現在国連安全保障理事会では、北朝鮮制裁決議案が議題に上り、おそらくは10日にも採決に付される見込みです。報道によれば、中国、ロシアは反対し、残り13カ国は総てが原則賛成を表明しているとのことです。常任安全保障理事国である中国、ロシアが拒否権を行使すれば決議案は採択されないため、両国を説得できずにいる日本政府を批判し、それを対米関係は良好に保ったものの、対中国、対韓国でギクシャクした小泉外交の失敗に帰する向きもあります。
しかし、私は其の批判は当たらないと思います。勿論総ての国と仲良くし、日本がひとたび提案すれば、総ての国が一致して賛同してくれる状態が最も良い事は、論を待ちません。最終的にそういった世界協調を実現するための努力を、忘れてはならないでしょう。しかし実際問題として、其の理想は遥か彼方にあります。理想は理想として仰ぎ見つつ次善の策を探すなら、
1. 日本の主張を明確に示す。
2. 1.に対して出来るだけ多くの賛同を得て、其の正当性を示す。
3. 反対意見をゼロにすることが不可能なら、反対者を孤立させ、其の主張が不合理であると言う印象を他の多くの者に対して抱かせる。
4. 2.3.の結果をプレッシャーにして反対者を説得しつつ、自らにより有利な妥協点を見出す
ことが必要になります。3.4.は、正直武士道精神に反しますし、日本人的にあまり好ましいことでもありません。しかし各国が平然とこの手を使うのが残念ながら国際政治の現実というものだと思います。そうであるなら、腹をくくってそれをやるのが、国民の安全と国益の追求に責任を持つ政府の仕事でしょう。
其の観点から見てみると、今回の件では、制裁決議案を採決まで持ち込めた(今までは採決にふすことすら出来なかった)ことで1.が、中国、ロシア以外の国の賛同を得られたことで2.が、反対を中国、ロシアに限定できたことで3.が満たされています。ロシアに対する説得が功を奏してロシアを棄権に持っていければ、3.はより完璧になります。
最終的に中国も説得して決議案が採択されるのが望ましいことは勿論です。しかしこの状況であれば、例え拒否権を行使して決議案自体が採択されなくても、孤立感は深まりますし、次に北朝鮮が何かしでかしたら、それは拒否権を行使した者の責任だと言うことになりますから、中国も北朝鮮に対してなんらかのブレーキをかけざるを得なくなります。そうであれば、其の状況を背景に再び交渉して、中国も飲めて、かつ日本にとって少しでも有利な妥協点を見出すことが可能になります。
外交は一夜にして変わるかも知れませんから、明日には全く状況が変わっているのかもしれません。しかし、対決を回避せず明確に自らの主張を示す政府の現在の姿勢は、決して間違っていないと思います。現状を維持できれば、例え中国、ロシアの拒否権行使で採択されなくてもそれは日本外交にとって「余力を持って延長戦に望めるドロー」でしかなく、逆に拒否権を行使した側にとっては、「不利な延長戦に持ち込まれた実質的な外交的失敗」につながるからです。10日の採決を少しでも有利に持っていき、仮に不採択となってもその後の交渉で「延長ゴール」を決めるための、日本政府の更なる努力に期待します。
私も今回の日本政府の対応は良いと思っています。とにかく早かったですし。 とにかく一番良かったのは 1. 日本の主張を明確に示す。 がはっきりしていたところかな。個人的に。 初心者の私にもわかりやすかったです。
「最近政治にちょっと興味が」さん、コメント有難うございます。 「主張を明確に示す」これは国際政治の舞台だけでなく、国内政治においてもとても大事なことだと思います。勿論主張したからと行ってすべて実現するわけではないですし、それを望んでもいけないと思います。でも自分はどう思っているかを相手に伝えることこそが何より必要な第一歩で、これがなければ何事も始まりません。 「最近政治にちょっと」抱かれた其の興味を、是非暖めて下さい。やがてそれは一つの考えになるだろうと思います。そういった考えの一つ一つを、一人一人が示していくこと、それが日本をよりよく変えていく第一歩であると、私は信じています。
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