ニュースの感想
本日,安全保障関連法案が,5野党退席のもと,強行採決されました。
意見が違ったら大変恐縮ですが私は,「強行採決」それ自体は,さして非難されるべきものでもないと思っています。審議を全くしないならいざ知らず,ある程度の時間を費やしたらそこで採決にするのは民主主義のルールだからです。
一方で,我が維新の党をはじめとする野党の「退席」を無責任と批判するのもまた違うと思います。殊に維新としては,せっかく提出した維新案の審議日数は10日に満ちません。審議不十分でありまだ採決の機は熟していないという意思表示として,採決を欠席することもまた,民主主義のルールの中で許されているものでしょう。
問題はむしろ,この安全保障法案が,前々回の選挙でも,前回の選挙でも,全く隠されていたことでしょう。自民党の公約集にはほんの一行「集団的安全保障の行使容認」と書かれていたとのことですが,安倍総理が選挙において高らかに掲げたのは,その当時誰一人反対していない「消費税増税先送り」であり,「代表なくして課税なし」というメッセージでした。当時法案の原案はできていたはずですが,ホルムズ海峡での機雷掃海や,中東での兵站を恒常的に可能とする法律を立法するなどということは,何一つ触れられてもいませんでした。
無論,選挙時と選挙後では情勢が異なり,政治課題のすべてを選挙で問うことはできないのは当然でしょうし,それ以前に,「選ばれた以上,任期中は何をしてもいいのが代表制民主主義のルール」といわれればそれまでです。
しかし代表制民主主義は,選挙においては,候補者は,可能な限り自らの政治的スタンスを明らかにして,有権者の選択を仰ぐのが暗黙の約束事となっています。「代表なくして課税なし」というメッセージに含意されているはずの「重要案件については選挙において国民の意思を問う」という約束は,果たされなかったのです。
強行採決は,それ自体が問題なのではなく,「約束を果たさず,意図を隠して行った選挙で得た多数を使って行う」からこそ問題なのだと,私は思います。
今回の安全保障法案の強行採決で明らかとなった最大の問題点は,「選挙の時は重要なことは何も言わず,『果たされぬ約束』で多数を得ておいて,後になってその多数を使って『隠された意図』を強行する」のが,自民党の政治的スタンスであるということでしょう。
採決退席で自らの意思を示した我々野党が今後やるべきことは,次の参議院,衆議院で,自民党が口にする公約には,「隠された意図」と「果たされぬ約束」が満ち溢れていることを有権者に伝えると同時に,自らは,「明確な意図」と「折れない意思」を持って「約束を果たす」ことを有権者に信じてもらえるよう全力で努力することであろうと思います。
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