霞ヶ関の官僚に対する、タクシー内での酒食・金券の提供が、マスコミで大きく取り上げられています。
私は、金券の提供に関しては禁じられている「運賃の払い戻し」に当たる事、また酒食の提供についても場合によっては公務員倫理規定に言う「不適切な利益供与」に当たることから、このような接待を受けることは厳に慎むべき事だとは思います。しかし、タクシー内で酒食を受け取った官僚のバッシングで事たれりとするのも、問題の本質を外しているように思います。
例えばこれを自分に置き換えて、友人の結婚式の帰りにタクシーチケットをもらったとしましょう。外に出てみたら、複数のタクシーの運転手さんが客引きをしていて、そしてそのうちの一つに乗ったら「お客さん有り難うございます。これどうぞ」、と言ってビールを渡されたとします。これが有料なら、友人に余計な金銭的負担をかけることになりますから断る方が多いと思いますが、何せ無料です。誰に迷惑をかけるわけじゃなし、いただけるものはいただきましょうと、そう思って飲む方が多いのではないでしょうか。そして別の友人の結婚式で再びそのタクシーが客待ちをしていたら、「お、あそこサービス良いんだよな」位の感覚で、再びそのタクシーを選ぶか方もまた、多いのではないかと思います勿論この例は「私的なお金」ですから、「公金」と同列に論じることは出来ません。しかし、もらってしまった官僚の「気持ち」としては、「税金を無駄に使うわけじゃなし、誰にも迷惑はかからない。くれると言うんだからもらいましょう」位のつもりではなかったかと、想像します。
実際、「税金の無駄遣い」は「酒食を受け取ったこと」そのものにあるのではなく、「酒食を提供しても十分採算がとれるほど高額のタクシー券を日常的に使っていた」事にあります。
報道によると、埼玉県北部にすむ30代の主計局の係長が、2万~2万5千円かけて自宅に帰る際、2千~3千円の現金やクオカードを年150回程度受け取っていたとのことです。現金を受け取っていたこと自体勿論大問題ですが、より大きな問題は、このタクシーの使いっぷりだと私は思います。報道の通りなら、この係長は、ほとんど2日に1回、2万5千円もタクシーを使い、年間なんと300万円から360万円も使っていたことになります。タクシーの運転手が多少の接待をしてもこのお客さんを捕まえておきたくなるのも、当然と言えば当然でしょう。官僚側の理屈は「それだけの激務だから」になるのでしょうが、民間企業なら、「そんなに毎日遅くなる仕事なら、埼玉北部になど住まず、都内に部屋を借りなさい(そういう人の為に都内に格安の公務員宿舎があります)。それがいやなら、遅くなった日は都内のビジネスホテルにでも泊まるか、さもなくば省内で始発を待ちなさい(そんな時の為に、省内には仮眠室があります)。どこに住んでいても幾らでもタクシー代を使えるなんて、甘えなさんな」が普通の感覚でしょう。
官僚をバッシングして、タクシー内でビールをもらうことを止めさせても、溜飲は下がるかもしれませんが、使われる税金はほとんど一銭も変わりません。しかし、1回のタクシー代の上限を1万円、月の上限を4万円(これでも十分多いと思いますが)、これを超える部分は自費で、と決めればこの係長分だけで年間250万~300万円もの税金が浮きます。霞ヶ関全体でとなれば、あっという間に1億、2億でしょう。業務が気になる向きもあろうかと思いますが、その時はこの係長を始め官僚の皆さん自身が公務員宿舎に引っ越すなり「ホテルオークラ(かつて大蔵省仮眠室をこう呼びました)」に泊まるなりするでしょうから、支障を来すこともないでしょう。またそうなれば、そもそもの大本である「10時入庁午前1時退出」で大臣の答弁を書くなどと言う霞ヶ関と永田町のなれ合いとも言える悪弊が消え、電気代を含め数十億の無駄の削減になるかもしれません。
行政改革は、官僚バッシングで溜飲を下げるにとどまらず、今まで当然と思ってきた習慣に、「当たり前のコスト感覚を導入すること」で実際に税金の無駄遣いをなくすことこそが重要であると、私は思います
おっしゃるとおり、この問題はタクシー会社の自主的なサービスなので、公務員をバッシングするのはかなり筋違いと思います。
官僚も「こんなことまで叩かれるのか・・・」と絶望感にさいなまれ、ますます離職や転職が進むかもしれません。
しかし、前にも書きましたがこんなに官僚の一挙一動がたたかれるのは財務省主計局の財政再建至上主義が原因と思われます。
社会保障費削減しまくって保険料増やしたり増税すれば、誰だって政府に不満を持ちます。
そこにどんなに些細な種火でもあればそれが正当であろうがなかろうが炎上します。
財政再建至上主義をやめない限り、官僚の悪口を声高に叫んだ政党や政治家が選挙に勝つ流れは止まらないでしょう。
その意味で、財務省主計局の官僚が不当にバッシングされている今回の事件は彼らに反省を促すいい契機になるのではないかと期待しております。
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