美味しんぼの「鼻血」の記述が「科学的でない」「風評被害を生む」「福島の人を傷つける」と言う批判を浴びています。
 私自身もこの記述は非科学的で感心しないと思います(http://www.election.ne.jp/10840/97242.html)。

 しかし美味しんぼを批判するのであれば、それと同時に、

「では、今行っている福島復興は、科学的と言えますか?福島の人を傷つけていませんか?風評被害を生んでいませんか?」

と言う問いを、私たちは問いなおすべきではないかと思います。

 鼻血の記載ばかりが強調されていますが、「美味しんぼ」には、「除染はやってもやってもきりがなく、無駄だ。」との記載があります。
 私は、これは科学的に正しいと思います。
 最近やっと多くの識者が「年間20mSV以下の低線量被曝は、現在分かっている限り、健康にほとんど影響しない。」と言う科学的事実を述べ、多くの人がそれを受けいれられる状態になっています(衆議院選挙、参議院選挙を通じてこれを言って袋叩きにあった私としては、少々涙目ではありますが-笑)。
 そうであるなら、何故、巨額の国費を突っ込んで、「年間線量1mSv以下への除染」と言う不可思議な作業をする必要があるのでしょうか?ましてやこれは美味しんぼで指摘されている通り、一度やっても風が吹いたら元に戻る、まさに賽の河原で石を積むような作業です。
 福島県知事や自民党の議員の方々が美味しんぼの非科学性を批判するなら、同時に、自らが巨額の国費を投入して実行している除染事業の非科学性を批判し、直ちに中止するのが筋であろうと思います。

 また、今私は「『現在わかっている限り』健康に『ほとんど』影響しない。」と書きました。科学的態度を貫くなら、「10mSv以下の低線量長期被曝」が長期的に人体にどれくらいの影響を及ぼすのかという問いに対しては、「分かりません。」としか答えようがないからです。
 これに対する「低線量長期被曝による健康被害はあるはずがない!あるという人は、不安をあおって風評被害を生む悪い人だ!」と言う批判は、美味しんぼの鼻血の記述同じように非科学的で、放射能に不安を感じている人を傷つけるのではないでしょうか。そして、この主張が陰に陽に公的機関によってなされていることが、「情報が隠蔽・捏造されているに違いない。本当はもっと危険に違いない。」と言う風評被害を生む一因となっているとは言えないでしょうか。

 因みに「低線量長期被曝の健康への影響は分からない」とはいえ、皆目見当がつかないわけではありません。広島や長崎の原爆症の研究、更にはチェルノブイリの研究から、「低線量長期被曝は、長期的にある種のがんの発生率を数倍程度にする可能性がある。しかしその程度癌の発生率を上げるものは、煙草や生活習慣を筆頭に多々ある。逆に言えば、福島全域で適切な健康診断を行い早期発見、早期治療に努めれば、おそらくは福島での癌による死亡率をむしろ下げることが可能な程度であると思われる。」位の推定は、かなりの確度でできます。
 つまり低線量長期被曝に対する科学的に最も有効な対策は、除染でも避難でもなく、大規模かつ網羅的な健康診断による早期発見と早期治療であり、それによってこそ、放射能に不安を感じる方々の不安を解消し、「なんだかわからないが放射能が怖い」と言う風評被害を無くし、万が一放射能の影響で健康を害した人を、現実に救済することができるのだと、私は思います(「対策」の選択に私の価値判断が入り込んでいることは否定しませんが)。

 以上から私は、美味しんぼを非科学的だと批判している人にこそ、以下のように提案したいと思います。

 除染作業は、美味しんぼの「鼻血」の記述以上に非科学的で、美味しんぼが生じたかも知れない風評被害以上のコストを、日本に負わせています。科学的であろうとするなら、即刻停止するべきです。
 低線量長期被曝による影響について美味しんぼに書かれていることは、確かに非科学的です。しかし同時に、長期にわたって影響が全くないということも、極めて非科学的なことです。低線量長期被曝の全体像を知らないという事実を認めたうえで、何が起こるのかを科学的に把握し、それに迅速に対処する体制を作ることこそが、科学的態度と言うものです。
 除染に振り向けられている予算で、福島全域(比較対象の為、あえて線量的に問題のない地域も入れるべきです)の住民を対象として、網羅的な健康診断をしたうえで対象となる癌を発症した人は無条件でその治療費を補助する(どの癌が対象となるかは、長期健康診断プログラムの結果も用いて決定すべきでしょう)長期健康診断・治療支援策を策定・実行し、その情報を公開すべきです。
 それはもしかしたら、健康に全く影響はないという事実を確認するだけの結果に終わるかもしれません。しかしそれは、万が一次の原発事故が起こった時に生きますし、何より、放射能に不安を感じる人と、放射能のリスクを許容すべきと考える人が、同じ土俵に立って議論をし、共通の未来を創る礎となることができるのです。


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