「日本にアイヌ民族はもういない。」とツィッターでつぶやかれた札幌市議が話題になっています。ご本人は、アイヌ民族保護行政の矛盾を指摘したとのことで、更には市役所に中国の国旗が掲揚されていたことや、給食に韓国の食材が使われたことをあげつらうなど、意気軒昂です。

 私は、言葉が悪くて大変恐縮ですが、こういう「小さな正義を振りかざす。」政治の在り方が好きではなく、率直に言ってそういう風潮が蔓延している現状に危惧を覚えます。

 アイヌに対する保護行政の詳細を私は知りませんが、この手の弱者保護政策に、意図はともかく手続的に潜脱の余地があることはままあり、かつ実際にそれを悪用する好ましくない例があることは多々あります。従ってこの市議が指摘したような不正義が実際にあったとしても、特段不思議ではありませんし、それを指摘することが「小さな正義」であることも、間違いないのでしょう。
 しかし、「弱者保護」は別段アイヌだけに向けられたものではありません。自給率14%の国内小麦農家を保護することが食料安全保障に本当につながるのか、北海道に手厚く配分されている公共事業は適正なものだといえるのか、地域保護の名のもとに、それに値しない人達やそれに値しない事業にアイヌ保護行政とは比べ物にならない額が費やされていないのか、この市議が「保護行政の矛盾」を突かれたいのなら、それにふさわしい、より大きな、より組織的な矛盾が、自らの足元に、誰にも触れられることのないまま転がっています。

 もちろん、大きな矛盾があるから、小さな不正義には目をつむれというのは筋違いでしょうし、大きな矛盾に行く前に、まずは取り掛かりやすい小さな不正義をただすのだというのも、それはそれで現実的な姿なのかもしれません。
 しかし、穿ってみるなら、それは、「反対する力の弱い小さな集団に対して、小さな正義を振りかざして手柄をあげ、自らの立場を強くしようとしている」極めて俗な姿にも映ります。

 小さな不正義も、大きな矛盾も、存在するには存在するだけの、理由があります。
 小さな正義を振りかざして小さな不正義を切り捨てる行為は、一方で本来保護を受けるべき人が受けられなくなる危険をはらみます。ただ単に小さな不正義をあげつらうのではなく、それが存在した理由をきちんと考え、必要な人に必要な保護がきちんとなされるように対処してこその政治でしょう。
 勿論大きな矛盾に挑む行為も、恰好はいいですが、代替する制度を構築できずに、何の成果もあげぬまま社会に混乱をもたらすだけの結果に終わる危険をはらみます。大きな矛盾に挑む大きな改革を行おうとするなら、その影響をよく考慮し、多数の利害関係者を粘り強く説得して、多くの人の協力のもと、最後まで、きちんと矛盾を解決していくよう取り組むべきでしょう。

 小さな正義を実現するのも、大きな矛盾を改革するのも、ただ単に相手をあげつらい、恰好よくこぶしを振り上げるだけでは終わらない、大変な仕事です。いずれを行うにせよ、政治に携わる方は、高い志で、襟を正して行ってほしいし、そうできる人になりたいと、私は思います。


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コメント

あなたのお師匠の東京都知事様は、韓国様にはずいぶんお優しいですよね。アレが大きな正義なのか小さな矛盾なのか私には分かりませんが、コメントあります?

  • Posted by 一都民
  • at 2014/08/20 19:11:25

おっしゃりたいことは理解できます。
しかし必ずしも合理的で無いこと、コストに見合わないことでもしなければならない場合があるからこそ、公共事業というものがあると私は理解しています。(当然度合いにもよるのでしょうが)

  • Posted by とおりすがり(元)
  • at 2014/08/21 15:24:57

 こんばんは 
チャンネル桜で特集してましたが、
本当に必要なアイヌの方たちに援助がいっておらず
利権と化してるみたいです。
 

  • Posted by 上越市民
  • at 2014/08/22 20:14:48

上越市民さん、コメントありがとうございます。おっしゃるとおり、アイヌ民族をあげつらうのではなく、援助の適正化に取り組まれるべきものと思います。

とおりすがり(元)さん、コメントありがとうございます。はい、単純なコスト比例であるべきだというのは確かに違うだろうと思います。しかし一方で、同じ論理が、医療・介護・年金の福祉にも当てはまり、お金に限りはあるのですから、公共事業と福祉の配分をきちんと考えなければなりません。のみならず、現世代と次世代の配分の問題も放置はできません。アイヌの補助金の適正化を考えるのと同じかそれ以上の真剣さで、公共事業と福祉の配分、現世代で使うお金と次世代に残す借金の配分の適正化も、考えるべきものと思います。

一都民さん、コメントありがとうございます。きっと怒られるのでしょうけれど、私は、「韓国人、中国人」、更には話題の「朝日新聞、従軍慰安婦」をあげつらう、そのどれもが「小さな正義」であると思っています。正直これらの問題を他の何を置いても解決しなければならない一大事のように扱われる方々に、違和感を禁じ得ません。
私が学生の頃、時はバブルで、世界で ”Japan As No.1” の声が響いていました。当時世界の多くの人が日本を尊敬し、日本人自身も日本を誇りに思っていましたが、それは、「中国や韓国が日本を非難しなかった」からでも、「朝日新聞が従軍慰安婦の誤報をしていなかった」からでもなく、日本自身の実力が、世界1だったからです。 
またそもそも今現在、中国や韓国の非難をまにうけている外国人はほとんどいませんし、従軍慰安婦問題も知っていたとしてもしょせん過去の問題と言うとらえ方で、これを現在の日本人と結びつける人はまずいません。これらのことは、正直何ほども、日本の評価を下げていないのです。
我々が日本を誇りに思うために何を置いてもやらなければならないのは、この国で、この地域で、幸せに暮らせる社会を作ることで、その第一は経済の繁栄、第二は安心の福祉、第三は次世代を育てる教育だと思います。そしてこの3つが出来てしまえば、まあ後は多少何がどうだろうが、外国の方も日本の方も自然日本は素晴らしい国だと思って、つまらない批判は出てきません。
小さな正義を掲げて、小さな不正義をあげつらう政治ではなく、大きな正義を掲げて、大きな幸福を実現できる政治を、私はめざしたいと思います。

  • Posted by 米山隆一
  • at 2014/08/25 23:29:02

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