最近食育が流行しています。私の少年時代の食事は、母が頑張ってくれていたのと、正直家が貧しかったのとの両方の影響で、既製品やジャンクフードがほとんど無い食育の見本の様なものでした。ですので、食育に文句をつけるのは天に唾するようなものなのですが(苦笑)、それでも最近一部で見られる「何を食べるか」に割と偏った食育や、「ご飯を食べないと切れる子になる」「朝ご飯を食べる子は成績が良い」と言うようなちょっと筋違いな「現世利益(?)」を期待するものには多少の違和感を感じます。基本的に食いしんぼの私としては、食育の本質は、「如何に楽しく食事をするか」の一言に尽きるのではないかと思っています。
因みに私が「何を食べるかってあまり情操教育(子供の性格)には関係ないな」と確信したのには、ちょっとした理由があります。
私はアメリカで働いていたとき、それこそアメリカ的に、何人かの同僚にホームパーティに招かれました。どのご家庭も仲の良い素敵な家庭だったこともあって、食事の前にはだいたい家族中が「うちのお母さんは、とっても料理がうまいのよ!」と宣伝して下さるので結構期待して待っているのですが、いざ蓋を開けてみると、「のびのびのパスタに缶詰のミートソースをかけたスパゲッティと、塩こしょうすら不十分な焼いた肉に、葉っぱをちぎってチーズとドレッシングをかけただけのサラダ」だったりして、漫画的に「ガクッ」とすることが結構ありました。ところが、(おそらくは一年中)そんな食事を食べていても、そこのうちの子はやっぱり極めて天真爛漫な良い子で、にっこり笑って、「ね、ママの料理は美味しいでしょう!」とかと言ってそのお肉やらスパゲッティやらを目を輝かせて食べているわけです。その光景を見た瞬間私は、「子供の情操教育にとって最も重要なのは、『ママが自分のために愛情を込めて特別な料理を作ってくれている』という確心にちがいない。この確信を植え込む事にさえ成功すれば、例えばこっそりコンビニ弁当を買ってきてそれをお皿や鉢に移し代えて『ほら、ママの料理は美味しいでしょう!』とやっても、きっと良い子が育つだろう(アメリカ家庭の平均的料理より、日本のコンビニ弁当の方が遙かに手が込んでいて美味しかったりするんですから)」と確信しました。
「朝ご飯を食べるとテストの結果が良くなる」については、なんと文部科学省発表のデータ朝御飯と成績.pdf まであって反論しづらそうに見えるのですが、正直これは「統計のマジック」かなと思います。そもそもこのグラフでは大きな差がありそうに見えますが、よく見ると「必ずとる」子と「全くとらない」子の差はせいぜい偏差値6程度で、騒ぐほどのことかと思います。
又それ以上に重要なのは、例え「朝ご飯を食べる子は成績が良い」ということが統計的事実だとしても、それはあくまで「両者には関係がある」と言うことを示しているだけで、「朝ご飯を食べること」が「成績を良くする原因である」と言う「因果関係」を示すものではないと言うことです。私は、これはむしろ、「成績のよい子は朝ご飯を食べる」という逆の因果関係を示していると思います。
どういう事かというと、「成績のよい子」はだいたい「毎日若しくは定期的に勉強して」いるでしょうし、「毎日若しくは定期的に勉強する子」はだいたい規則的な生活を送っているでしょう。「規則的な生活を送る」とだいたい普通の時間におなかが減る上に、しっかり勉強すると更に空腹が募りますから、そういった子はだいたい「毎日朝ご飯を食べる」ことになるでしょう。そうすると、実はこの結果は、「朝ご飯を食べると成績が良くなる」事を示しているのではなく、「成績を良くするために勉強すると、おなかが減って朝ご飯を食べるようになる」事を示していると言うことになります。
と言うことで、さんざん難癖をつけてきましたが、私が食育を否定したいかというと、決してそうではありません。先に「成績を良くするために勉強すると、おなかが減って朝ご飯を食べるようになる」と書きましたが、私はこれこそが食育の本質ではないかと思っています。
目的が何であれ、目的の達成にはストレートにそれに向かって努力するのが一番効果的なことは、言うまでもありません。成績を良くしたいなら四の五の言わず勉強する、ゴルフが上手になりたいならともかくクラブを振る、が一番重要で、朝ご飯を食べるかどうかは所詮二の次です。でも、その努力は、時に苦痛を伴い、時に心と体を疲れさせます。その時、心と体の疲れをいやし、明日への活力を得る事が出来てこそ、人はその努力を続けることが出来ます。そしてほとんどあらゆる努力は、継続してこそ効果を有します。私は「愛と美味しい料理に満ちた食卓」こそが、この「人に明日への活力を与える」最たるもので、これさえあれば人は大抵の苦労は我慢して、努力し続けられるのではないかと思っています。
「食育」は、「何かの為の食事」を教えるのではなく、なにより、「食事が与えてくれる人生の幸福そのもの」、端的には「如何に楽しく食事をするか」を教えるものであって欲しいと、私は思います。
貴殿には医師で養豚業を営む者として豚インフルエンザに関してのメッセージを発する社会的義務がある。
同感です。そう思います。
ダックさん、mikaさん、コメント有り難うございます。
養豚業者としては、「豚肉は安全ですよ」が最大のメッセージですね。みなさん、豚肉、嫌わないで下さい(苦笑)。医学的メッセージは既にマスコミで大量に報道されていますから敢えて繰り返す必要はないかと思います。政治を目指すものとしてのメッセージと言うか感想を、3日のブログに投稿しました(http://www.elec
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