私が麻生副総理の「ナチス発言」をブログで取り上げて以来、様々なコメントをいただいています。それぞれ傾聴させていただきますが、同時に私は、「議論がかみ合っていない。」と感じています。そしてその最大の原因は、「真意を理解する国語力」や「マスコミの質・善意・悪意」にあるのではなく、「ナチスというものに対する認識の差」にあると思っています。
私は基本的には、「麻生副総理の真意は、ブラックジョークである。」という説に賛成です。しかしそれは私がわずかとはいえ直接麻生副総理を知っているからで、知らない人があのコメントを読み/聞いた場合、「ナチスを参考に、こっそり憲法を改正しようといっている。」ととるのが普通だと思いますし、マスコミがわざわざわかりづらい発言者の真意を推し量って伝える義務はないものと思います。しかし、そこは実はまったく本質的な問題ではないと、私は思っています。たとえブラックジョークが真意で、それが100%伝わっていたとしても、それは「絶対に言ってはいけない冗談。」だからです。
誤解を恐れずに書きますが、日本においてナチスのイメージは、欧米におけるほど悪くはありません。それは別段日本人が差別主義だからでも軍国主義だからでもなんでもなく、日本においては、90%位の割合で「ナチス=ドイツ軍」のイメージだからだと私は思います。ナチスがどうあれ、第2次世界大戦当時のドイツ軍は、世界最先端の科学力を駆使し、一致乱れぬ組織力を有する、精鋭無比の軍隊だったと考えられています。そこにはさらに、「砂漠の狐 ロンメル将軍」のような、孤高のイメージすら重なります。
むろんヒトラーの号令一下のドイツ軍の軍事行動で多くの犠牲者が出たのは事実ですが、それはあくまで「軍隊」「戦争」という非日常の場ですし、それを言うならアメリカ軍も同じようにルーズベルトの号令一下戦闘行為を行い、それこそ東京大空襲やら原爆投下やらで大量の犠牲者を出しました。当時ドイツは日本の同盟国だったのですから、我々日本人が「ドイツ軍ばかりを悪者にするのもどうかな。」と思ってしまうのはむしろ自然でしょう。
また、ナチスのユダヤ人迫害についても、聞いてはいるけれど実際にそれを見た日本人はほとんどいません。これも誤解を恐れずに書くなら、「どこか遠くの国の、『ユダヤ人』という特殊な人が、迫害されたらしい。可哀想だけど、よくわからない。」というのが、大抵の日本人の感覚なのではないでしょうか。
しかし、欧米では、事情はまったく異なります。ナチスは、「軍隊」である以上に、一時はヨーロッパの過半を制した「為政者」でした。ナチスは、「戦争」「軍隊」という特殊な状況の存在ではなく、一時期とはいえヨーロッパの「日常」だったのです。
また「ユダヤ人」は日本に住んでいると「特殊な人」と見えるかもしれませんが、様々な国籍・人種の人が入り混じって暮らしている欧米では、単なる「普通の隣人」です。ヒトラー張りにユダヤ人が嫌いな人ももちろんいたでしょうが、多くの人にとってユダヤ人は、「隣人」であり「同僚」であり「友人」であり、時には「親戚」や「家族」や「恋人」だったでしょう。その「隣人」「同僚」「友人」「親戚」「家族」「恋人」が、「日常」の場から、ただ単に「人種」という本人には全く罪のないことで大量に連れ去られ、殺戮されたのです。そして多くの人が、眼前で展開されるその悲劇を、なすすべもなく見ていたのです。それは実際に被害にあった人、被害者の関係者にとって思い出したくもなく、二度と繰り返してはならない悲劇であるのはもちろんですが、それを免れた人にとっても「とんでもない蛮行を看過し、とんでもない蛮行に加担してしまった。」苦い改悟を突きつけるものでしょう。「ナチス」は欧米にとって、二度と絶対に繰り返してはならない悲劇であると同時に、他国から絶対に土足で踏み込んでほしくない、悔恨の記憶なのだと、私は理解しています。
