あまりに相変わらずですが、日本維新の会足立康議員が、「特殊であっても違法ではない森友学園 - 立憲民主党こそ切るべき『トカゲの頭』( http://blogos.com/article/282842/ )」という非常に中々な論考を書かれ、ご承知の通りBLOGOS内で、恐らくは同好の士から、結構な支持を受けています。

 この論考で氏は「森友学園に係る契約は、既に1年前に私が指摘した通り「スーパー・スペシャル」ではあっても違法ではない」従って、「何の問題もない」とご主張なのですが、本当にそうか、焦点の森友学園契約を離れて、「『スーパー・スペシャル』だけれど違法ではない行政執行は許されるのか」という一般論で論じさせていただきます。
 
 これを考えるうえでまず、そもそも「『スーパー・スペシャル』だけれど違法ではない」行政執行は存在するかが問題になりますが、これはズバリ存在します。意外に思われるかもしれませんが、行政では執行上決まっているルールは案外少なく、ルール以外の部分は現場の対応に即して行う「裁量」が許されているからです。

 身近な例で言うと誰かが市役所に住民票を取りに行ったとします。勿論、適切に申し込みをしたら原則として住民票を交付しなければならないというルールは決まっています。しかしそれ以外に、例えば、誰が、どの紙に印刷して、何分で交付するのかという執行方法については、全く決まりがありません。それはその現場の状況次第で、入りたての新人が交付することも定年間際のベテランが交付することもあるし、白い紙に印刷するときもわら半紙に印刷するときもあるし、1分で交付できる時も10分かかる事もあって、それをいちいちルールで縛っていたら到底現場が回らないからです。
 勿論この場合、例えば10分かかるところを1分で交付してもらうために100円でも渡せば、それは明白なルール違反として刑事罰が科されます。司法は、そういう明白に定められたルール違反の行為を裁くためにあります。
 では、足立議員の言っている様に、そういったルール違反に当たらなければ、どのような裁量でも行ってよいのでしょうか?
 答えは勿論Noであると、私は思います。如何に誰が、どの紙に印刷して、何分で渡すのかは現場次第とは言え、しかしそれは相手によって違ってはならず、誰に対しても同じ適用である事が、行政の平等原則、ルールによる行政の要請だからです。
 如何に裁量の範囲であっても、一般の人には一般の職員が普通の紙に印刷したものを10分で交付するのに、県知事にだけ、命じられてもいないのに市長直々に極上の和紙に印刷したものを1分で渡すという様な扱いは、それ自体は法に触れないとしても明らかに不平等である事は、直感的に明らかでしょう。
 そういう、ルールで一律にさばくことはできないけれど、しかし通常の感覚から考えておかしい事を正すために、行政は、議会-立法・政治よるコントロールを受けるのです。

 つまり三権分立というのは、おおざっぱに言うと、①現場対応の行政 ②ルールの厳格な適用を判断する司法 ③ ①②で対応できない穴を「常識」によって調整する立法・政治という役割分担になっています。

 そしてそれを本件に当てはめるなら、司法によって裁けない-違法ではないけれど、一般常識で考えておかしい事案-はっきりした理由がないのに特定の人にだけ「スーパー・スペシャル」な取り扱いがなされている事案こそ、立法・政治によって調整がなされるべきところであるという事なのです。

 にもかかわらず、日本維新の会足立議員はこれを頭から否定し、「スーパー・スペシャル」な事案を取り上げた野党を、さしたる根拠も示さずに「反社勢力とそこに連なる政治勢力」などと非難します。
 彼の主張通りだとするなら、上記の例で挙げたように、例えば県知事に対して、幾ら「スーパー・スペシャル」な取り扱い-「えこひいき」な行政をしても、ルールに明示的に抵触しない限り何ら問題なく、それを批判するものこそおかしいという事になってしまいます。この様な主張が、三権分立の仕組みを全く理解していない極めて不見識なものである事は、明白でしょう。
 にもかかわらず氏は、再三の懲罰動議や注意にも関わらず同様に主張を延々と繰り返しており、氏の属する日本維新の会も又、氏がそのような主張をし続ける事を放置し続けています。つまりは、氏と、氏の属する日本維新の会の目指す行政とは、特定の個人に対して、「スーパー・スペシャル」な取り扱いを堂々とやり、かつそれを批判するものを許さない「えこひいき」行政なのだと、判断せざるを得ません。

 日本の行政は、断じてそのようなものではないし、そのようなものになってはいけないと、私は思います。


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