米山隆一の10年先のために

　昨日政府の提示した田波総裁案が本日参議院で否決され、日銀総裁は空席となりました。既にマスコミで多くの解説がなされていますので詳述するつもりはありませんが、率直に言って、今回も、与野党双方に「市場と会話できる金融のプロを選ぼう」という気概は希薄だったように思います。

　折しも市場では、サブプライムローンにゆれるドルの信認が低下し、産油国・新興国・および金融緩和で余った資金は原油、金、穀物をはじめとする所謂 comodity に向かっています。世界経済は、ドル一極支配から多極支配に向かう歴史的転換点にある可能性があります。欧米各国の中央銀行は、ドル支配体制の維持なり新たな多極体制の構築なりに、連携して動き出すでしょう。この様な時に、「新たな金融秩序の構築にリーダーシップを発揮する」どころか、単に総裁の椅子を空席にしないという最低限の条件さえ満たせなければ、日本の国際経済・国際政治におけるプレゼンスは決定的に低下するでしょう。そしておそらくは、「ドル・ユーロ・元」の３極による新たな金融秩序が構成され、日本は、自らの運命を自ら決める権利を持たない国、他国が決めた運命を受け入れるしかない国になるでしょう。

　それを防ぐ為に、そして何より今目の前にある危機に迅速に対応するために、私は、与野党で「日銀総裁選考委員会」を開き、この委員会が期限を決めて候補を選出することを提案します。実際事ここに及んでは、そういった与野党協調体制ができなければ、日銀総裁を受けることは誰にとっても困難になっています。既に名前が挙がっている黒田前財務官、私のみが名前を挙げている榊原前財務官を始め、日本にも名うての金融のプロは複数います（私があげたのは財務省の方だけですが、民間にも勿論おられます）。政治には、日本の将来をかけて、世界でリーダーシップを発揮できる人材を選び、説得し、サポートする義務があります。