最高裁判所が、婚外子に対する相続分を嫡出子の1/2と定めた民法900条4項を違憲と判断し、これに対応して当該条項を改正しようとする政府の方針に、自民党の保守派が、「家族制度を破壊する」と猛反対しています。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131105-00000010-mai-pol

 結婚していない私が言うのも相当どうかと思われますが(笑)、正直その主張は、滑稽以外の何物でもありません。

 私はこれで真剣に結婚したいと思っていて、素敵な女性がいらっしゃれば、是非素敵なレストランで素敵な食事をしながら「二人で素敵な家庭を築きましょう!」と言いたいと思っているのですが、その際最も考えなければならないと思うのは、「この人を一生愛せるかどうか、一生幸せにできるかどうか。」です。
 要するにあまたの友人達の結婚式で聞いた神父さん(保守派の方々には恐縮ですが)の台詞の通り

「健やかなる時も病める時も、喜びの時も悲しみの時も、富める時も貧しい時も、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くす」

ことが出来るかどうかが最も重要なのであって、そこさえクリアしてしまえば、後はそれこそ「二人で真心を尽くしあえ」ば、選挙には当選しないかもしれませんが、世の中の大抵の問題は乗り越えられるはずだ(きっと、多分-笑)と思います。

 私が、夜景の綺麗なレストランで相手の女性の瞳を見つめながら、その耳元で

「結婚しないと、二人の間に生まれた子供の相続分が1/2になってしまうんです。だから僕と結婚してくれませんか。」

と囁くことは、まず絶対にありませんが(笑)、仮にそう言った場合、この素晴らしく洗練されたプロポーズをOKしてくれる奇特な女性が、日本の家族制度を崩壊させるほどたくさんいるとは、私には到底思えません(そのような女性にとっては、確かに今回の民法改正で嫡出子と婚外子の相続取り分に違いがなくなれば、結婚する理由はなくなるわけです。)。

 また実際問題、たとえば嫡出子1人、婚外子1人を持つ夫が死亡した場合、その相続分全体を12とすると、改正前なら妻6、嫡出子4、婚外子2 ですが、改正すると、妻6(変わらず)、嫡出子3(-1)、婚外子3(+1)となるにすぎません。またこの後、妻が死んだ場合、その遺産は全額嫡出子のみに相続されます(結局結婚していない恋人のもとには、遺産は一銭も行きません。)。したがってこの民法改正での嫡出子と婚外子の遺産の増減は遺産全体の±1/12にすぎないのです。
 そもそも日本の婚外子の割合は2%程度にすぎません。そしてこの±1/12が重要になるほど遺産がある家庭(相続税の課税対象となる家庭)は、5%程度です。要するにこの話は、せいぜい日本の家庭の1000分の1程度にかかわる話でしかなく、日本の家族制度全体に影響を及ぼすものでは全くないのです。

 それなのにこんな法律の一つや二つを変えたからと言って日本の家族制度が崩壊すると大騒ぎして猛反対される先生には、皮肉を込めて「先生ご自身が、『我が家の遺産を僕たちの子供に継がせようよ?』という素敵なプロポーズされたからじゃないですか?」若しくは、「大きなお屋敷にお住まいで、地元の名士の立場を世襲されて、ご立派なマンションに恋人と婚外子までいらっしゃって、先生ご自身が愛よりも何よりも遺産の維持こそが家族にとって最も大事だと思うから、他の人もみんなそうだと思っちゃうんじゃないですか?」と、質問してみたくなります。

 保守派の議員の皆さんが、「家族制度の維持に最も大事なのは遺産ではなく愛である。」という当たり前のことに、気づかれることを祈ります。


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コメント

お久しぶりです

日本が1夫1妻制だから起こる事象とも思います
テレビで複数人の女性と過ごしている男性が以前出演していました
かなりの収入だから出来る事でしょうけど、その様に女性間で上手く行くならば、それぞれに子供が居てもおかしくないです

遺産変更ははその様な子供達の事を考えての事だと思います
養育費だって、婚外でも払うという事で、同じ事ですよね
養育費だしている時に亡くなったら、その後の子供達の生活はどうなるのか
子供なのに、婚外子だから半減なんて、可哀想すぎます
亡くなった時でも婚外子でも同様に責任を(愛を与える?)持つべきです

そして、騒ぐような人は、既に居るから焦っているのでしょう
不倫の子なら、尚更やばいからね
今まで認知しなくてもとなっていたが、同じように貰えるなら、認知しろってね
遊びの人は避妊意識が高まるかもね

女性は婚姻していないと相続無いから焦るでしょう
何とか状況的に婚姻と同じと判決出れば何とかでしょうけどね
でも、女性の方が収入多ければ、状況逆転でしょうけどね
本人はどうでも良く、子供だけを気にした場合、改正は嬉しいですよね

ご自身の意見はどうでしょうか

  • Posted by ごう
  • at 2013/11/06 22:14:28

婚外子の問題は子供の問題ではなく、大人の倫理の問題です。生まれてくる子供は財産がほしくて生まれてくるのではありません。男と女の倫理の問題です。なぜ、その人の子供がほしければ、離婚、結婚をして正しいルートをたどらないのでしょうか?他人の夫や、妻と本能の赴くままSEXして出来た子供がかわいそうです。自民党の保守派を悪く言うのではなく、貴殿も結婚をして子供を作ってみましょう。そうすれば、自分の子供の可愛さで婚外子を作ろうとは思わないはずです。

