ニュースの感想
政府が国会に提出した、「消費税還元セール禁止特別措置法」が話題となっています。
私は、シンプルに反対です。理由は「効果が薄く、無用である割に、現場を混乱させ、公務員の仕事を増やすだけだから。」です。
この法案が通過しようがしまいが、実際のところ大手は、消費税上げによる消費の低迷に対して、何らかの値下げやポイント付与の手を打つでしょう(それまで否定するなら、もはや資本主義の否定で、「自民党社会主義」でも作るほかなくなります)。
中小も値下げで対抗できるところはするでしょうし、できないならできないなりに、1パックの量を小さくするなり、包装を変えるなり、若しくは、大手にない利便性や品質で対抗するでしょう。
にもかかわらず、大手も中小企業も、それぞれの過程で、いちいち「これは『消費税還元セールにあたるんだろうか』」と悩み、同じような相談でごった返す消費者庁にお伺いを立てなければならなくなります。
この法案が中小・零細企業を保護する効果が、ほぼ皆無であるわりに、現場に大混乱かさもなくば萎縮をもたらすことは、商売の現場に一度でも立ったことがあるものなら(私も意外に「セイジロー肉店」の売り場に立っていたりします)、正直明白です。
にもかかわらず、なぜ自民党はこんな法案をごり押しするのか?勿論一私人である私に真相は知りようもありませんが、長らく党に所属していたものとして、その図式は目に浮かびます。
まず、今回賛成を表明している「日本チェーンストア協会」のような自民党の支持組織である「業界団体」が自民党に、「消費税上げに対して、中小流通業者を守る対策を講じて欲しい」という陳情を上げます。これを受けて自民党は、官僚(今回なら消費者庁でしょう)に、「中小流通業者を守る対策を打て」と丸投げします。官僚は言われたことはやらなければなりませんから、効果があろうがなかろうが、ともかく「消費税還元セールは禁止」という建て前的な法案を作ります。そしてその過程で、「お、これは権限が増えておいしいぞ(官僚にとって、権限や仕事を作ることが、手柄になります)」と思ったことを「許認可権」として法案に突っ込みます(今回も「消費税還元セール」にあたるかどうかは、おそらく消費者庁の許認可事項になり、各小売店はセールのたびに消費者庁にお伺いを立てなければならなくなるでしょう)。そして、最後に、消費者庁のお役人が、大手流通業者や自ら作った「社団法人 消費税還元広告共同公社」に天下ったり、「消費税還元セールコンサルティング」とかと言う会社を作ったりすることになります。
この一連のプロセスに、世間で言われているほどの「利権」や「悪意」はありません。「業界団体」は自分の「要望」を伝えているだけですし、自民党はその要望に応えて官僚に指示しているだけです。官僚もその自民党の指示に従っているだけですし、天下りのお役人すら「民間の要請」に応えているにすぎません。しかしその小さな「要望」が結果として無用の規制となり、積もり積もって社会をがんじがらめにし、新たな企業の新規参入を阻んで、日本の活力を奪っています。
現在の日本の低迷に、4年間政権の座にいた民主党に幾ばくかの責任があったことは事実でしょうが、本当のところ、戦後60年間つづいた「国民の一部である業界団体の要請には細々と答えながら、しかし国全体の利益は置き去りにする」自民党政治のなかで積み上がった、一つ一つは小さいけれど、しかし全体としては極めて膨大かつ煩雑で高コストな「規制と利権の束」の方が、主要な原因であったであろうことを、私たちは改めて直視すべきだと思います。
「民主党政権の失態」からは順調に回復し高支持率を誇っている安倍政権ですが、この「積もり積もった規制と利権の束」を整理することなく、かつての自民党政治に戻るなら、日本経済もまた、民主党政権発足前の長期低迷時代に逆戻りするだけでしょう。
安倍政権には再考を促すとともに、「国民の一部である業界団体の要請には細々と答えながら、しかし国全体の利益は置き去りにする」旧来の自民党政治から脱却し、「積もり積もった規制と利権の束」を時代に即して適切に整理して、企業や個人が自由にその実力を競い合える活力ある経済社会を日本に再築する為に、日本維新の会も、そして私も、全力で頑張りたいと思います。
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