活動報告

忘れられた年金の時効

  • 米山 隆一
  • at 2007/8/29 05:00:07

 昨日私の下に、一人の老夫人が訪れました。その方は、「夫が厚生年金に加入しているのを失念していて、ずっと申請を出さずにいた。昨年それに気がついて社会福祉事務所に行ったが、『5年分は支給されますが、それ以前のものは時効により無効です。500万円損をしましたね』と言われてしまいました。その時はそれで諦めたのですが、最近報道で、『年金の時効がなくなる法律が出来た』といっていました。支払い記録は完全に残っているのですが、夫の年金は戻るのでしょうか?」と、私に聞かれました。

 私は、先の国会で成立した「年金時効特例法」を読んだ上で、(うかつにも)「恐らくは戻ってくると思いますが、念のため社会保険事務所で確かめてきます」と答えました。そして社会保険事務所で確認した結果、答えは「No」でした。その答えは、本来もらうべきだった年金を受け取れるものと思っていた老婦人を、ひどく落胆させました。

 「年金時効特例法」は、あくまで「記録が訂正された場合」のみに適用があり、本人が支給申請を行わなかった場合は、どんなに支払い記録が残っていても、あくまで「時効」で消滅するというのが、この事例に対する社会保険庁の論理でした。

 この論理は、一見「本人が申請しなかったのだから法律上仕方ない」と思えるかもしれません。しかし、よくよく考えてみると、極めて行政側に都合のいい一方的な論理であるように私には思えます。先ず持って「時効」と言うのは、「時間が経ったら自動的に権利が消滅する」と言うものではありません。「あまりに時間が経ってしまうと、事の真偽が良く分からなくなるから、義務を果たす側が『もう時効だから義務はありません』と『主張してよい』」という権利に過ぎません(権利を行使する事を「時効を援用する」と言います)。つまり行政は、必ず時効を援用しなければならないのではなく、記録どおりに年金を支払っても、法律上は何の問題もないわけです。それどころか、強制的に年金保険料を徴収し、記録も完全に残っていて権利関係になんら疑義のない相手に対して時効の利益を援用して支払いを拒むことは、「権利の濫用」に近いといえます。また、支払いを拒むなら拒むで、それならば払い込まれた年金保険料は行政の不当利得となって5%の法定利息をつけて返還する義務が生じるのではないかと言う、深刻な疑問が生じます。

 年金は国家が支払いを約束して強制的に徴収したお金です。支払いを行った人は余程のことがない限り、支払いを受ける権利があるとするのが本来の姿です。年金時効の解除を、記録違いの訂正があった場合のみに限定した「年金時効特例法」を作ったのは他ならぬ自民党ですが、その一員として、「本人が受給申請を行わなかった場合でも、記録が完全で支払いの履歴に疑義がなければ、行政(社会保険庁)の側からは時効の援用を認めない」と言う条項を付け加えるべく運動を行いたいと思います。


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コメント

社保庁の一方的な言い分は、国民感情的には受け入れ不可能ですね。
運動の具体的な成果が、このブログで発表される日を楽しみに待っております。

  • Posted by ぬこ
  • at 2007/08/29 16:59:14

 ぬこさん、コメント有難う御座います。

 社会保険庁に限らず、「行政の『奇妙な』論理」と言うものは、あちこちにあります。これを正すことは、政治の非常に重要な役割の一つであると思います。時間はかかるかもしれませんが、結果を出せるよう、根気強く取り組みたいと思います

  • Posted by 米山 隆一
  • at 2007/08/30 05:10:13

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