アメリカの金融危機に端を発した不景気が深刻化する中で、最近「大手金融機関のマネーゲームが諸悪の根源だ!」的な論調をよく見かけます。また政治の世界でも「額に汗して稼ぐのが一番で、マネーゲームなんてとんでもない!」と言う主張が頻繁に見られます。
私自身養豚農家兼肉屋の息子で、子供の頃はそれこそ「額に汗して」働きましたので「額に汗する」ことの重要さは身に染みて分かっています。また「単なる投機」としての「マネーゲーム」が否定されるべきことに異論はありません。しかし日本全体が、特に政治指導者が、レトリックではなく本気で「(投資的なものを含めて)マネーゲームなんてあってはいけない!」と考えることは、誤っていると私は思います。
マネーゲーム、すなわち投資が活発に行われていたこの数年間、世界は「未曾有」の好景気に沸いていました。それがマネーゲームの終焉とともに、世界はこれまた「未曾有」の大不況に陥っています。ものすごく単純に考えると、実は世界の不景気を終わらせるもっとも有効で手っ取り早い方法は「マネーゲームの復活」だということになります。
勿論「マネーゲーム」と言う言葉それ自体は適切ではありません。しかし、「たとえリスクがあっても、リスクを正当に評価して、お金を貸す」「リスクを証券化、デリバティブ等の手法でできる限り分散して、多くの人で持ち合うことで、社会がとれるリスクの量を増やす」と言う仕組みそれ自体は、決して否定されるべきものではありません。むしろ現在進行中の不景気は、これらの仕組みが経済の繁栄にいかに重要なものであったかを、逆説的に示しているとさえ言えます。
今日本が、そして世界が経済の復活のためになすべきことは、「マネーゲームの全否定」ではなく、いかにして、「失敗しづらい、健全で、適正なマネーゲーム」を再構築して、リスクのあるプロジェクト(そもそもリスクのないプロジェクトなど存在しません)に、リスクに見合ったお金を貸す仕組みを作り上げることであると、私は思います。そして真っ先にこれに成功した国こそが、真っ先に不況から抜け出し、次の時代の世界経済の主導権を握ることになるでしょう。オバマ大統領の経済スタッフを見る限り、アメリカはそれを十二分に意識して、金融システムの再構築に突き進もうとしているように見えます。麻生内閣も、目先の需要拡大に奔走するのみならず、是非、次代に通じる新たな金融システムの構築に全力で取り組んでいただきたいと思いますし、私自身、その為に力を尽くせればと思います。
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