麻生氏を知らない欧米の人たちが、今回の発言を伝え聞いたとき、氏の発言の真意が伝わるとは私にはまったく思えません。しかし逆に、氏が「ナチスを賛美している。」「ナチスの手法をまねようとしている。」と本気で信じる人も、そう多くはないだろうと思います。ただ少なからぬ人が、「他国の事情を知りもせず、デリカシーのかけらもない発言をする、無神経で無礼な奴だ。」とは、思うでしょう。そして氏の立場は、この印象を「日本人」「日本」全体の印象にするのに、十分なものです。そういう負の印象をもたれることは、これから日本が、従軍慰安婦問題で、尖閣問題で、集団的自衛権の問題で、TPPの舞台で、自らの主張を他国に認めてもらうのに、マイナスにしかなりません。だからこそ私は、氏の真意がどうであれ、国家のために、発言を撤回し(これはすでになされていますが)、謝罪し、潔く身を引くべきだと、主張しているのです。
私のこのブログでの主張が、氏の耳に届くことはもちろんないでしょう。ですが私は私の立場で、「他国には他国の事情や基準があり、自国の事情や基準だけをもとにしてものを考え、言葉を発することが時として非常に国益を損なうことを、国家の責任ある立場の方は是非認識していただきたい。」と、重ねて申し上げたいと思います。
「李下に冠を正さず」
改めて説明する必要もありませんが、他人から誤解を招くような行動あるいは言動をしないようにと戒めたことわざです。
私たち一般人のみならず、政治家ならなお一層のこと強い自覚を持って発言や行動に気をつけていただきたい所ですが、麻生さんはかつてもアルツハイマー発言など放言・失言癖がありますので、もうこれは一生治らないだろうなと思います。
参院選大勝による慢心が出たと思われても仕方ありませんね。
>他国には他国の事情や基準があり、自国の事情や基準だけをもとにしてものを考え、言葉を発することが時として非常に国益を損なうことを
この部分は同意しますがわざわざマスコミや野党がそれを先導する必要があるのかって事です。
しかも一部分のみ抜き出してわざわざ曲解しやすいように。
いつの間にかわたしゃ、自民党支持者ですか。世の中の流れは速い・・・速すぎる。
とりあえず私と米山さんの意見が交わることは永久になさそうです
ナンバー2の麻生さん、発言を撤回しても、波紋は広がってますからね。
『悪き例の手口を学ぶ』っておかしな言い訳です。
だいたい、この方、漢字は読み間違える、アルツハイマー発言、終末医療暴言
『人の良いおじさんのブラックジョークだった』では済まされないと思います。ナンバー2に任命したトップに責任があります。
日本国民として、恥ずかしいです。
米山さんに賛同します。
私は麻生副総理は好きですし、今回の騒動も揚げ足を取られた感があると思います。
しかし一方で、海外の閣僚が、例えば
「原子力は国際社会全体で厳重に管理してきたが、
日本は原発事故の際に汚染水を海洋投棄によって処理を達成するに至った。」
という発言をした場合、なんだか居心地が悪いです。
「国際責任法上は緊急避難に該当し違法性は阻却されるが」
「日本の事例を教訓に、我が国では立地や管理システムを精査して
有事の際にもより国際法を遵守する原発にしよう」
とフォローが続き、文章全体の意図が うなづけるものだったとしても、
最初の1文で苦い気持ちになるのと近いでしょうか。
(違ったらすみません…)
結局のところ、歴史を持ち出すときは当事者の国民感情に
一定の配慮が必要ということですね。
マスコミの報道姿勢については、
1,意識していない人
2,変わるべきと考え、怒る人
3,変わるべきと考えるが、もはや改善を期待していない人
がいると思います。
2と3の人は「時に幼稚な場合がある」という認識は共有していますが、
メディアに向かって怒り続けるか、自衛のために行動を慎むかという次の行動は
後者の方がまだ実のあるものだと考え、この点でも米山さんの態度に同感です。
もちろん一番いいのはメディアの報道の改善なんですが…!
長々と失礼しました。
島国のせいなのでしょうか…日本の政治家は、グローバルな視点&協調が欠けているように思います。
マスコミの性格も熟知している筈です。
自らの発言が、国際社会に向けてなされている、ということを過剰なくらいに意識すべき時期だと思います。
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