本日日本でも感染者が確認されたように、新型インフルエンザの感染が、世界各国に広がりつつあります。人から人への感染も確認され、WHOが警戒水準を Phase 6 に引き上げられる日も近いとの観測もなされています。この新型インフルエンザについては先日も記事を書きましたが、今回はこれによって明らかになった課題を、もう少し具体的に書きたいと思います。

 先ず第1の課題は、当然ですが感染拡大の予防でしょう。とは言っても、今回の国内初感染で分かるとおり、声を大にしては言いづらいですが、新型インフルエンザは最終的には世界中に広がると、おそらく多くの専門家が思っていると思います。しかしそれでも世界各国が感染拡大阻止に必死で動いているのは、決して無駄な努力をしているわけではなく、それによって「感染拡大をゆっくりにする」こと自体が病気による犠牲者を減らす上で有効だからではないかと、私は思います。
報道されているとおり今回の新型インフルエンザは弱毒性です。発症しても十分な医療を受けることが出来れば、重症化する確率は高くはありません。今のように「全国で1日に4~5人の感染疑いが出る」程度であれば、総ての感染者が十分な医療を受けられる以上、そう大事になる可能性は低いでしょう。しかしもし仮に「感染の大流行」が起こってしまったら、いくら日本の医療が進んでいても、総ての患者に十分な医療を提供することが不可能になり、それなりの数の死者が出ることもあり得えます。その事態を防ぐ為に、「感染拡大の速度をコントロールする」事こそが、現在の対策の最大の目的であるべきだと私は思っています。
ではこの「感染拡大の速度をコントロールする」にはどうすればよいか?それは現在行われている「各国の水際対策で感染拡大の防護障壁をつくる(防護障壁は必ずしも「鉄壁」である必要は無いとは思いますが)」事を維持しつつ、感染が拡大しているメキシコを中心に十分な援助をして「穴となる国を無くし」、国内においては全国に医療体制を整備して「穴となる地方を作らないこと」であろうと私は思います。槍玉に挙げるようで申し訳ないですが、他の国で感染を防ぐことが出来ても、メキシコの様に穴となる国でじゃんじゃんと感染者が発生したら結局それは世界に広がります。それと全く同じ話で、いくら東京で万全の感染対策をしても、対応に穴がある地方が残ってそこで次々と感染者を作ってしまったら、そこがもとになって日本中に、対処できない「大流行」を引き起こしてしまいかねません。感染が簡単に国境を越える時代、それは当然より簡単に、県境も市境も超えます。如何に日本全体に万全の医療体制、万全の危機管理体制を敷くことが出来るかが、今まさに新型インフルエンザによって問われている日本の課題であろうと、私は思っています。

 もう一つの課題は、先のブログでも触れましたが「世界への対応」だと思います。新型インフルエンザ、金融危機、環境問題と、今や多くの危機は国境を越えて世界に広がり、その対処には国際的な協調が不可欠となっています。そして国際的協調には、今回のWHOを見て分かるとおり、国際機関の役割が非常に重要になっています。
 ところがその国際機関に、一般職員でも幹部職員でも、日本は十分な数の人材を供給できていません。本来国連職員数は分担金割合によって決められますが、国連予算の20%を負担する日本人職員数はわずか4%です。又、今や世界中の時の人であるWHO事務局長マーガレット・チャン氏(香港)は実は日本の尾身氏とWHO事務局長ポストを争って勝ち残った方です。当時あまり報道されませんでしたが、この選挙での敗北は日本の国連外交の中国への敗北を示す象徴的出来事であったと思います。
 勿論国際機関の職員は世界全体の利益を考えて意志決定を行うのであり、各国の利益を代表するものではありません。しかし現実として、ある国出身の職員が国際機関に存在することが、その国にとって有利に働くこと、若しくは少なくともその国にとって不利な意志決定がなされることを防ぐ助けとなることは否定できません。だからこそ中国は、WHO事務局長選挙において猛烈にチャン氏をプッシュしたのだと言えます。
 今後も次々と起こる危機に有効に対応する為に日本が国連外交を初めとする国際政治の場で活躍しようと思うのであれば、現場の外交体制を強化すると同時に、日本人国連職員を増やすことに真剣に取り組むべきだと私は思います。そしてその為に、長い長い道のりではありますが、「外交力を持った若者-世界に対応できる若者を輩出できる教育・雇用の体制を整えていくこと」が必須だろうと、私は考えています。

 Think globally act locally ではないですが、良いものも悪いものも一瞬で世界を駆けめぐる今、私達は世界と言う大きな課題と、地方という目の前の課題に同時に立ち向かわなければならない時代に、生きているのではないかと思います。


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コメント

いつもメール真剣に読ませてもらっています。
問題が起きた時 この本質は何か、何が大切なのかがわかりやすく説明してもらいありがとうございます。これからも教えて下さい。
ありがとうございました。

  • Posted by 金井英雄
  • at 2009/05/10 09:40:29

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