麻生総理が「経済危機克服のための有識者会合」で「株屋は信用されない」と発言したことが報じられています。発言そのものは「いつもの場違いな軽口」に過ぎないと思われるので、「総理、そろそろ学習していただけないものでしょうか・・・」と思うだけなのですが、この発言が、実のところ自民党内どころか社会全体に蔓延している「市場否定」「金融・株式否定」の空気を反映しているのではないかと、私は危惧します。

 先の記事でも書きましたが、日本には今「小泉政権の市場原理主義が総てを壊した」「額に汗して働くのが本道で、株で儲けるなんてとんでもない話だ」「効率至上主義が格差を生んだ。日本は競争より協調だ。」と言った論調があふれています。
 確かに今回の不況は、アメリカの金融経済の破綻に端を発しており、その修正は不可欠でしょう。しかし、「金融経済」若しくは「金融・株式を初めとする資本市場」そのものが諸悪の根源という論調には、私は強い違和感を感じます。1980年代の日本のバブルにおいても金融は大きな役割を果たしましたが、基本的には「土地バブル」がその正体でした。良く引用される例ですが、17世紀のオランダでは、「チューリップの球根バブル」が発生しました。いずれもバブルがはじけた時社会には大きな混乱が発生しましたが、「土地取引が諸悪の根源だ!」「チューリップの球根取引が悪いんだ!」と考えるのは馬鹿げたことでしょう。バブルというのは別段現代の金融経済が有っても無くても発生する、歴史上良くある現象に過ぎなくて、ただ今回は其れが「金融経済の発展によって世界に波及した」に過ぎません。打つべき手は、「金融の否定」「株式の否定」ではなく、「バブルを発生しづらい枠組みの構築」「バブル崩壊が波及することを防ぐ仕組み作り」であるはずです。

 「市場」「効率」「競争」これは、グローバル資本主義が確立した現代に生きる私たちが、好むと好まざるとに関わらず正面から取り組まなければならないものです。市場の欠点、効率の欠点、競争の欠点は勿論最大限修正すべですが、大きな原則として、「開かれた市場において、競争を通じて、より効率的な経済を打ち立て、国家間競争に勝利した」からこそ、日本は戦後この豊かさを獲得したのだと言うことを、忘れてはなりません。
 日本がこれからもこの豊かさを維持したいなら、とるべき道は、これからも「よりいっそう」「開かれた市場で、競争を通じて、効率的な経済を打ち立てて、世界において勝ち続ける」しか道はありませんし、その為には、株式市場を初めとした、公正で効率的な資本市場の整備は必要不可欠なものです。もしこれからの日本が「資本市場を軽視して、市場を閉ざし、競争を排除して、非効率な経済体系を作り上げ」るとしたら、その先に来るものは、貧困という名の没落でしかありません。その極端な失敗例を、私たちは隣の北朝鮮にはっきりと見ることが出来ます。私は、知らず知らずのうちに日本が没落への第一歩を踏み出していないかと、心から憂えます。

 バブルの崩壊によって、率直に言って日本は、「金融経済」という勝負に負けました。勝者であったはずのアメリカも又、今回の金融危機で敗北しました。敗北の後、勝負そのものを否定して「協調」という名の安逸に逃避するのか、再び勝利することを目指して自己改革に努めて戦い続けるかで、この2国の命運は決まると、私は考えます。


 


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