核武装

  • 米山 隆一
  • at 2006/10/17 02:06:41

 中川政調会長がTV番組で核武装に言及し、与野党に波紋が広がっています。私は「議論すべき」と言うことそれ自体は正しいと思いますし、責任ある立場の方が発言した事も、悪いことばかりではないと思います。問題は、これが意図してなされたものかどうかと、今後の対応でしょう。

 

 現実的選択肢として、現在の国際情勢において日本の「核武装」はありえません。それは現在の核拡散防止体制を根本から覆し、韓国、台湾の核武装と中国の軍拡と言う収集のつかない事態を招来するからです。又、例え核武装が可能であっても、莫大なコストを払ってまで核武装をする必要性は無いと私は思います。核兵器は、基本的に「使わないこと」を旨とする「ブラフの道具」です。「あるかもしれない」と相手に思わせることで、十分その要を達します。現在日本には、「持たない、作らない、持ち込まない」の非核3原則がありますが、北朝鮮を含む多くの人が、「米軍は日本に核ミサイルを配備している」と思っていますし、北朝鮮が日本を核攻撃したら、米軍が核で反撃すると信じています(私自身実際にそうすると思います)。「アメリカの核の傘」による核の抑止力が十全に働いている現状で、敢て莫大な開発費をつぎ込む理由はみつかりません。

 

 しかしそれでも、北朝鮮に対するもう一段の圧迫の手段として、「そちらがこれ以上進むなら、こちらは本気で核武装を検討する」とブラフをかけることには、現実的な意味があります。人間と言うのは、自分がやったことは相手もやると思うものです(良い人は相手も良い人だと思うし、意地悪な人は相手も意地悪だと思うものです)。北朝鮮は、ブラフだと思いつつ、その可能性を恐れることになります。これはまた、日本の核武装を嫌う中国、韓国、ロシアに、北朝鮮への制裁に協力させる無言の圧力にもなるでしょう。中川政調会長が口を滑らせ、それを否定する、もし意図してやったものであるなら、それは十分なブラフの手段だと私は思います。ただ、もし本当に単純に口が滑っただけなら、流石にそれはうかつだったと言うことになるでしょうし、政府が対応を誤ると、北朝鮮を始めとする周辺諸国に「日本の核武装は絶対にない」という確信を抱かせてしまうことになるでしょう。政府ははっきりとした口調で日本の核武装を否定することで周辺諸国の懸念を打ち消すべきなのは当然です。しかし同時に、「一般論としての議論の可能性を述べただけであり、それ自体は問題ない」として平静に対応することで、「もしかして核武装の可能性があるかもしれない」と言う一抹の不確実性を相手に残すべきだと、私は思います。

 

 日本は、いま現実的な危機にあります。それに対して過剰に反応する必要はありませんが、希望的観測で危機の現状を無視すべきでもありません。核武装を含むあらゆる事態とオプションを分析して十分に備え、必要に応じてブラフを混ぜながら発表する、そういう高度な外交力が求められています。


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