ニュースの感想
最近日本経済にはほんのり薄日が差していて,安倍ノミクス派は意気揚々,麻生財務大臣は,「財政が破綻するなんて言ってるやつは,経済を分かっていない!」と意気軒高です。
そして世にあまたいる「国債なんて心配ない。どんどん刷ろう!」派は,大喜びで,同氏の発言を拡散しています。
「麻生太郎氏による『日本の借金』の解説が超わかりやすい! 経済をわかってない奴が煽っているだけ(http://logmi.jp
さて,これは本当でしょうか?
上述の麻生財務相の「日本財政破たんしない理論」すなわち「国債はいくら積み上がっても大丈夫理論」はおおむね,
①国内の貸し借り(家庭内の貸し借りの様なもの)だから大丈夫
②政府がお金を刷ればいいから大丈夫
③今現在、金利が低いから大丈夫
と言う3つを論拠にしています。これが本当かどうか、麻生財務相が国を「家庭」の収支に例えたことを使って、「米山家」の収支で、日本の財政を考えてみたいと思います。
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さて、米山家では、一家の大黒柱たるべき太郎さんが、選挙に落ちて無職になってしまいました(痛いですね-苦笑)。ところが何を間違ったか、太郎さんにはとても働き者の美容師「良子さん」と言う奥さんがいます。現在良子さんの月収は30万円、太郎さんの月収は0円ですが、二人の間では、「生活費は折半」という約束がありました。二人の生活費は20万円程です。米山家の収支は、どうなるでしょうか?
-まず皆さん、「おや?」っと思いましたか?よく財政赤字は、「40万円の収入の人が100万円で暮らしているようなもの。」と言いますが、その例えは、日本の経常収支が黒字であることを前提とするとあまり正しくはありません。あくまで国全体としては黒字だからです。ではこの例で、どうなるか続けていきましょう。
さて、良子さんはよくできる奥さんですが、それゆえに約束違反は嫌いです。あくまで生活費は折半と言うことで、家計の負担は良子さんが10万円、太郎さんも10万円となりました。勿論月収0円の太郎さんに、10万円の生活費は払えません。そこで太郎さんは、毎月毎月「10万円」の借用証書を良子さんに出し、良子さんはこれを、自分の稼ぎ30万円から生活費を払った後に残る月10万円の貯金とともに、「良子貯金箱」にどんどんため込むという日々が続きました。
ある日、仕事でくたくたになって帰宅した良子さんは、ふと「良子貯金箱」を開けて残高を数えてみました。そこには、良子さんが貯金した現金100万円と、太郎さんからの借用書100万円がありました。この時、くたくたに疲れた良子さんの頭の中で、何かが「ぶつん!」と音を立てて切れました。
-おそらく日本国の国債は、こういう状況です。さて、「家庭内の借金だから大丈夫」という麻生理論は、良子さんに通用するでしょうか?
良子さんは太郎さんに言いました。「なによ、あたしがこんなに頑張ってるのに、あなたは何にもしないでいるの?いつか返すいつ返すって、いつ返すのよ。あなたの借用書100万円が現金だったら、あたしは明日にも自分の美容室を構えることができるのよ。こんな借金証書、何の役にも立たないじゃないの!もうやってられないわ。今すぐ100万円返して!さもなくば離婚よ!」
太郎さんは良子さんに離婚されたら生きていけません。困った末に言いました。「分かった、きちんと返すよ。それにこれからは金利を月1%払うよ。それなら君だってお金がたまるからいいだろう?僕も今まで金利がゼロだから、何時でもいいと思っていたんだ。100万円の1%は1万円、働いて返せない額じゃない。そうすれば僕だってやる気になって働きに出るよ。これから頑張るから許してよ。」
-さて、皆さん、ここで
太郎さん―政府
良子さん―国債の買い手(資金余剰がある民間)
借用書―国債
と置き換えていただけると、ほぼ現在の日本財政の状況として正しくなるかと思います。麻生氏の「家庭内の貸し借りだから大丈夫理論」は、完全に嘘でもないのですが完全に本当ではなく(世の中の怪しい理論と言うのはだいたいそういうものです)、この「米山家の危うい現状」がこれからも続けられるかどうかは、ひとえに良子さん次第-良子さんが太郎さんにお金を貸し続けてくれるのかどうかと、もう一つ、良子さんが月30万円を稼ぎ続けられるかどうかにかかっています。
つまり、現在国債を買ってくれている銀行(銀行にお金を預けている民間)が、良子さんのように、ある日突然、「これだけ持っているんだから、国債はもういらない」と思ったら、その瞬間国債が売れなくなって国債が暴落、金利が高騰してしまいますし、それ以前に、そもそも民間に国債を買う余剰資金がなくなれば、勿論国債は買ってもらえません。現在それらが起こらないのは、民間の余剰資金と投資先不足の危ういバランスの上に立っているにすぎません。麻生氏の「家庭内の貸し借りだから大丈夫理論」はリスクを無視して現状が続くと考える、根拠なき楽観論といえるわけです。
因みによく政府の債務残高は、「国民一人当たり800万円の借金」と言われ、これが「財政破綻派」の論拠とされると同時に、「財政安泰派」から「家庭内借金理論」で反論されます。確かに上記例えから見ても「国民一人当たり800万円の借金」はあまり正しい例えではなく、「所得の少ない国民50%(かどうかは分かりませんが)が、所得の多い国民50%から、一人当たり1600万円の借金をしている状態」と言うのが正確だろうと思います。
つまりこの状況を、「いくらなんでも貸し続けてくれない時が来るだろう。」と思うのが「財政破綻派」、「平気平気、国内なんだから、何時までも貸してくれるよ。」と思うのが麻生氏的「家庭内借金理論に基づく財政安泰派」と言えます。
そして麻生氏の自信満々さとは裏腹に、国債が売れ続けるかどうか(暴落しないかどうか)は基本的には国債の需要と供給で決まるのであって、「家庭内―国内」で購入されているかどうかは、(②や③の手を取りうるのは別論として)考えるべき「需要」が「国内の需要」から「海外を含めた需要」に変わるだけで本質的にはほとんど何の関係もない―国内で売っているとしても、暴落するときは暴落する―というのが、常識的経済学の帰結です。
さて、そうだとしても、麻生理論にはまだ
②政府がお金を刷ればいいから大丈夫
③今現在、金利が低いから大丈夫
と言う論拠があります。これは本当でしょうか?
大分長くなりましたので、②に対する解説は、稿を分けて、「財政は破綻しないのか② ~もしも日本国が米山家だったら~」でさせて頂きます。なんと次回は、さらに苦境に陥った太郎さんを救うために、太郎さんの母ケイコさんが、家庭内通貨「Yon」を作り出します。お楽しみに(笑)。
大変わかりやすい説明ですね。
数字のマジックって言いますか言い訳にしか聞こえません。
早急に単年度での黒字を続けていかないと借金がどんどん増えて、未来の人達が困るだけだ。
橋下さんが長岡で演説したように「あれもやります。これもやりますとは言えません。」ってこれが正論だと思います。
そして、今の日本は怠け者に甘く、働き者や正直者が損をする。
行政サービスの切り捨ても必要だと思います。
って言うか、持続できないサービスは辞めるべきだ。米百俵の精神で大切な税金を未来のために使うべきだと思う。
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