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本日自民党で、内閣人事局局長を官僚出身の副官房長官が兼務する(理論上は政治家の官房副長官も兼務も可能ですが、実務上は不可能でしょう)とした、国家公務員制度改革関連法案を了承しました。
私は冗談でも何でもなく、この法案は日本の滅亡を招来しかねない、極めて危険なものであると考えます。
戦前日本には曲がりなりにも民主政治が存在しました。その民主政治が、何故軍部を押さえられなかったのか、其れは政治家の能力不足だけが原因ではありません。戦前の内閣には、陸軍大臣、海軍大臣があり、そのそれぞれは現役将官がなることとされました。この為、陸軍大臣、海軍大臣が反対すれば閣議決定は出来ず、陸軍、海軍が大臣を出さなければ内閣を組織できなくなり、システム上政治が軍の意向に反することが不可能であったことも、その大きな理由でした。
今回のこの「内閣人事局長兼官房副長官」が実現すれば、実は「軍」を「官僚組織」と置き換えれば戦前と全く同じ事態を生じえることになります。そもそも現在閣議決定においては、それに先だって官房副長官が取り仕切る事務次官会議がひらかれ、ここで調整がつかなかったことは閣議に上程されないことが慣習として確立しています。つまり現時点で、官僚出身の官房副長官が反対すると閣議決定が困難になる言う事態は既に生じています。ここに、官房副長官が各省庁の幹部人事まで握ることになれば、官房副長官が反対する限り、ほぼすべての決定は不可能と言うことになります。そして、霞ヶ関は、意に反する内閣に対しては、「官房副長官を出さない」と言う究極のサボタージュをすることで、完全に内閣を機能不全に陥らせることが可能となります。つまり「内閣人事局長兼官房副長官」の誕生は、政治に対してほぼ完全な拒否権を持った、霞ヶ関という名の強大な独立権力の登場を意味します。
勿論現在の官僚組織は、何があっても「戦争」を起こすことはないでしょう。しかし、今現在進行中の天下り問題に見て取れるように、チェックの働かない独立権力が、次第に肥大し、自己拡大のために国益を無視して暴走しかねないことは想像に難くありません。この法案は、かつて軍の暴走によって戦争に突き進み、壊滅的打撃を受けた日本が、こんどは官僚組織の暴走によっておそらくは財政の破綻-国債のデフォルトと言う名の破滅に突き進む、第一歩となる危険を現実に有します。
麻生総理には再考を心より希望すると伴に、もしこれを通すなら、日本を滅亡の縁から救った名宰相吉田茂とは全く逆に、日本を滅亡に向けて歩ませ始めた暗愚の宰相として、後世に残りかねないことを、申し上げたいと思います。
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