先にブログでホワイトカラーエグゼンプションについて記載しましたが、この法案(実際には法案になっていないので通称ですが)は、中身以前に「難しい英語の法案名」と言うことで印象に残っている方も多いのではないかと私は思います。
私は、この法案名(通称)をはじめ、政治の場にカタカナ英語があふれていることを、やや残念だなと思っています。その理由の第一は勿論「よくわからない」事なのですが、もう一つ「分かりづらい言葉を使うと、相手に反対のチャンスを与えてしまう」と言う理由があります。
よく持ち出される例ですが、「人の話」の印象は、55%は外見で、38%は話し方や態度で決まってしまい、話の中身は7%しか影響を与えないと言う研究が報告されています。これと恐らく同じ事で、「ある法案」や「ある政治的見解」に対する意見の相当程度は、「法案名」や「見解につけた名前(例えば『護憲』とか『保守』とか)」で形成されて、その中身はさして注意を払われないと言うのが現実でしょう。そうすると、法案名と言うのは実はその法案の印象のかなりの部分を決める「顔」に当たることになります。そしてこの「顔」は、私たちが自分自身の顔を選べないのに反して、幸いなことに発案者が好きなものを選ぶことが出来ます。そうであれば、是非とも分かり易く、かつ好印象を与える名前をつけておくことが、その後その法案に対する賛同を募っていく上で必須でしょう。ここで分かりにくい名前をつけてしまうと、相手側から「面白くて印象に残る悪口的あだ名(悪口と言うのは大体面白いものです)」をつけられて、それが法案全体の印象を決めてしまうことになりかねません。
件の「ホワイトカラーエグゼンプション」は世の中ではすっかり「残業代不払い法案」で通用していて、世論は概ね反対に傾いています。この批判は、勿論いずれは出てくるものだったし、相当程度に正しい部分もあるとは思います。しかし、この事態を招いた結構な部分は、実は内容とは無関係に「ホワイトカラーエグゼンプション」と言う名前そのものにあったと私は思います(直訳すると「事務職免除」ですから、英語が得意でも、「英語の法律の知識」がないと何を言っているか分かりません)。「残業ゼロ法案」(私が勝手に考えました)みたいなあまりに実態からかけ離れた名前をつけるとそれも又「実態は残業『代』ゼロ法案だ!」のような「悪口」を言われてしまいますから良くないのですが、それでも発表時に「事務職年収制法案」とか「残業代一括払い法案(我田引水です。すみません)」等の工夫はして見ても良かったと思います。
「自らの考えを伝える分かりやすい言葉を選ぶこと」それは、政治家が真剣に自分の考えを実現したいと考えるなら絶対に必要な戦術だし、それ以上に、説得する相手に対して最大限の誠意を尽くすことであると、私は思っています。
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