ニュースの感想
昨今話題のMMTについて、「論座」に論考「MMT(現代貨幣理論)なんてあり得ない!( https://webronz
この論考の、1.~5.の帰結から「赤字国債を全額中央銀行が買い受ける(つまり国が直接お金を刷る)なら、インフレが起こるまでの間は、財政赤字によって民間の貯蓄が増え、通貨供給量が増え、金利は上がらない。」という、ずいぶんお得な事が起こるのですが、あるところを超えるとインフレが起こります。これは直感的には少々分かり難いので、以下ちょっとしたモデルで説明してみます。
上記論考と合わせてご一読いただけると幸いです。
-----「山田家の肩叩き券によるMMTモデル」------
山田家には、働き者のお母さんと、お父さん、そして子供の太郎君がいます。お母さんはクッキーを作るのがとても上手で、太郎君はいつもお母さんにクッキーを作ってもらうように頼むのですが、クッキーをつくると生地を練るのに肩がこるので、必ず30分の「肩叩き」と交換でした。
一方お父さんはそば打ちの名人で、そば好きのお母さんはお父さんにおそばを作ってもらう事をお願いするのですが、これまたそばを打つと肩がこるので、こちらも必ず30分の「肩叩き」と交換でした。つまり山田家においては、おそば、クッキー、肩叩きの物々交換が成立していました。
ある時部活で忙しい太郎君が「後で肩叩きするね。」と言って30分の「肩叩き券」を1枚作ってお母さんに渡し、クッキーを作ってもらって食べました。ところが、お母さんは、その「肩叩き券」を使って太郎君に肩を叩いてもらうのではなく、そのままお父さんに渡して「後で肩叩きするね。」と言ってお父さんにおそばを作ってもらって食べたのです。そしてその「肩叩き券」を貰ったお父さんは、これまた太郎君に肩を叩いてもらうのではなく、「後で肩を叩くね。」と言って肩叩き券をお母さんに渡し、お母さんにクッキーを作ってもらって食べたのです
(これが、「通貨(肩叩き券)」の発行です。太郎君は何も作らずにクッキーを消費しているだけなので「財政赤字」な状態なのですが、その代金を自ら発行した通貨である「肩叩き券」で支払う事が出来るので、ただでクッキーを食べられるのです。紙からいきなり「肩叩き券」という価値のあるものを創り上げているので、実は当然です。)。
この状況に気を良くした太郎君は、翌週更にもう一枚肩叩き券を作って、もう一度お母さんに渡し、クッキーを作ってもらいました。ところが今度もお母さんは、肩叩き券を太郎君には使いませんでした。今迄お母さんは、本当はおそばを月2回食べたかったのにお父さんに頼みづらかったのですが、肩叩き券がもう一枚来たおかげで、気兼ねなくお父さんにおそばを頼むことが出来たのです。お父さんは、後でクッキーを作って貰えるので、喜んでお母さんの為におそばを打ちました。
(この様に、太郎君の財政赤字によって通貨供給量が増えると、確かに潜在的な需要と供給が追い付くところまでは、生産が増える事になります。)
さらに気を良くした太郎君は、さらにもう一度お母さんに渡し、クッキーを作ってもらいました。ところがこんどもまたお母さんは太郎君に肩叩きをしてもらわなかったのです。実は最近ちょっと疲れ気味のお母さんは、将来クッキーを作らなくてもおそばを作って貰えるように、今回もらった肩叩き券をタンスにしまっておくことにしたのです。
(通貨供給量が潜在的需要・供給を上回っても、それが貯蓄されている限り、通貨の価値は保たれます。)。
これにさらに気を良くした太郎君は考えました。
「どうやら僕自身は全然肩を叩かなくても(太郎君が肩を叩く=「赤字」分の代価の支払いです。これによって肩叩き券が回収されます。)、肩叩き券は幾らでも発行できるぞ。これは良いや。どんどん発行してクッキーをもっと(M)もっと(M)食べよう(T)。そうだ、僕はこのMMTで生きていくんだ!」。太郎君はそうつぶやくと、毎日毎日肩叩き券を作ってお母さんにクッキーを作って貰いだしました。お母さんは大忙し、毎日クッキーを作りますからご飯を作る暇はありません。山田家の冷蔵庫からはお肉や野菜がへり、クッキー生地とお父さんが作るおそばの生地でいっぱいになりました。
(赤字でも自分で貨幣を刷って幾らでも歳出を拡大できるなら、当然歳出は際限なく拡大します。そしてそれは国の有限なリソースを使いますから、民間にはリソースが回らなくなる「クラウディングアウト」が起こります。)
そんな状況でも、最初の1週間は何事も起こりませんでした。太郎君はご飯の代わりに毎日クッキーで大満足、お母さんも好きなおそばをたくさん食べる事が出来て満足でした。
