ニュースの感想

世襲制限

  • 米山 隆一
  • at 2009/5/25 23:33:26

世襲制限

 

 民主党が打ち出して以来、世襲制限が政治のトピックに急浮上しています。我が自民党では次回の選挙から世襲制限を加えようという意見がある一方で、国会議員の4割を占める世襲議員からの反対もあって、賛否が拮抗している状態です。

 

 私はご存じの通り「世襲議員(田中真紀子さん)と対戦する非世襲議員」な訳ですが、私自身の意見としては、「制限しても良いと思うけれど、それはあまり本質的ではない。むしろ、『非世襲議員に世襲議員と同等のチャンスを与える』事を改革の主眼とすべきである」と思っています。

 

 「制限しても良い」と思う理由は言うまでもないことですが、「国会議員の3割以上が世襲で占められている現状は明らかに異常で、日本の政治力を高める為には、間違いなく是正が必要」だからです。

この話の時に良く使う例えなのですが、WBC日本代表に例えば長嶋一茂が入っていたとしても、それ自体は何の問題もないことだと思います。でも仮に、「元プロ野球選手の親族しかWBC日本代表になれない」とか「元プロ野球選手の親族であることが代表選考において非常に有利に働く為に、代表選手の3割は世襲選手で占められている」とかと言う状況になったら、果たしてWBCで日本代表は世界1位になれたでしょうか? 1位どころか予選でぼろ負け、と言うのが妥当な所でしょう。

現在の日本の政治は正にこの例えのような状態になっている訳で、国内政治が混迷するのも、外交の場でやられっぱなしになるのも、実のところ当たり前と言えなくはありません。政治が国内においてリーダーシップを取り戻し、国際舞台においても列国に引けをとらない力を発揮する為には、政治に一線級の人材が集まるよう何らかの改革を行うことは必須だと言えます。

 

この制限論に対しては主に世襲議員側から、「法の下の平等に反する」とか「世襲と言うだけで実力と才能のある人材が政治家になれなくなる」と言った反論が出されています。しかし、例えば今回の制限論でしばしば取りざたされている小泉氏の次男進次郎氏であれば、はっきり言って小泉氏の地盤である横浜11区どころか日本全国どこで立候補しようが、基本的には圧勝してしまうでしょう。反対論をぶつ世襲議員の方には「多少制限されたからって、ぶつくさ言うほどのことですか?それほど苦労がお嫌いですか?」と皮肉の一つも言いたくなります(進次郎氏の名誉の為に書きますが、進次郎氏はあくまで例であって、御本人は一言も愚痴を言っておられません)。又、更に2世の多くの方は実は東京生まれの東京育ちだったりします(我が対戦相手も目白生まれの目白育ちであられます)。新潟4区に立候補しようが新潟5区に立候補しようがはたまた北海道で立候補しようが九州で立候補しようが、同級生も知人もいない落下傘であることに変わりはありません。これまた「実力と才能があるなら、別に先代の選挙区からでなくても、どこからでも立候補できるんじゃないですか?と言うか、どこから立候補しても当選するような人を、実力と才能があると言うんじゃないですか?」と皮肉を言いたくはなります(これもあくまで例であって、我が選挙区のお方は恐らくどの選挙区から出ても当選される自信満々だろうと推測いたします)。

 

しかし、そんな皮肉が成立するからこそ逆に、「立候補制限はさほど意味を持たない」と私は思います。上述したとおり、立候補制限をしようがしまいが、小泉進次郎さんは圧勝してしまうわけで(度々の例示、すみません)、単純な立候補制限は「世襲議員に非世襲議員が味わう苦労の一端を味わってもらう」以上の意味を持たないと思われるからです。

 

 ではどうすべきか?私は2つの改革を提案したいと思います。第1は公職選挙法を改正して、公開討論会を解禁し、これを選挙期間中のゴールデンタイム、例えば夜の9時~10時に、数回にわたって放送すること、第2は自民党(若しくは民主党)内で、当選した議員に平等にチャンスを与えることです。

 

 世襲議員が選挙において圧倒的に強い最大の理由、それはなんと言っても知名度だと、私は思います(後援会を引き継ぐことも勿論重要な要素ではありますが、小選挙区制の現在、中選挙区時代ほどの重さを持たないと思われます)。元々の知名度の差に加えて、有名議員の世襲候補となればマスコミがこれでもかと言うほど報道します(私自身、去年の10月の自民党新人候補懇親会で、進次郎氏との扱いの差に寂しい思いを致しました http://www.election.ne.jp/10840/62071.html -苦笑)。限られた選挙期間・選挙手段でこの差をひっくり返すのはそう容易なことではありません。

