米山隆一の10年先のために

　13日に発表された4～6月期のGDP速報値が、前期比でマイナス1.7%、年率換算で6.8%の大幅減となったことが、大きく報じられています。因みに安倍ノミクスの効果！と大きく報じられた1～3月期は、前期比1.5%、年率換算5.9%のプラスだったので、結局1～6月の上半期のGDPを合算するとほとんどプラスマイナスゼロで、安倍ノミクスの効果と喧伝されたものは、消費税の駆け込み需要にすぎなかったということになります。

　そしてこの上半期、結局安倍ノミクスの効果が「ゼロサム（合計ゼロ）」だったということは、私が再三指摘しているより本質的な安倍ノミクスの特徴－国内の資産非保有者から資産保有者に所得を移転しているだけで、何ら本質的な成長に寄与するものではないということ－を、端的に浮かび上がらせます。
　皆さんこの半年間、「安倍ノミクスによって大企業（と公務員の）給与が上がった。」「高級品が売れるようになった。」「海外旅行者数が過去最多水準となった。」と言う景気のいい話を、そこかしこで耳にしたと思います。実際にこれらは統計上も確認された事実です。しかし、一方で、上記のとおり「国全体でのGDPはほとんど変わっていない。」のもまた、統計上確認された事実です。この二つから導き出される結論は、たった一つ、非常に単純で、

　「安倍ノミクスによって恩恵を受けた層（恐らく株高の恩恵を被った資産保有者）は確かに所得が増えて消費を増やしたが、恩恵を受けなかった層で同額だけ所得が減って消費を減らしたため、国全体ではほとんど成長しなかった。」

　と言うことです。

つまり安倍ノミクスの効果は、第1四半期と第2四半期でゼロサム（合計ゼロ）だっただけではなく、恩恵を受けた層と受けなかった層においてもゼロサム（合計ゼロ）に過ぎなかったうえに、もともと資産を保有していない、所得の少ない層の所得をよりへらし、もともと資産を保有している、所得の多い層の所得をより増やして貧富の差を拡大したのだから、実のところ何もしないでいた方がまだましだったということになります。

　安倍総理やその周辺は「消費税増税の影響が終われば再び景気は回復する。」と強気の見方を示していますが、上記のように、物価が上昇し、所得の少ない層の所得が減少して生活実感が悪化している中で、景気が突如V時回復する根拠は、ほぼないように思えます。

　政権獲得後2年弱、金融緩和と公共事業の付け焼刃で見せかけの景気回復を演出できた時期は既に終わり、日本経済の本質的問題点を見出してそれを現実的・抜本的に解決するプランと覚悟があるのか、その真価と実力を問われる時期に来ていると私は思います。
　それが出来なければ安倍ノミクスは、ただ単に、所得の低い人の所得を下げ、所得の高い人の所得を上げるだけで、日本経済全体を成長させることのない無意味な「永遠のゼロサム政策」として、歴史にその名を刻むことになりかねないものと危惧します。