ニュースの感想
自民、公明、民主三党は、「タクシー運転手の労働条件の改善」を目的として、国が指定する特定地域における「協議会」で減車計画を策定させ、従わない場合は営業停止や許可取り消しも含む措置を講ずる立法を行うことで合意したと、報じられています。
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私は、「タクシー運転手の労働条件の改善」を目的とするなら、例えば、「タクシーの運転手の方を採用する際は、安全にかんがみ、週40時間最低賃金で勤務しただけの給与を『固定給として』保証しなければならない(当然運転手さんは週40時間は働く)。」というような労働立法を行うのが筋で、「参入規制」→「企業収益改善」→「労働条件改善」と言う理屈で新たな規制を導入することは、筋違いであると思います。
この政策導入に際しては、「規制緩和」→「企業収益改善」→「労働条件改善」を目指した「小泉改革」の負の側面が強調されますが、「小泉改革」はそもそも論的に上述の自民党的参入規制が日本経済の活力を減少させているという反省から出たもので、要するに、小泉改革の失敗でわかったのは、
① 自民党的規制 「参入規制」→「企業収益改善」→「労働条件改善」
② 小泉改革 「規制緩和」→「企業収益改善」→「労働条件改善」
のいずれも、あまりに迂遠であって、労働条件の改善には効果がないという、よく考えると極めて当たり前の結果にすぎません。①がだめだったから②、②がだめだから①と言うループを回るのではなく、端的に、
「労働条件そのものを改善する政策」
を打つのが、どう考えても一番直接的で効果があるものと思います。これもそもそもですが、タクシー業界は、実労働時間に対して、固定給と歩合給を合算した給与が最低賃金に到達しない「違法状態ブラック経営」が実態として野放しにされており、この「ブラック経営」を放置しての弥縫策は、無意味です。
小泉首相の退場、民主党の大失敗依頼、規制緩和、競争政策を否定する論調ばかりが目立ちますが、バブル崩壊以後30年の停滞をもたらした自民党的規制政治は、要するに、タクシーの運転手の賃金を1あげるために、参入障壁を築いて消費者が10払い、残りの9は天下りを受け入れた既存の業界団体が懐に入れる、と言う構造です。そこに逆戻りすることで、「業界に潜り込んだ人だけが報われる社会」を復活するのでは、自民党的停滞が再び始まるだけで、日本の未来は決して開けません。
一方で小泉改革、民主党の失敗から学ぶべきは、規制緩和、競争政策は、「適正なルールと、厳格な審判員がいてこそ成立する」、ということでしょう。現在のように長時間労働で最低賃金すら守られない「ブラック企業」を平然と放置しておいて、競争を行わせたら、ルール無用の弱肉強食になるのはむしろ当たり前だったと思います。「ルールを破って弱者を踏み台にした人が報われる社会」が否定されるべきは当然です。
参入自体は自由で、企業はどんどん競争してもらう、但し、労働条件・安全等については、適正なルールを策定し、これを守れない企業には、厳格なジャッジの下、即市場から退場してもらう、そういう「ルールを守って、頑張る企業、頑張る個人が報われる社会」をこそ、われわれは作るべきだし、その実現の為に、私は全力を尽くしたいと思います。
こういう問題は、労働条件の改善以外にも労働基準法を守っている企業側から見れば、不正競争にも関係していると思います。
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