 しかし、仮に選挙期間中に公開討論会が開かれ、それがゴールデンタイムに複数回放送され、選挙区の多くの人が見てくれるとなれば、私(非世襲候補)にも、大きな逆転のチャンスが回ってきます。ともかくも政策を必死で勉強して討論の技術を磨き、対戦相手の世襲候補をコテンパンに論破すれば、「あの○○候補を論破した△△さん」と言うことで一気に知名度をあげることが出来るからです。又もし逆に、公開討論の場で世襲候補の方にコテンパンに返り討ちされたというのなら、それは「才能と実力があるのは世襲候補の方でしたね」と言うことで、世襲だろうが何だろうが当選していただいて何の問題もないと言うことになります。

 結局、「政治に一線級の人材を集める」為に先ず取り組むべきは、「公開討論会」のような「実力が高い方が勝ち上がるフェアな対戦の場」を作ることであって、「ある特定の人が対戦の場に入ることを制限する」のは筋違いであると、私は思います。

 

 又この「実力が高い方が勝ち上がるフェアな対戦の場」を作る必要性は、選挙そのものだけでなく、当選後の議員の処遇にも当てはまり、これが第2の提案となります。先に「自民党」における世襲議員の割合は4割弱だと書きましたが、これが「麻生内閣」となると7割強にも上ります。現実として自民党内では世襲議員の方が非世襲議員より遙かに出世しているのですが、これには理由が2つあります。第1は今なお厳然とある「当選回数絶対主義」であり、もう1つは率直に言って「世襲議員同士の仲良しサークル化」です(とは言え、これが端的に「才能と実力」を反映したものである可能性も、否定は出来ませんが)。

 

 最近は当選回数をジャンプした抜擢も大分見られるようになりましたが、それでも自民党内での役職は基本的には当選回数を元に割り振られます。又例え役職で逆転したとしても、例えば4回生議員に1回生議員が異を唱えることは、はばかられる空気が事実として党内にはあります。そうすると、どうしても若くして議員となり、当選回数を重ねる世襲議員が出世の上で有利になるわけで、例えば私が見事次回の選挙で当選しても、その時4回生議員になっている大臣経験者、小渕優子さん(これもあくまで例示です)にはほぼ永遠に頭が上がらないと言うことになります。

 又今回の麻生内閣の人選は正直に言って「麻生総理と仲の良い人」がかなりの割合を占めています。人間、生育環境が似た者同士の方がどうしても仲良くなりやすいもので、人事権を握る側が相当意識して「仲良し倶楽部」的人事を排しない限り、第1の理由と相まって世襲の方が要職を独占するという構造が維持されることとなります。

 これを改善するのは単純で(それ故に難しいことではありますが)、自民党内で「才能と実力に応じて平等にチャンスを与え、その結果を正当に評価して人事を行う」事につきると思います。そしてこれまた平等にチャンスを与えられた結果世襲議員の方が勝つなら、それに文句をつけるのは筋違いと言うことになります。

 

 以上長くなりましたが、最後に纏めると、「現実として議員の3割、内閣の7割もが世襲議員で占められている現状は、日本政治弱体化の原因の一つであり、是非改善が必要である。但しその改善策は、『法の下の平等』に反する世襲議員に対する立候補制限によってではなく、選挙と選挙後の両方において、非世襲議員が世襲議員と対等に戦うチャンスを与えることによって実現すべきである。それこそが、『法の下の平等』にかなう、まっとうな方法である。」と私は考えます。そして私は、これは実のところ、多くの非世襲候補に共通の気持ちではないかと思っています。「対等な立場で戦えば、絶対俺が勝つ」、根拠の有無はともかく、ひたすらそう信じる事が出来てこそ、一世の非世襲候補は立候補を決意することが出来るからです。


  • コメント (1)
  • トラックバック (0)
トラックバックURL :
http://www.election.ne.jp/tb.cgi/76777

コメント

正直なところ、何故政治の世界に公平さや、同じチャンスを与えなければならないのかが、理解できませんでした。
双子でさえも容姿が違うように、同じ人間は一人もいないのです。「違い」は必ず「差」を生みます。その「差」が「区別」を生みそれにより、様々に認識が出来ます。
ですので、生まれた環境によって、差があって当たり前なのです。

政治とは、今の私達国民の姿を投影しているにしか過ぎません。

ですから、世襲が政治家のレベルを下げることなどあり得ませんし、世襲を無くしたことで政治家のレベルが上がることは無いと思います。

国家の政治力と世襲は何の関係もないことを、普通に言う方がいないことが、一番悲しげ現実です。

  • Posted by 田中秀寿
  • at 2009/07/30 10:17:51

エレログTOP | エレログとは | 運営会社 | 免責および著作権について | お知らせ

政治家ブログ”エレログ”地方議員版ができました。参加お申し込みはこちらから

政治家専門サイト ele-log 国政版 お申し込み 政治家専門サイト ele-log 地方版 お申し込み
国会議員、都道府県知事、市区町村長、都道府県議、市区町村議、および立候補予定者専用

Copyright by Promote committee of Online-Election.,2001-2007, all rights reserved.
ele-log and the ele-log logo are registered trademarks of
Promote committee of Online-Election