活動報告
今更言うまでもないことですが、現在日本は不況のまっただ中にあります。本年の経済成長率は主要先進国中最低の-5%と予想され、今まで基本的には黒字であった貿易収支、経常収支とも2月連続で赤字という惨憺たる状況です。
そんな中で、多くの識者、特に政治的指導者がこの不況にどう対処するかを述べていますが、その多くは「行きすぎた市場原理主義」や「利益第一主義」を批判し、「これからは競争より共同だ」「物質的利益より精神的幸せだ」「豊かさには限界がある。足るを知らなければならない」と主張しているように見受けられます。
私は、それらの主張は、勿論それぞれにもっともなものだと思います。市場は様々な失敗をします。その失敗から学び、より良い制度を作るのは当然のことでしょう。また人間は物質的豊かさだけでは決して幸せになれません。真の幸せを手に入れるために、精神的豊かさは是非とも必要です。又現状に不満を抱き続けるよりも、足を知ることこそが、人生を幸福に生きる秘訣であることに、異論はありません。
ですが私は、これらの主張がややもすると「市場の否定」「競争の否定」「物質的豊かさの否定」に至ってしまっていることに、強い危惧を感じます。日本は、石油もでなければ鉄鉱石も無く、食糧を自給するに十分な耕地を有しない国です。世界の自由市場で勝ち残って、外貨を稼ぎ、そのお金で石油や、鉄鉱石や、更には食料を輸入しなければ、絶対に今の豊かさは維持できません。そして今の豊かさが無くなれば、非常に多くの方の人生から幸福が失われることは、否定しがたい事実です。その事実から目を背けて、過去への郷愁に基づく精神論のみで国の方向を導こうとすることは、衰退への極めて危険な第一歩に他ならない様に、私には思えます。
市場の修正も、共同も、協調も、足るを知ることも、勿論大事です。しかし、それらは基本的には、「現状で満足する」事を求めているに過ぎません。それだけに終わってしまったら、日本は「不況でも我慢する」事は出来ても、「不況を克服する」事は出来ないのではないでしょうか。
私たちがこの不況を克服するために本当に必要なのは、現在の否定でも過去への回帰でもなく、よりよい技術を開発して、より効率的な工場を造って、より上手く動く市場を構築して、よりよい社会保障制度を打ち立てて、こんな状況でも世界中で売れる商品を作り、こんな状況でも世界から投資が集まるような日本経済を作り上げ、こんな状況でも皆が安心できる社会をつくること、つまりは「よりよい未来を作ること」だと、私は思います。
今日本に求められているのは、過去への郷愁ではなく、未知の世界に挑戦し、自らの手で新たな未来を作り上げる気概であると、私は考えます。
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