。

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