7月―9月の四半期のGDP速報値が、年率 -1.6% であったことが、市場に衝撃を与えています。政府与党はこれを、「4月の消費税増税のせいであり、アベノミクスのせいではない。アベノミクスは順調で来年の消費税増税を先延ばしすれば、景気は回復する。」と必死で主張していますが、私は端的に、「それはおかしい、論理矛盾です。」と申し上げたいと思います。

 まずもって現在のGDPの落ち込みは、個人消費と投資、中でも個人消費が大きく落ち込んだことが、最大の理由だといわれています。
 そしてこの個人消費が落ち込んだ最大の理由が、消費税増税によって、物の値段が高くなり、消費者が消費を抑えたことであろうことに異論のある人は、ほぼ皆無でしょう(当たり前ですから。)。
 ところが不思議なことに、消費税増税によって消費が減退したといっているその同じ人達(安倍総理をはじめとする自民党の先生方はその筆頭です。)が、なぜか、デフレを脱却すると-インフレになって物の値段が上がると、消費が増えて景気がよくなると主張しています。

 同じ物価の上昇が、消費税によるものだと景気の後退をもたらし、デフレ脱却-インフレによるものだと景気を良くするというのは、明白な矛盾でしょう。

 アベノミクス下の日本経済で起こったこと、それは、①資産インフレが先行し、一般消費財が値上がりしなかった間は、資産効果で消費が拡大した。②一般消費財の値上がりと、消費税による値上がりが重なったら、消費が縮小した。という極めて単純な事実であり、①と②から導かれるのは、「物の値段が上がれば、それが消費税によるものだろうがインフレ(デフレ脱却)によるものだろうが一般に消費は縮小する。」という直観的かつもともと明白だったと思われる事実です。

 その事実を眼前にしてなぜ、「デフレ脱却-インフレ招来によって物の値段を上げることが、日本経済を救う唯一の道だ!」と真顔で主張し続けることができるのか、正直私には不可思議です。

 もちろん私は、「『インフレ期待』によって物の値段が上がり続けることが予想されると、今日よりは明日、明日よりは明後日に物の値段が高くなるから、消費者にとっては、同じものを買うなら、なるべく早く買うのが合理的選択になる。」という、これも極めて明白な理論を、否定しているのではありません。
 この理論は理論として正しいけれど、それには様々な前提があり、特に消費者の購買余力が乏しく、多くの人が、「早く買う」よりも「少なく買う」を選択する状況下においては、インフレ期待は消費の縮小という全く逆の結論を「論理的に」導きかねないのだと、言っているのです。

 経済学は理論ですが、経済は現実です。どのように素晴らしい理論も、それを現実に適用する前提、現実の見極めを間違えば、全く意図しない結果を生じます。そしてその誤りが明らかになったにもかかわらず、それを認め、軌道修正しなければ、それこそ「論理的に」同じ過ちが何回も繰り返されることになります。

 アベノミクス2年間の実験で分かったこと、それは上述したとおり、多くの消費者に購買余力がない状態での物価上昇は、それがインフレによるものであろうが、消費税増税によるものであろうが、「早く買う」よりは「少なく買う」を選択させて、消費を減退させるという事実であろうと思います。
 この状況下で消費税増税を先延ばししても、自民党がアベノミクスに固執する限り、消費財の物価上昇は続きます(それこそ「デフレ脱却」として目指すところなのですから。)。
その結果もたらされるものは、さらなる消費の縮小と景気の後退だと、敢えて私は、断言させていただきます。

 アベノミクスの2年間がもたらしたもの、私たちはそれを冷静に見つめ、その理由を正確に分析し、根拠のない大言壮語や、痛みの先送りという目くらましに惑わされることなく、誤りは誤りとして認めて、早期の方針転換を図るべきものと思います。


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コメント

私は経済はわかりませんがGDPが4-6月-7.3%で7-9月-1.6%であるなら、少なくとも悪化幅は小さくなっています。増税後に4-6月にドーンと落ち込み、その衝撃からは和らぎつつあるという解釈はできないものでしょうか。確かに専門家の予想より悪かったそうですが、その予想の根拠はどこからでているのでしょうか。私には、数字だけみると改善しているのに大騒ぎしてどうして衆議院解散となるのかわかりません。
今回多くの日本人は増税により可処分所得が減ると、節約して対処し、本当に必要か吟味するくせがつきました。何も考えず浪費し続けるより賢い民族性だとは思いませんか?

  • Posted by 私は経済はわかりませんが
  • at 2014/11/18 19:17:24

消費税は本当に正しい税収なのでしょうか?
予算で消費税分増えても、歳出で消費税を払っているわけですよね。いたちごっこのような気がしますし、地方歳出は消費税分負担が多くなり逆に圧迫しているような気がします。
それより、社会保障税のような目的税で税収を増やしたほうが経済に影響なくGDPも増えると思います。米山さん再考御願いします。

  • Posted by こうだ
  • at 2014/11/20 16:11:16

田中眞紀子さんの出馬見送り(でも政界は引退しない?)についてひとことお願いします

  • Posted by めいろま
  • at 2014/11/20 16:15:02

自民党にも民社党に投票したくありません。
前回と同じ、米山隆一に一票を投じたい!
無所属で出馬してください。

  • Posted by 越後の池田屋
  • at 2014/11/20 18:26:04

小学生が正月休みに書かされる「今年の目当て」みたいな、作文ばかりだから、「具体的な対案は!?」と聞いたらば、ヨネノミクスですか!?

甘く見て、それをあなたのビジョンとしても、貴方の負け方が貴方らしからぬボロ負けになったのが何故なのか、良く分かりました。

百歩譲ってビジョンを辛うじて語ったとしても、現実的なオペレーションの想定を言葉に出来ないでしょう。と言うか、してこなかったでしょう!?


目論見書も書けないで、「兎に角信じて!」と言う人を信じますか!?経済は政治に翻弄されながらも市場という絶対評価を受ける場所があります。
政治家を志す貴方が「民主党との連携を模索して態度表明」との報道に接し、つくづく思いました。

オペレーションだけじゃなくて競争戦略も欠けてお持ちではないようだ。

あれだけ貴方が否定して許容しなかった民主党が万一応援してくれたら、嬉々として出馬しそうな米山さんの姿が目に浮かびますよ…。(笑)

そろそろ否定形から入る政局愚痴話よりも、もっと具体的にオペレーションとその効果の前に必ず顕れる副作用を語らないと、「新潟の鳩山由紀夫」という評価が確定しそうなんですが。
私は経済が優先ですが、貴方は政治を生業にする事を自ら選んだんでしょ?
だったら、当たり前にリクエストに応えなきゃ、政治家の最低限の資質を疑われますもんねぇ。
正直に申し上げると、オペレーションとその±すら言葉に出来ない米山さんは立候補者に値しないと思います。
良い悪いは別に、橋下さんと似て決定的に違うのがマイナスを語る度量の無さだね…。
ドン・キホーテが許される時間は無限じゃないですよね…。

  • Posted by 長岡市民(ノリ)
  • at 2014/11/21 02:41:31

法人税引き下げの話が出ていますが、海外に出られない企業は若干助かるでしょう。でも、租税回避でタックスヘブンを使って法人税を払っていない大企業が日本に戻って法人税を払うとは思えません。
むしろ、リヒテンシュタインとか、ガンジー島とかマン島に制裁を加える方が先ではないでしょうか。

根拠 「税金を払わない巨大企業 (文春新書)」 2014/9/19 富岡 幸雄 (著)

米山さんは、この点どのように解決します?

  • Posted by 禿
  • at 2014/11/21 07:26:22

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