しかし、次の1週間異変が起こりました。太郎君は相変わらず毎日クッキーを食べていましたが、お母さんは幾ら好きでも流石におそばばかり毎日は食べられません。お母さんのタンスに日に日に使われない肩叩き券が積み上がり出したのです。そしてそれはお父さんも同じでした。
1月が経ったとき、お母さんのタンスには、もう15枚の肩叩き券がたまっていました。お父さんのお財布の中にも、肩叩き券が15枚ありました。ある日お母さんはふと考えました。「流石におそばは週に1度でいいわ。今ある肩叩き券でもう3カ月おそばを食べ続けられるんだから、肩叩き券はそんなに要らないわね。それに、お父さんだって忙しいのに、本当に私の好きな時におそばを作って貰えるのかしら?」。同じようにお父さんも考えました。「流石にクッキーは週に1度でいいよ。今ある肩叩き券でもう3カ月クッキーを食べられるんだから、肩叩き券はそんなに欲しくないや。それにお母さんだって忙しいのに、本当に僕の好きな時に、クッキーを作って貰えるんだろうか?」
次の日、お母さんがお父さんにおそばを作ってくれるように言うと、お父さんはお母さんに言いました。「ごめん、肩叩き券はもう一杯あるし、流石にそんなにおそばを作れない。これからはおそばを作るごとに肩叩き券2枚貰っていいかな。」。お母さんは、それはそうだろうと思いましたし、実際手元にはたくさん肩叩き券があるので、「いいわよ。」と言ってお父さんに肩叩き券2枚を渡しました。その次の日、お母さんは太郎君に言いました。「太郎君、お母さんもうたくさん肩叩き券はあるの。これからはクッキーを作るごとに2枚肩叩き券をくれないと作れないわ。」太郎君は少しぎくりとしましたが、「大丈夫大丈夫、MMTは不滅さ。」とつぶやいて、肩叩き券を2枚作ってお母さんに渡しました。
その1月で、お母さんの手元には肩叩き券が45枚、お父さんの手元にも45枚の肩叩き券がたまってしまったのです。太郎君は毎日2枚、1月で60枚の肩叩き券を作りました。
(こうして、民間の需要・供給に対して通貨供給量が過剰になれば、当然インフレが起こります。)
その次の月には、クッキーやおそばを作って貰うのに、肩叩き券3枚が必要になりました。お母さん、お父さんの手元には、それぞれ90枚の肩叩き券がたまりました。それと同時に、山田家ではもう一つの異変が起こっていました。お母さんが毎日クッキーを作るので冷蔵庫の中はクッキーの生地だらけ、徐々に野菜やお肉が減っていき、ご飯を作って貰えないお父さんが、やせ細ってきたのです。お父さんお母さんは考えました、「1週間に1回、1回3枚の肩叩き券を使うとして、7カ月分の肩叩き券があります。もう肩叩き券は要らないんじゃないか…。」。
お母さんは太郎君に言いました。「太郎君、お母さん、肩叩き券もうたくさん持っているから要らないのよ。」
太郎君は慌てました。何とかこの事態を打開しないと、毎日ただでクッキーを食べ続けられたパラダイスが終わってしまいます。それには、お父さんとお母さんが持っている合計180枚の肩叩き券を何とかしなければなりません。
太郎君はおずおずとお母さんとお父さんに尋ねました、「肩叩き券、僕にくれる?」。お母さんとお父さんは言いました。「肩を叩いてくれたらね。ただならもちろん嫌だよ。今迄その分クッキーを作ったりおそばを作ったりしてきたんだから。」
(肩叩き券を、少なくともその場では代価を払わず回収するのが徴税ですが、当然それには困難が伴います。)
太郎君は困り果ててしまいました。180枚分もの肩叩きをいっぺんにすることはできません。それ以前に、こんな状態でも、肩叩き券を発行しなければクッキーを食べる事はできません。3か月間のパラダイス生活で太郎君はすっかり太ってしまい、自分では食事を作る事が出来なくなってしまっていました。お母さんにクッキー作って貰って食べる事が出来なければ、明日から生きて行けません。それには肩叩き券をもっと発行しなければなりませんが、それでは肩叩き券は増える一方でいつまでたっても減りません。
どうしたらいいんだ、どうしてこうなっちゃったんだ…。太郎君は涙を流して空を見つめました…。
楽しく読ませてもらいました。
現在の各国中銀がやっている異次元緩和方式だと、インフレはないが、紙幣印刷で対応するとインフレとなるということだと思います。
詳しくは下のURLにまとめました。ご覧ください。
https://toshare
https://p
そんなこと可能なら北朝鮮や発展途上国が
バンバン金回してる気がする。
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