活動報告

 政治の世界に足を踏み入れて以来落ち着いて本を読む機会がめっきり減ってしまっているのですが、最近私は、スピーチライターを務めたSorensen 氏自身の手によるJ. F. Kennedy 氏の演説集を読んでいます。時間の合間に読むだけなのでなかなか進まないのですが、それでも演説の中に示されるKennedy 氏の高い理想と、洗練された弁論と、「弁論の力」に対する絶対的な自信には、強い感銘を受けずにはいられません。

 折しも政治の世界では、安倍総理大臣がブッシュ大統領と会談を行い、日米同盟をより強固に推進することをうたっています。それは正に両国にとって望むべきところなのですが、その為にと言うべきかそれに隠れてと言うべきか、今回の訪米の陰の最大課題とも言える従軍慰安婦問題が「従来どおり謝罪」によって、これもまた従来どおりの曖昧な解決が図られたことを、正直私は残念に思います。
 
 「狭義の強制性を裏付ける証拠は無い」と言う安倍総理大臣の発言内容は極めて全うなものだと私は思います(韓国のメディアを中心に幾つかの「証拠」が提示されていますが、先入観なしで見ればそれらはどれも「軍隊の一部に愚行があった」事を示すにすぎず、逆から見ればむしろ「軍全体としての行為ではなかった」事を裏付けるものであるようにすら見えます)。安倍総理の発言に対する米国、韓国、中国、をはじめとする各国メディアの反応は、総じて批判的なものでした。それらは、合理的なものとはいえないと私は思っていますが、それでも予想の範囲内のものではあったと思います。これに対する日本メディアの反応と世論は総じて「我々の主張を繰り返しても、誤解されて批判を招くだけだ。ここは曖昧なまま謝るのが、大人の解決である」でした。官邸もそれに同意見であったからこそ、今回のような解決が図られたのでしょう。

 政治の世界は、結果が全てです。今回の謝罪で、とりあえず事態が沈静化したように見える以上、異を唱える余地はないのかもしれません。又、国民の世論の多くが「曖昧な解決」を望んでいるなら、それを忠実に実行するのが、民主主義における政治家の役割なのかもしれません。しかしそれでも私は、「日本の代表者として、自らの言論の力を信じて、日本の立場を明確に主張し、これに対する100の批判には、1000の冷静な反論で対応して欲しかった」と思います。

 上記の演説集の中で Sorensen 氏は、「言論は、それを裏付ける力を持ったときに初めて力を持つ」と指摘しています。官邸が今回のような判断をした最大の理由も、官邸自身の考え方と言うよりはむしろ、「現時点の日本には自らの主張を貫く国力は無い」と判断したからだと私は思います。そうであるなら、政治に携わる者の端くれとして私は、10年かかっても20年かかっても、「世界を説得する国力」と、「自らの力で世界を変革出来るリーダー」を持った日本を、何が何でもでも実現したいと、思います。

 最後に、上記の演説集の標題ともなっている一節を引用します。日本の首相がこれに匹敵する弁論で世界を動かす日が来る事を、私は信じています。

Let the world go forth from this time and place, to friend and foe alike, that the torch of humanity has been passed to a new generation of Americans.

So, let us begin anew-remembering on both sides that civility is not a sign of weakness, and sincerity is always subject to proof.  Let us never negotiate out of fear.  But let us never fear to negotiate.


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