安倍総理や高市自民党政調会長が「第2次世界大戦は侵略戦争ではなかった」と発言され、物議を醸しています。安倍総理はその理由を、「『侵略』という言葉は学問的に定義されていない。」からだとされ、「米国が誤解しているなら誤解を解きたい。」とおっしゃられています。
失礼を承知で言いますが、私はそれ自体、極めて的外れであると思います。
確かに、当時は列強の植民地分割の時代でした。既に欧米列強の植民地分割がほぼ終焉を迎えたころに、遅れてその中に入ろうとした日本が、「招かれざる新参者」としてはじき出され、制裁を科されたのち、にっちもさっちもいかなくなって戦争に突っ込んだというのが、歴史的事実なのはその通りでしょう。
しかし、そんなことは、アメリカ政府は、高市自民党政調会長や安倍総理に言われるまでもなく、とっくにわかっていて、確信犯的にそれを「侵略」と呼んでいるのだと、私は思います。国際社会は、裁く者のいないところです。先に勝ったものがルールを設定し、善と悪を規定します。アメリカは、現在の国際社会の勝者として、第二次世界大戦を「日本の侵略戦争」と規定しているのです。
それに「それは学問的真実でない。」などと大上段から述べ立てるのは、みんなが楽しくクリスマスを祝っている最中に、サンタクロースが現実にはありえないことを論証して悦に入る様なものだと、私は思います。
そんな理由で非難されるのは理不尽だと、思われる方もおられるかもしれません。しかし、一歩目を転じてみれば、今私たち自身が「先に勝った者がルールを規定する」と言う国際社会の現実にのっとって、北朝鮮を非難していることに、気づかれるのではないでしょうか。
核武装は、北朝鮮がそれを目指すはるか以前に、米ソ英仏によって「核拡散防止条約」という、「先に勝った者がルールを設定する」以外の何物でもない体制が構築され、そこに後から参入しようとする「招かれざる新参者」は、国際秩序をみだす外れ者として徹底的に排除され、制裁を科され、国家の存続すら脅かされます。「核武装」を「植民地分割」と置き換えれば、現在の北朝鮮の状況は、第2次世界大戦当時の日本の状況とそっくりだと言えます。
「先に勝った者がルールを設定する」国際社会の現実にのっとって北朝鮮に制裁を課し、自らの安全を確保しようとしている日本が、第2次世界大戦についてのみ「学問的真実」を求めるのは、ご都合主義というものでしょう。
すでに何度も書いていますが、国際社会は、ユートピアとは程遠い、力と既得権が幅を利かす場所です。「憲法9条の平和主義」一本でやっていけると思うのが非現実的であるのは間違いありませんが、今の自民党のように、周りの空気も後先も考えず、「サンタクロースは嘘だ!」と叫ぶのもまた、極めて非現実的行為です。
日本の誇りと、国際的地位を高めるのは、中二病的な勇ましい言辞ではなく、日本の国力を現実に高める、地道で息の長い努力以外にないと、私は思います。政権を、すなわち日本という国家を担う自民党には、是非中二病を脱して、「成熟した大人の技量」で、国際社会を渡っていただきたいと思います。
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