ニュースの感想
私事で恐縮ですが、私は小学生時代少年柔道教室に通っていました。さして運度神経が良くないとういうか、率直に言うと悪いほうに属する私にしては、柔道は結構強くて、なんと県大会団体戦に優勝した際に大将(5人の団体戦で、5番目に登場する選手。最もこの時一番強かった選手は副将((4番目に登場する選手))を努めていて、私は5人中2番目に強い選手でした)を努めていたりしました。
ただ私が強かったのには、きわめて姑息な理由があります。小学生くらいだと基本的にはみんな教えられたとおりの投げ技を掛け合うものなのですが、私は自分にそんなことをできる運動神経がないのを知っていたので、変則的な返し技に徹していました。相手が投げ技を掛けてきたらともかくも我流の変則返し技で相手の体勢を崩して転ばせ、後は寝技で一本にしてしまうと言う戦法でした。「そんなもので県大会に優勝できるのか? 」と思われるかもしれませんが、小学生くらいだとみんな極めて正直に投げ技をかけてくる上に、正直そこには隙があります。その上私の返し技は運動神経が悪いがゆえに出来上がってしまったバックドロップ変形版のような妙な技で、それゆえに皆面食らって、面白いように倒れてくれました。同じ道場の人は対応策を講じて来るのでやがてそれほどうまくかかってくれなくなるですが、対外試合が少ない小学生の大会では、相手にとって私は、見たこともない初めてのタイプなわけで、効果は絶大でした。勿論その倒れ方は一本を取れるほどのものではなかったのですが、そこから後は流石に練習に練習を重ねた寝技で(これは本当に上手だったと思います)、一本に持ち込むことができました。
こんな個人的な話を書いたのは、別段自慢のためではありません。レベルは天と地ほど違っても、現在オリンピックで起こっている日本柔道は似たような状況なんだろうなと、想像するからです。日本柔道は指導者が「正統日本柔道」を希求し、選手の側もそれを「当然」として受け入れるが故に、どうしても均一になりがちなのではないでしょうか。そこに外国の変形タイプが来ると、驚きも入って実力を発揮できなくなるのではないかと、私は想像します。「それは相手にとっても同じで、相手は日本柔道に面食らうのではないか? 」と思われるかもしれませんが、「正統柔道」は基本的には多くの人が初期段階で習っているでしょうし、外国人には強固に我流を貫く方が多くて、ごく普通にバラエティに富んだ選手と対戦しているのではないかと、これまた想像します。
「正統日本柔道」はもちろんあるべき姿ではあります。しかし、ひたすらそれを希求することは、一方で「均質性の檻」に自らを閉じ込めてしまう危険を伴います。「正当日本柔道」は大切に守りつつ、「スポーツとしての柔道」においては、型にこだわらず、勝つ可能性の高い事なら何でも取り入れる柔軟性が今後は必要なのではないかと、私は思います。もとより柔道は戦場で生き残る為の技術なのですから、「生き残る為にプラスになる事は何で取り入れる」というのは決して武道精神にもとるものではないでしょう(と、そんな事を考えていたら、もっとも日本柔道的でない柔道を取る男と評される石井選手が、見事金メダルを勝ち取りました)。
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