今国会を通過した補正予算に盛り込まれた、事業費117億円の「国立メディア芸術総合センター」通称「漫画の殿堂」について、与野党ばかりか里中真智子さん初めとする漫画家の方々を含め、「無駄か意義ある事業か」の議論が盛り上がっています。今回はこれに対する私の意見を述べたいと思います。

 無名の私故に取り上げられることは全くありませんが(苦笑)、実は私は少年漫画雑誌全盛期に青春時代を送ったこともあって(「ドラゴンボール」とか「北斗の拳」とか「スラムダンク」とかを少年誌の連載で読んだ世代です)多分麻生総理に負けず劣らぬ漫画好きです(参照 http://www.election.ne.jp/10840/2765.html)。その上アメリカでは、「招待されたお宅で子供との会話に困ったらドラゴンボールを持ち出せばよい」という秘策の恩恵に十二分に浴しましたし、類は友を呼ぶのか日本の漫画・アニメ好きアメリカ人の友人が複数います。 
 そんなわけで私は「『漫画・アニメ』は世界に誇る日本の大衆芸術である」と心より信じていて、この「漫画・アニメ」の素晴らしさを国民、更には世界に広げるのは極めて意義深い事だとは思います。しかし、だから「漫画の殿堂」の建設に諸手を挙げて賛成かというと、それはそうではありません。「漫画の殿堂」がディズニーランドやUniversal Studio の様な面白い施設になるならいざ知らず、文化庁が作ろうが文科省が作ろうが、日本の官僚様が作る限り、くそ面白くもない箱物ができあがるのはほぼ間違いありません。又何より「漫画・アニメ」という「大衆芸術」は、茶の間に寝ころんで、ミカンでもむきながら楽しむのが「正統」な楽しみ方で、「漫画を美術館の壁に飾ってみる」などと言うのは、ウィーンフィルのフルコンサートを相撲の枡席で聞くのと同じくらい「芸術に対する冒涜である!」と思ったりします(苦笑)。

 では世界中の多くの人に「正統」に日本の漫画・アニメの素晴らしさを知ってもらうにはどうしたらよいでしょうか?私は是非「バーチャル国立メディア総合センター」通称「アニメチューブ」俗称「アソウチューブ」を設立し、日本のアニメ・漫画を世界中からダウンロードできるようにすることを提案したいと思います(公的施設に時の為政者の名前をつけるのは、JFK国際空港の例を挙げるまでもなく、決して珍しいことではありません)。
 現在既にYouTube上には様々なアニメ・漫画がアップされていますし、ファイル交換ソフトを使えば流行しているアニメ・漫画のかなりのものは手に入れることが出来ます。しかし、その多くは著作権法上の問題をクリアしていませんし、何よりほとんどが日本語で、字幕がついているとして英語だけ、それも正確性に相当程度に疑問符がつくものです。
 ここは117億円の予算の一部で巨大サーバーを購入若しくはレンタルし、そこに「アニメチューブ」を構築して、一流の翻訳家に依頼して現存するアニメ・漫画を片っ端から英語・中国語・スペイン語・フランス語・ドイツ語・アラビア語・ロシア語あたりに翻訳し、すべての著作権者と著作権契約を結んで、これらの作品を世界中の人が適正な対価を支払えば、簡単にダウンロードできるようにしてこそ、日本が世界に誇る大衆芸術「漫画・アニメ」を、世界中の人に「正しい作法」-「ソファに寝ころんでポテトチップスでもつまみながら」楽しんでもらうことが出来るのではないかと私は考えます。
 勿論「アニメチューブ」の構築も、作品の翻訳も、著作権契約も、そしてそれら総ての維持管理も相当程度にお金と手間がかかることですが、そこは117億の予算を有効に使い、上手く民間委託をしながら(この巨大プロジェクトに携わって名を売りたいシステム会社は星の数ほどあるでしょう)、ダウンロードに対する課金で集めたお金を使っていけば十分に実現可能でしょう。又逆に言うと、これらのことを網羅的にやろうとすれば民間ではなかなか難しい巨額の費用と手間がかかるからこそ、是非とも政府が資金的・制度的援助を行うべきだと言うことになります。
 そうなるとアニメチューブと既存のアニメ・漫画配信会社との競合も問題となりますが、既存の会社が配信しているものに関してはアニメチューブは検索エンジンの役割を果たし、配信は民間が扱っていないコンテンツ・言語に特化することとすれば(そもそも著作権上そうせざるを得ないでしょうし)大きな障害にはならないでしょう。更にこのとき集めた配信料を著作権者に配分すれば、現在低賃金にあえいでいるアニメ制作の現場にも、幾ばくか貢献することが出来るでしょう。
 尚現在いつの間にか「国立メディア芸術総合センター」の設立正当化の理由にすり替わりつつある「原画の収集」については、新たに施設を作って行うより、国立国会図書館あたりに委託するのが最も効率的であろうと思われます。

 以上、如何にも「素人の思いつき」的アイデアを長々と書きましたが、私の本意は、これらの実現そのものより、「何事も、工夫を凝らして、時代に適したやり方でやろう」と言うことです。現在政策論争の多くの場面で公共事業が槍玉に挙がっていますが、それは公共事業そのものが悪いと言うよりも、時代も社会環境も全く変わってしまったのに、十年一日に既存の方法を踏襲して「昔ながらの公共事業」を継続していることにこそ、問題の本質がある様に思います。
 「国立メディア芸術総合センター」も、「情報発信→展示場の建設」と言う固定概念にとらわれずに、柔軟にその実現の方法を模索してこそ、価値ある施策になるものと私は考えます。


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コメント

賛成なのか反対なのか、結論が分かりませんでした。
基本的に原稿が失われる前にやって欲しいと思います。ですが、ああいうものは国立よりも民間でやるほうが良いと思うのですが、先生はどう思いますか?

  • Posted by faust
  • at 2009/07/05 20:27:35

faustさん、コメント有り難うございます。箱を作るのには反対、日本のアニメを紹介する工夫をするのは賛成とです。原稿を集めるのにも賛成ですが、それは国会図書館で十分でないかと思います。アニメの紹介は民間の方が上手くできると思いますが、翻訳、配信となるとコストもかかりますし、そもそも著作権法をきちんと整備することも必要になります。そこは国が民間の力を使いながら主導していくべきかと思います。

  • Posted by 米山 隆一
  • at 2009/07/07 13:29:41

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