5月6日より胡錦涛中国国家主席が来日し、7日、日中首脳会談が執り行われました。会談の内容は玉虫色の無難なものでした。「懸案を提示したのは進歩だが、解決に踏み込んでいない」と批判する向きもありますが、そう簡単に妥協が成立するとは考えづらい現状においてともかくも友好ムードを作り出したことは、「戦略的互恵関係」という「実利」を求める両国にとって、また福田外交にとって、評価されて良い成果であると、私は思います。
ところで日中首脳会談に数日先だって、アメリカのTime誌が「世界にもっとも影響を与える100人」という特集を掲載しています。ブッシュ大統領にオバマ、ヒラリー、マケイン3候補が並んでいるのはアメリカの雑誌ならではでしょうが、ダライ・ラマ、プーチンロシア首相、ラッドオーストラリア首相、胡錦涛中国国家主席、馬英九台湾総統等々が紙面を飾る中、世界第2位の経済大国日本の首相の姿はありません。
勿論外国の一雑誌の一特集の評価を真に受ける必要などないのでしょうが、実際のところ世界の多くの人にとって、この評価はそう実感と遠いものではないでしょう。いかに昇竜の勢いとはいえ、中国は経済的には尚後進国であり、日本はその1/10の人口で1.6倍のGDPを稼ぎ出す先進国です。にもかかわらず政治的には、「良くも悪しくも世界を左右する大国中国」と「自らの意志で世界を変える影響力を持たない日本」にはっきりと分かれてしまっているのが現状でしょう。
「日本はただ世界の動向にあわせるだけの、小さな平和な国として生きていくんだ」というあり方も、勿論あるのかもしれません。しかしそれは、世界各国が自らの国益を確保する為にしのぎを削っている国際政治の舞台に置いて、日本の国益が次々と縮小していくことを意味します。それはやがて-もしかしたらそう遠くない未来に-「経済的繁栄の終焉」という形で、私たちにのしかかってくるかもしれません。
そんな事態を防ぐ為に、自らの正当な国益を正々堂々と主張し確保する為に、そして何より自らの意志でよりよい世界を作る為に、「政治の力」というものを強めていかなければならないと私は思います。
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