美味しんぼ騒ぎ、大飯原発再稼働差し止めと、日本で原発関係の話題が続いていることとちょうど前後して、カルフォルニア州が、福島原発から太平洋岸に流れ着いた放射性物質の影響についてのレポートを出しました(福島原発事故による放射性物質の流出は、全然「完全にブロック」されておらず、太平洋全域に広がり、アメリカ西岸に届いています。)。
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非常に科学的かつ客観的なレポートで、特にこの中の“Risks & Health Implications of Fukushima Radiation”と言う節の、健康被害についての解説は、我々が福島の放射能についてどう考えるべきかについての一つの参考になると思いますので、翻訳をさせて頂きました(ざっとしたものですので、不正確なのは許してください。)。興味のある方は是非、(できれば全文を)読んでみてください。
私は、美味しんぼの記述の非科学性、大飯原発差し止め判決の情緒性を否定するつもりは全くありませんが、一方で、政府がまるで一昔前の「安全神話」に戻ったかのように、「福島に健康被害はない。」「原発は安全である。」を、さしたる科学的根拠がないまま繰り返す姿にも、違和感を感じます。
遥か海を隔てて、ほんのわずかな放射能にさらされているに過ぎない人々に、カルフォルニア州政府が出した警告の科学的正確さ、リスクをリスクとして、安全を安全として伝える誠実さを、当事者であり、多くの国民を放射能にさらしている日本政府は、見習うべきでしょう。
繰り返し、福島の放射能は、おそれ過ぎず、過小評価せず、誤魔化さず、真摯に科学的調査と対策を行うべきものと、思います。
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福島の放射能のリスクと、健康について考えられること
福島の事故が起こって数週間以内に、西海岸の人々が福島から流出した放射線にさらされたことは、入手可能なデータから明らかであり、低線量の被曝は現在に至るまで続いている。州と連邦の環境衛生、公衆衛生の機関(EPA, RadNet, Oregon Health Authority 等)は、被曝レベルは“安全”で“有害でなく”、公衆に対する“リスクはない”ことを繰り返し保証し、しばしば福島による被曝が規制レベルより低いことにも言及している。基本的にはこれらのメッセージは正しいが、これらの保証は、“当面”と言う意味であると読むのが、現実に即しているだろう。すなわち、北アメリカで検知された福島由来の放射線レベルが公衆全体に有意な害を生じるとは考えづらいし、福島由来の放射線によるリスクは、公衆衛生を脅かす他の要素(大気汚染、喫煙、肥満など)と比較すれば小さいものである。しかしこの控えめな安全の保証は、個々人に対する放射線の悪影響を除外するものではなく、低線量被曝に対する科学的な知見の不確かさを反映しているものと考えるべきである。個々人に対する被曝のリスクは、被曝の強さと期間、被曝した核種等々のさまざまな因子に影響される。何より、低線量長期被曝の健康に対する影響は、今まさに、科学的議論がなされている問題である。高線量被曝から低線量被曝の影響を推定する、予防を重視する立場からは、どんなに小さいものでも、放射線に対する被ばく量の増加は、個々人の癌の発生その他の健康被害の可能性を増やすのであり、避けられない自然放射線でさえも、健康被害を生じていると考えられている。一方で、100mSv以下の被曝においては、被曝量と健康被害の関係は確立しておらず、動物実験からは、低線量被曝によるDNA損傷の多くは、身体のDNA修復機構によって修復されていると考えられている。
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