先の演説で「失業者一人あたりに200万円を」と言ったところうまく伝わらなくて、「おまえはあほか」と言う反応までいただいたのですが(苦笑)、実は私は大まじめですので、ちょっと説明しようと思います。
今までの雇用対策、景気対策は基本的には「事業」を政府が発注することで、「仕事」を作ってきました。これが上手くいくなら、単純に「お金」を配るより、「仕事」を配る方が国民のモラルを保つ上で有効なのは当然だと思います。しかし現在すでに建設業界は700万人の雇用を抱えています。この雇用を保つだけでも大変なのに、ここに新たに100万人(失業率が現在の4%から5.5%となると新たに100万人の失業者が生ずることになります)の雇用を増やすとなったら、その費用は莫大なものになってしまいます。
現在日本の建設業のGDPに占める割合は8%で、およそ40兆円の付加価値を作っています。きわめて単純に、人を700万人から800万人にするためには同じ割合で売り上げを増やさなければならないとすると、約6兆円の財政出動が必要になります。すると100万人の雇用を維持するのに、1人あたり600万円を要することになってしまいます(建設会社としては、600万円売り上げが増えたら、200万円で人を一人雇うということですから、そうおかしな計算ではないと思います)。結局「仕事を配ることで失業者を救う」ことは、「失業者一人あたりに200万円を配る」より遙かに高くつくと言うことになります(逆に言えば、直接配れば、同じ金額で、仕事を配る際の3倍の人を救えることになります)。
またこれはあくまで単純計算であって、実際はどのくらい仕事が増えたらどのくらい雇用を増やすかは、各会社に任されています。現在の不景気のなかでは、多少仕事が増えても、雇用は増やさずに内部留保に回すところが大半でしょう。また、たとえ雇用を増やすにしても、それには半年や一年のタイムラグが生じるのは間違いありません。その分まで加味すれば、「事業の発注で仕事を増やし、失業者を救う」ことは、きわめて高額で、効果が分かりづらく、かつスピードが遅い政策だと言うことになります。
私はそうではなく、明日の生活に困っている失業者に対する支援は直接失業者に生活資金を渡すことで(勿論きちんと求職活動や、職業訓練を行うことが前提です)行い、資金繰りに困っている企業に対する対策は直接長期の資金を貸し付ける(こちらもきちんとした事業計画があることが前提です)ことで行うべきだと考えます。 そうやって衣食に困らないセーフティネットをきちんと作った上で(年間200万円あれば、暮らしてはいけます)、労働者は自ら仕事を探し、職業訓練を行う、企業は必要な雇用の整理は自らの責任で行い(解雇後も労働者が200万円を受け取れるなら、それは可能です)、必要な金融を得て新たな仕事を開拓する、その方が、実は多くの労働者、多くの企業を救えるのだと、考えるからです。
私は、必要な公共事業そのものは維持すべきものだと考えます。また、将来に生きる道路・設備は是非とも作るべきことに異存はありません。しかし、新たに100万人の失業者が生まれかねないこの非常時において、従来通りの発想で「雇用対策は公共事業」を繰り返すのは、必要な財政規模の面でも、効果・効率の面でも、スピードの面でも、問題が大きいと思います。「公共事業は、あくまで必要なものを、必要なだけ行う。雇用対策は、困っている個人・企業に必要なお金が直接渡る形で行う」ことこそが、今もっとも求められていることだと、私は考えます。それは、端的に言うなら、「福祉(セーフティネット)の確立こそが、最大の景気対策だ」と言うことに他なりません。
日本の復活のために、安心できる社会制度の構築に全力で取り組みたいと思います。
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