米山隆一の10年先のために

日本政府が竹島周辺海域での調査を韓国に通告したところ、韓国政府がこれに強く反発し、耳目を集めています。

詳細は既に様々なマスコミで取り上げられているので省略しますが、基本的に日本の行っている行動は、国際法的に何の問題もないことです。EEZ(exclusive economic zone:　排他的経済水域)とは、その領有を主張する国が、「経済的主権」を行使できる範囲に過ぎません。たとえ韓国のEEZ内であったとしても（日本からは本来日本のEEZですが）、科学的調査（資源調査ではない）を行いつつ平穏に航行している日本船舶の行動を妨害する権利は、韓国にはありません（因みにこれに先立つ韓国漁船の日本EEZ侵犯問題では、韓国は「違法操業の証拠が明確でない以上、EEZの航行自体は自由」と主張しました）。その日本の行動を非難し、あろうことか実力を持って阻害しようとすることは、言葉は過ぎるかもしれませんが、「無法の行動」といっても過言ではないと思われます。

やや極端な主張に思えるかもしれませんが、私は、日本政府は、日本の立場が正統なものであることを主張すると同時に、「この様な国際法を無視した主張が現代社会において行われるとは、正直驚愕に値する。我々は国際法と言う人類普遍の原理を希求する国際社会の責任ある一員として、その様な主張を決して容認しない」と、韓国の主張の不当性をはっきりと非難すべきだと考えます。

勿論それは、日本的美徳ではありません。興奮している相手により激しい言葉を返すことは、火に油を注ぐだけだと思えるかもしれません。しかし、相手が激しているときにはこちらは冷静に対処すると言う日本的美徳は、残念なことに、未だ国際的美徳にはなっていません。相手が100の言葉で日本を罵倒しているときに、日本が1の正統な理屈を返すだでは、それがどれほど正当でも、単純な量の比較で、部外者は100の罵倒の方に理があると言う印象を持ちます（実際、アメリカで報道されているニュースでも、韓国側の関係者の発言の方が絶対量で多い為その主張の方が多く取り上げられ、あたかも正しいかのような印象になっています）。又、100の罵倒に対して1しか反論が来ないなら、罵倒する側はほとんど反論されるリスク無しで罵倒が出来るわけで、あまり上品な計算ではありませんが、相手の評判が下がった分だけ相対的に得をすることになります。それでは、各国が国益を求めてしのぎを削る国際社会で、「日本を罵倒する」と言う戦法を使うなと言う方が、無理と言うものです。

私は、極めて日本的美徳に反することではありますが、国際法を無視した無理な主張をする国に対しては、覚悟を決めて、100の罵倒に対しては200の「明快で、痛烈な批判」を返すことが、必要なことであると考えます。そうすることで、日本に対して無理な主張をすると、痛烈な批判を浴びて自国の不利益につながると言う状況が出来上がります。そうなれば、ほうっておいても、おいそれと無理な主張は出来なくなります。勿論それは日本の評判を落とす諸刃の剣ではありますが、やり方を間違えなければ、日本の評価を保ちつつ反論を行うことは十分に可能でしょう。その為に、品性と、相手を追い詰めすぎないゆとりと、そして願わくば、部外者を味方に引き込むいくらかのユーモアをもって「痛烈で明快な批判」を発せられる能力こそが、これからの政治家に求められる、「外交能力」の一つであると、私は思います。