8月7日、魚沼市芋側地区でミニ集会を行いました。小さな集落であったので少人数の集会でしたが、先のブログで書いたとおり、議論が活発になって鋭い突っ込みを何度か受けました。その中でも話題となったのは、来年度から施行になる「農業の担い手絞込み」についてでした。この問題については長岡市の上条町のミニ集会でも話題になりましたが、実施が迫るにつれて皆さんの関心も高まっています。また、民主党小沢代表は、この施策を意識してか、「生産価格と市場価格の差を全農家に国が補填する」事を柱として兼業・中小農家の保護を行う姿勢を鮮明に打ち出しています。
 この「担い手絞込み」は19年度産の農作物から適用される「品目横断的経営所得安定対策」に定められたもので、原則として4ha以上の耕地を有さないと所得保障が受けられなくなると言うものです。現状では単独で4ha の基準に達する農家は30%、耕地面積で50%に過ぎず、残りの70%の中小農家は適用対象外となります。ただし、複数農家が共同で農業を行う「集落営農」で原則20ha以上となれば適用対象となるため、現実的には中小農家の大半がこの集落営農を選んで適用対象となるでしょう。
 率直に言って私は今回の政府案には問題が多いと思います。もちろん政府案の言うとおり、農家の高齢化が進み、農業人口の減少が続いている以上、農業の維持には大規模化による効率の向上は避けて通れません。又財政上の制限やWTO上の制限を考えると、「すべての農家に補填し続ける」事も困難です。従って方向としては政府案の提示する「農業の大規模化による生産効率の向上と条件を絞っての経営支援」は不可避であり、ばら撒き的民主党案には現実性はないと思います。
 しかし、実のところ政府案も「集落営農」と言う妥協案を採用したがゆえに、結果としては恐らくは相当数の中小農家が補填対象となります。そうであれば実際のところ財政上は、「全農家に所得を補填する」民主党案と大差ありません。そしてこれは完全に推測ですが、かなりの確率で「集落営農」は大規模化による生産効率の向上に効果を発揮しないと私は思います。一般論として組織は、指揮命令系統がはっきりしなければうまく動きません。「生産効率の向上」のように現状を変革する必要がある場合は尚更です。対等な複数農家がおそらくは同格で行うことになる集落営農では、事務負担だけが増して効率向上に効果を発揮しない現実的危険が相当程度にあると私は思います。そうであれば実はこれは結果として「中小農家を温存する」民主党案より、さらに非効率な結果をもたらす危険があります。
 結局のところ今回の政府案は、1)将来的方向性としては間違っていない2)しかし拙速に過ぎたために実施には「集落営農」と言う妥協案が必要になった3)この妥協案ゆえに、実際には目指すところとまったく異なる結果を生む危険性がある。と、私は考えます。
 私はこれに対する現実的方策は、1)将来的に担い手を絞り、所得補填対象を限定することは不可欠だが、それには5−10年の周知期間をおくべきであり、その間は中小を含めた全農家を補填対象とすべきである。これはその間の財政負担の上昇を招くが、「集落営農」と言う妥協策で大半の農家が補填対象になるなら、結局のところ財政負担の額は変わらない。2)大規模化は、個人、若しくは法人への集積化の誘導で行うべきである。農業の後継者が減少している以上、10年後を考えると、大規模化は進めざるを得ない。3)2)の取り組みは、実はすでに農業委員会、農業開発公社等で行われているが残念ながらその取り組みが十分効果を発揮しているとはいいづらい。所有権移転に対する税制上の優遇措置、農地貸借制度の柔軟化、民営化等を含めた大胆な制度変更が望まれる。であると思います。
 日本の農業を守るためには、今現実にその50%を支えている中小農家の保護は不可欠であり、ここが崩壊してしまったら将来の大規模化は絵に描いた餅に終わるでしょう。しかしだからといって将来の大規模化に全く目を瞑ってしまったら、10年後には後継者不足で、日本農業は立ち行かなくなってしまうでしょう。中小農家の保護と大規模化の達成の両立と言う難しい課題の解決が政治には求められています。政府案の実施は、いずれにせよ来年度には始まります。政府案の枠組みでも、運用次第で1)-2)の効果をもたらすことは可能だと私は思います。自民党は責任政党として、大胆で柔軟な対応でこの課題を解いていかなければならないと、私は考えます。 

 


 


  • コメント (0)
  • トラックバック (0)
トラックバックURL :
http://www.election.ne.jp/tb.cgi/3024

エレログTOP | エレログとは | 運営会社 | 免責および著作権について | お知らせ

政治家ブログ”エレログ”地方議員版ができました。参加お申し込みはこちらから

政治家専門サイト ele-log 国政版 お申し込み 政治家専門サイト ele-log 地方版 お申し込み
国会議員、都道府県知事、市区町村長、都道府県議、市区町村議、および立候補予定者専用

Copyright by Promote committee of Online-Election.,2001-2007, all rights reserved.
ele-log and the ele-log logo are registered trademarks of
Promote committee of Online-Election