ニュースの感想

消費税

  • 米山 隆一
  • at 2008/7/02 01:44:37

 現在消費税を巡る議論が活発化しています。福田総理は、一旦は今秋早々に決断を下されそうな発言をされましたが、直近のニュースでは2-3年かけて判断するとされています。しかし現在でも、自民党の複数の幹部から、消費税上げの決断を下すべきとの議論は引き続き提起されつづけています。これに対する野党第一党民主党は、「先ずは国の税金の無駄遣いをなくす事が最優先で、消費税を上げるのは早い」という論法で、反対しています。以下、この問題に対する私の意見を述べたいと思います。

第一に、民主党の反論に一理ある事は否定できないと思います。ここのところ少々沙汰止みですが、年金の無駄遣いに始まり、道路特定財源の無駄遣い、タクシー接待に至るまで、霞ヶ関に貯まりに貯まった税金の無駄遣いは目に余るものがあります。天下り法人への補助金や契約に名を借りた不適切な税金の利用も、改められなければならない問題である事は明らかです。現実にいったいどのくらいの削減が可能なのか正確な数字は分かりようもないのですが、民主党は最大で15兆円の削減が可能だと主張しています。これは国家予算の20%程に当たり流石に非現実的なのではないかと思いますが、公務員の人件費が5兆円、天下り企業への補助金等の支出が12兆円程度である事を考えれば、予算の10%にあたる7~8兆円の無駄遣いの削減は可能かもしれません。これは消費税4%程度分の税収に当たり、確かにこれだけで消費税を5%から10%にあげる場合の増収分の大半をまかなえてしまいます。

 しかし、だからといって「税金の無駄遣いが解決しない限り、消費税の問題を論じる事自体が言語道断」と言うような民主党の主張は間違っていると、私は思います。そもそも民主党は昨年の参議院議員選挙の際には、「所得保障を含めた農業対策の財源は、税金の無駄遣いの削減でまかなう」と言っていましたし、この春の道路特定財源が話題になったときには、「道路特定財源廃止後も、必要な道路整備は行い、その財源は税金の無駄遣いの削除でまかなう」といっていました。そして今回の社会保障費の財源問題でも再び「財源は税金の無駄遣いの削除で」となっているわけですから、「いくら税金の無駄遣いが巨大でも、同じ財源を3回も使い回すのはやり過ぎでしょう」という指摘をしたくなります。
 税金の無駄遣いは、確かに大きな問題です。しかし其れはあくまで1つの問題で、これを解決したからと行って、そのほかに山積する数多くの問題が解決するわけではありません。あらゆる問題に対して「先ず税金の無駄遣いをなくすのが先決」というのは、良い事を行っているようで、実は問題の先送りに過ぎないように私には思えます。
 税金の無駄遣いは無駄遣いとして其れをなくすべくしっかり対処する、其れと同時に、そのほかの問題についても、問題の本質を見極め、必要な財源の手当を含めた適切な改革を行う、其れが、責任を持って国政を預かるもののあるべき姿だと、私は思います。

 では、私は消費税上げに賛成なのか?と言う事になると思いますが、実は私も現時点で消費税上げを論じるのは時期尚早だと考えています。結論は同じですが理由は民主党とは異なっていて、「何どう使うのかが決まっていないから」です。
 このブログでも何回か指摘していますが、医療を含め、日本の社会保障は制度疲労の限界に来ています。消費税を5%から10%にあげれば当面の財源不足は解決できるでしょうが、高齢化の進展と伴に、時を経ずして次の破綻が訪れるでしょう。その度に消費税を10%から15%へ、15%から20%へとあげていくのでは、政治的エネルギーを費やすだけでいかにも不毛でしょう。
繰り返しになりますが、持続可能な医療・社会保障制度を確立する為には、保険制度の統合、社会保障番号制の導入、フリーアクセスの制限、混合診療の制限付き解禁等々の論点を正面から議論し、抜本的社会保障制度改革の青写真を確立するこが待ったなしの状況です。消費税のレベルも、その議論の中で、単に間に合わせに5%から10%にあげるのではなく、どの程度の社会保障が求められ、どの程度の負担が許容できるのかをきちんと議論した上で、長期的展望に立って決められるべきものでしょう。今議論されるべきは、「消費税を上げるべきか否か」という単純な二分論ではなく、「何の為に、どう使うから、どのくらい必要なのか」という明確な議論であると、私は思います。


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コメント

まったく米山さんの言う通りだね。
民主党の言うことも一見もっともらしいけど、全部が税金の無駄使いを減らすだけでとても解決できない問題が山積しているのは誰もが分かるでしょう。米山さんが言うように、無駄使いの問題を解決しながらも、並行して仕組みの問題を早急に論じてゆかないと後でより解決が難しくなってしまう問題が多いと思います。今の議員さんたちは議論の焦点が違うのではないか。

  • Posted by あーさん
  • at 2008/07/05 00:20:06

勉強になります!消費税は毎日の生活にひびくので上げてほしくないですが、これからのことを考えるとアップも必要かもしれませんね。しっかりと話し合った上で議論していくことも求められるのですね。応援してます!

食料品などの生活必需品と、宝飾品などの贅沢品にかかる消費税率が一律なのは納得いきません。タバコ税増税の議論もされていますが、贅沢品への課税強化も検討されて良いのではないでしょうか?
逆に生活必需品は非課税でも良いのでは、とさえ思います。
これは田中眞紀子議員なども主張されています。

  • Posted by 越後長岡人
  • at 2008/07/15 02:16:02

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