米山隆一の10年先のために

　自民・民主双方で大連立の機運が高まっているとの報道がなされています。

　私は是非、この「大連立」を実現していただきたいと思います。理由は、3つあります。

　第1は、当然ですが、震災復興です。震災復興の方法、その為の財源の調達、福島第1原発に対する対処、今夏・来冬の電力供給と計画停電のあり方等々、早急に解決しなければならない問題は、山のようにあります。是非、ここは与野党共同で、素早い意思決定と施策の実行をしていただければと思います。

　第2は、先の記事にも書きましたが、「ピンチをチャンスに代える」という視点からは、実は今こそが、日本が政治的理由から先送りしてきた諸問題に正面から対処する最大のチャンスだと言えるからです。
　「税と社会保障の一体改革」は、はっきりと言って「増税＋社会保障削減」という極めて不人気な政策を意味します。しかし、現在の日本の税と社会保障の関係をざっくりいうと、国は、国民から「税金」を40兆円、「社会保険料」を56兆円、合計96兆円をもらって、「年金」を50兆円、「医療費」を30兆円、「その他福祉」を14兆円、合計94兆円を支払っているという状況にあります。つまり日本人は、全体としては、払った税金と社会保険料をそっくりそのまま福祉として受け取り、災害復旧を含めたその他全ての公的費用を、全額借金でまかなっているわけです。こんなことが長続きするはずはありません。「税と社会保障の一体改革」は、どんなに不人気でも、未来の日本のことを考えたら、やらざるを得ないことなのです。
　この他にも、TPPに対する対処や、過疎地域の集約化、公務員給与の引き下げなど、「冷静に考えたらやらざるを得ないが、不人気だからできない」政策が、日本政治には山積しています。そして、震災で国力の有効活用が絶対的に必要な今それをしなかったら、アメリカの経済学者が指摘しているように「日本は残念ながら貧しい国になる」他はありません。
　今までは、国民にその必要性を説明することが難しく、かつ野党から強い批判を受けるが為に実現できなかったこれらの「必要的不人気政策」を、今大連立を組めば、野党からの批判を気にすることなく、じっくりと国民を説得して、実現することができます。私は是非、与野党共同で、これらの「必要的不人気政策」に取り組んでいただきたいと思います。

　第3の理由は、少々遠大な話になってしまうのですが、「真の2大政党制」を日本に根付かせる為に、自民党が「敵に塩を送る」ということがあっても良いのではないかと、思うからです。
　民主党政権は、それはそれで頑張っているとは思うのですが、正直経験不足によるであろうどたばた感は否めません。このまま自民党が手を貸さなければ、恐らく次の選挙は大敗して、解党の危機に瀕するでしょう。それは勿論自民党的には喜ばしいことなのですが、だからといってその後自民党1党支配が続くのは、長い目で見て日本の為にならないでしょう。自民党と協力して政権を運営することで民主党が経験値を上げ、次の選挙で大敗したとしても、次の次では、良きライバルとして自民党と切磋琢磨できるようになっている事は、日本政治を向上させるのに、恐らくはプラスだと、私は思います。

　自民党、民主党、それぞれにメンツも事情もあると思います。又、遅くても2年後には衆参の選挙があり、それぞれの選挙区に競合する相手がいるわけですから、妥協が容易ではないのは当然でしょう。
しかし、今大連立を組むことで、震災復興を成し遂げ、先送りされてきた日本政治の永年の課題に道筋をつけ、将来の日本政治の向上まで来たせるのであれば、それこそ政治家冥利に尽きるというものではないでしょうか。選挙でのプラスマイナスよりも、国家の将来にプラスの足跡を残すその喜びの方が遙かに勝るのが、政治家であるべきだと、私は思います。
　菅首相を初めとして、「坂本龍馬」を理想とする政治家は多数います。私自身がその役割を果たしようもないことは極めて残念なのですが、ここは民主・自民を問わず多数の平成の坂本龍馬に出現していただいて、是非ともこのピンチをチャンスに代えて、後世において、「東日本大震災は大変な悲劇ではあったが、これを契機に日本は多くの問題を解決し、明治維新、敗戦に次ぐ3度目の大発展を遂げた」と言われるようになって欲しいと、心から願います。