本日、北朝鮮が核実験を行いました。「失敗」との見方も出ていますから、状況が完全に分かるまでには、まだしばらくかかるのかもしれませんが、もし成功であったなら、北朝鮮をめぐる周辺5カ国の安全保障に関する状況は、一変するといって良いと思います。
核兵器を使える形で持っていると言う状況は、今までのように「持っているかもしれない」状況とは、全く異なります。報道によると、現在北朝鮮が保有している核爆弾は重さ4tとのことで、移動にあまりに手間と時間がかかり、通常であれば兵器としては役に立ちません。しかし、これが本当に爆発させられる核爆弾なら、状況は異なります。極論するなら、北朝鮮はこの核爆弾を4tトラックに載せて、「近づいたら起爆スイッチを押すぞ」と拡声器で叫びながら、ゆっくり南進することが出来ます。核実験が成功していなければそれは単なるブラフに過ぎませんし、そもそも北朝鮮自体がそんなことをやる気になれないでしょうが、一度成功してしまったなら、それは、最早ありえないシナリオではなくなります。
これに対する対処は、限られています。先のブログで書いたとおり、核は強力な「抑止力」を有します。米国がイラクに使ったような軍事的オプションは、極めて困難になった言って良いでしょう(陸軍力の投入は、自爆的核爆発がありえる以上、ほぼ不可能ですし、空爆は、場所が相当の確度で特定されない限り、報復の時間を与え、これも困難でしょう)。しかしこれを放置すると、それこそ「核はもったもの得」と言う状況を作り、核の連鎖をとめられなくなりますし、それ以上に上述した北朝鮮からの軍事的脅迫と言う、看過できない事態が生まれます。
結局のところとりうる手段は、「制裁」による兵糧攻めと、対話復帰への粘り強い説得と言うことになります。しかしこれも、対話復帰に対し多大な見返りを用意することは、矢張り「核は持ったもの得」と言う状況を作ってしまうゆえに出来ません。北朝鮮が早々に対話に応じることは期待しづらいでしょう。そうなると、「制裁」が北朝鮮を困窮させ、それが最終的に冒険的開戦と自爆的核爆発へとつながる可能性を否定することはできなくなります。
日本のなすべきことは、何より、安全保障理事会での議論を通じて北朝鮮に厳しい制裁を突きつけると同時に、対話のチャネルを残し、粘り強く北朝鮮に核の放棄を求めることです。最悪のシナリオは、何が何でも避けなければなりませんし、その努力を、少しでも惜しんではいけません。しかし、それと同時に、最悪のシナリオを念頭において、それに対する準備をすべき時が来ていると、私は思います。最悪のシナリオが最悪だからといって、それが実現する可能性から眼を背けることは、現実逃避に過ぎません。日本はその時どう対処するか、真剣に考える時です。
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