北朝鮮の飛翔体(まあミサイルでしょう)発射を契機に、自民党の坂本組織本部長が「日本も『核を保有する』と言っても良いのではないか」と発言したことが、反響を呼んでいます。

 私は、現在の国際状況においては核保有が現実的には不可能なのは前提とした上で、ブラフとしてちらつかせるのであれば、それ自体はかまわないと思います。坂本氏の発言は、「実現を目指したもの」と考えると「そんな無茶な・・・」となりますが、「そういう発言をすることそれ自体が持つ抑止力を意図したもの」ということなら、「良いんじゃないですか」という所です。

 ただ私は、今回の件を契機に、日本が真剣に議論を初め、本当に目指すべきは、非現時的核武装ではなく、現実的情報(諜報)武装であると考えます。

 そもそも核兵器は、「使わないためのブラフの道具」です。これから兆単位のお金を使って核開発をしたところで、其れを実際に使う機会はほぼ絶対にありません。そして何のかんの言って日本は、米軍の核兵器という、ほとんど世界最強のブラフの恩恵に既に浴しています。独自の核を持ったところでブラフの効果の増強はほとんど無視できる程度でしょう。そんなことにお金を費やした上に国際的信用を失うのは、無駄以外の何物でもないように私には思えます。

 では北に対してはこのままで良いかというと、其れも又違うと私は思います。このまま放置したら北は、常に日本の防衛を脅かし続けるでしょうし、その都度国際的に北を追い詰めるのには困難を来すでしょうし、いつまでたっても拉致被害者を帰しはしないでしょう。
 北に対しては、是非この状態を打破しなければなりません。私はその為に最も有用なのは、諜報機関を設立して、北朝鮮の軍事情報をいち早く入手してその対処に努め、各国の動向を迅速に把握して最も有利な国際状況を作り上げ、出来うることなら拉致被害者の情報、更に理想的にはその身柄を、直接得てしまうことではないかと考えます。

 「諜報機関(スパイ機関)の構築」などというととんでもない陰謀家と思われたり、「映画の見過ぎだよ」と反応される方も多いと思いますが、野村監督のID野球を見て分かるとおり、勝負事において情報のアドバンテージを持つと言うことは、極めて大きい意味を持ちます。戦争も外交も勝負事の一つである以上、其れは変わりません。野球においては野村監督の「ID野球」を褒め称え、先のWBCにおいても対戦相手の試合に大量のスコアラーを送り込んで情報の収集に努めて勝利した日本が、外交になると何故か突然ナイーブになって、何の諜報機関も持たないばかりか、其れについての問題を提起しただけで「スパイを作ろうなんてとんでもない奴だ」と言った反応になるのは、不思議でさえあります。

 そして情報というものは、何も007まがいの大活躍をしなくても、例えばどこかの国の大使が外食をするとき、後ろをついて行ってその大使のお気に入りのレストランとバーを割り出し、自分もそこに通ってバーテンダーと仲良くなって、ちょっとした大使の一言を聞くと言った、地道な作業からも集められるものです(要するに「スパイ」ではなく、「外交のスコアラー」です)。他国がそうやって必死で情報を集めている時に(北朝鮮は相当真剣に日本の情報を集めているでしょう)、こちらがマスコミを通じた情報しかないというのでは、戦争所か外交においてさえ、基本的には全く勝負にならないのではないでしょうか。対北朝鮮に限らずこの「諜報機関の不在による情報の欠如」こそは、実は日本外交弱体の最大の理由の一つであると、私は考えています。

 安全保障にとっても最も重要な、「戦争を未然に防ぐ手を講じる」為に、そしてその前段階の「外交で勝利する」為に、更には外国に拉致された「日本人を救う」為に、「タブー無き議論」が許されるなら、先ず第1に取り上げなければならないのはとうてい実現不可能な上にほとんど何の効果も無い「核武装」ではなく、今すぐにでも実現でき、かつ絶大な効果を有する「諜報機関の設立」であり、これによる「外交スコアラーの養成」、其れを利用した「ID外交の確立」であると、私は考えます。ゴルゴ13を愛読されていてこの辺の事情にはきっとお詳しい麻生総理、ご一考いただけますと幸いです。


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コメント

核に対する考え方、私とほぼ同一です。
物理的な武力を行使する戦闘ではなく、情報という武器を行使する戦闘こそ日本が真に取り組むべき戦争でしょう。
しかし、どうも日本のIT関連産業従事者は到底同世代のトップとは言えない知能の持ち主達であり、シビアな戦闘には対応しきれないような気がします。
本当は先生のように灘から理三にトップ入学するような真のトップ頭脳達は意識が朦朧とする中で体力勝負、根性勝負を強いられることを常態化してもはや知能などあまり関係なくなった医療などという衰退産業ではなくこの分野にこそ充てるべきです(もちろん、半分は医療を蔑ろにする権力への当てこすりですが、残り半分は本気です)。

嘘つき憲法(申し訳ありませんが、私はあの偽善的で馬鹿に甘い日本国憲法が嫌いです)が何と言おうと、この戦争には本腰を入れてもらわなければなりません。

まあ、生命、身体を侵すもう一つの敵との戦闘(医療再生)にも本腰を入れて欲しいのだけど…それよりは情報戦による国防の方が遙かに実現可能性があるような気がします。

  • Posted by KY
  • at 2009/04/14 09:09:39

>そもそも核兵器は、「使わないためのブラフの道具」です。

広島、長崎での大量虐殺についてどうお考えですか?

  • Posted by 長岡人
  • at 2009/04/21 19:06:07

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