  • Posted by 南魚沼産だめひかり
  • at 2013/11/07 07:35:21

南魚沼のだめひかりさん、コメントありがとうございます。

私は是非結婚して子供を作ろうと思っているのですが、相手に断られたり、選挙に落ちたり、相手に断られたりと、なかなかこれで辛い人生を送っています。人生は思うに任せません(笑)。

婚外子の問題も、同じではないでしょうか。中には明らかに感心しない人もいるのでしょうが、「それはしかたないよな。」と言う方もおられるでしょう。人生、思うに任せませんから。
そして当たり前ですが、どのような状況で生まれてこようが、その子供には全く責任はありません。嫡出子は嫡出子だから偉いわけでも、偉くないわけでもありませんし、それは婚外子でも全く同じです。それこそ彼らにとっても出生は選べない、人生は思うに任せないのです。
 父の遺産の半分を母に残した後、残りの半分を、同じ父の血を分けた嫡出子と婚外子の間で差別的に分配する合理的理由は、何処にあるのでしょうか? 

繰り返し、人生は思うに任せません。努力して報われる人も、報われない人も、努力せず報われる人も、報われない人もいます。それは運命の神様の決めることですから、人間である私たちが文句を言っても始まりません。でもだからこそ、人間が自分たちで決められるルールについては、出来る限り人間同士を平等に取り扱うというのが、法の精神であると私は思います。

家制度、家族制度ももちろん大事ですが、世の中には、期せずして、幸せな家庭、幸せな家族に恵まれずに生まれてくる人もいます。そういった人たちにとって「法の下の平等」は、唯一の希望と言っていいものかもしれません。私たちの社会が依って立つ根本的な価値観としての、「法の下の平等」の値打ちを、今一度再考してみる必要があるのではないでしょうか。

ごうさん、コメントありがとうございます。婚外子を平等に扱うべきと言う意見は、その通りだと思います。

また、婚外子の持ち分を嫡出子と同じにすることが、むしろ意外に婚外子の発生を予防する可能性も、確かにあると思います。

上述した通り、「婚外子」、俗な言い方で言うと「隠し子」を持つ人はそう多くはありませんが、良い悪いはともかくとして、家庭外に恋人がいる方は、一定数います。そういう方は、たいていの場合自らの家庭を壊したいとは思っておらず、認知を迫られたり、「婚外子」が自らの家庭の波乱要因になると思ったら作らない、とも思われるからです。

結局、婚外子の持ち分を嫡出子と同じにすることが、日本の家族制度に与える影響は上述の通り極めて軽微でしょうし、仮にあるとしても、どっちの方向に振れるかはっきりしないものです。
一方で、「法の下の平等」と言うのは、価値・理念の問題であって、「日本と言う国家は、どのように生まれた人にも、同じ扱い、同じチャンスを与えてくれるのだ」と示せること、そういう原則を社会として守り続けることの価値は、私は非常に大きいと思います。

難しい問題ではありますが、「法の下の平等」という「理念の重み」を日本社会が問い直す、良い機会ではないかと、私は思います。

  • Posted by 米山隆一
  • at 2013/11/07 18:12:54

こんばんは、お邪魔します。
いつもその時々の話題での論評、興味深く拝読しています。

婚外子民法改正について、いまだに個人的なスタンスを決めかねているのですが、
確かに法の改正は出生における平等を実現しつつ
不倫の抑止力になる可能性はありますね。


一方で、先日反対派の友人より以下のような意見を聞きました。

A(女)==B(男)…C(女)==D(男)
    │    │────┘
    x    y 養子

AB、CDは婚姻関係、BCは内縁関係であり、子x、y(BCの実子・CDの普通養子)がいる場合において、B、Dの死亡によって遺産が生じたとき
・AはBの遺産の1/2、CはDの遺産の1/2
とそれぞれの家庭の妻の取り分ですが、子供の相続については
・xはBの遺産の1/4
・yはBの遺産の1/4+Dの遺産の1/2
となり、yのみ2つの家庭から相続できるのは嫡出子への逆差別ではないか?

…とのことでした(ジェノグラムは適当です)。
似たような意見が先日TV番組で某大学の教授によって主張されていましたが、
これについてどうお考えでしょうか?
もしもお時間があったらお聞かせいただけると嬉しいです。

  • Posted by 774
  • at 2013/11/08 01:13:20

774さん、コメントありがとうございます。

これは「このシチュエーションではyが有利になる。」と言うだけで、別段法律上の問題ではないと思います。

何故なら、嫡出子xは、AとBの子供のままで、例えばEの養子となることが出来ます。この場合、xは、A、B、Eから、相続できます。つまり法律上の立場として、嫡出子xの立場は、婚外子yと何ら変わることはないわけです。

また、実際の問題としても、「自分の結婚相手が別の相手と作った婚外子を、自分の養子にする。」と言うシチュエーションと、「普通の家庭に生まれた嫡出子が、家督相続等の理由で、祖父母その他の親族の養子に入る。」と言うシチュエーションのどっちが多いかと言うと、後者の方をよく聞く気がします。

と言うことで、この例は極特殊な場合の一例にすぎず、「法の下の平等」をひっくり返すような意味のあるものではないと、私は思います。

  • Posted by 米山隆一
  • at 2013/11/08 17:55:47

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