共謀罪と自由の値段

  • 米山 隆一
  • at 2006/5/09 08:10:49

連休明けから、政府提出の共謀罪が本格的に審議されます。これには与党修正案、民主党修正案が提出されています。

政府案、与党修正案、民主党修正案の詳細は各々文末のリンクの通りです。細かな議論はそれぞれの場所に譲りますが、結局のところこれは、「自由にどれだけの費用を払う心積もりがあるか?」と言う問題であろうと思います。

政府案・与党修正案には野党側から「思想を罰することになる」「単なる集会が罰せられる」という反対意見が出されていますが、条文を見る限り、それには可也極端な法令解釈をしなければならず、実際問題としてはそのように運用される恐れは少ないでしょう。民主党修正案は法律の適用場面を可也限定的に規定しており、乱用の恐れは少ないですが、会社組織の形態を装った犯罪組織の摘発等にはむしろ限界を呈する可能性もあるでしょう。

ただそれでも私は、自民党の一員ではありますが、この件に関しては民主党修正案に賛成です。例え現実の運用において乱用の恐れが少なくても、「この集会はもしかして罰せられるのではないか」と考えてしまうだけで、自由は制限されます。又現代の民主的社会なら乱用の恐れは無くても、法律と言うものは時として100年以上生き続けます(実際明治時代に作られた法律で現在も有効なものはあります)。100年後の社会が民主的に運用されている保証はありません。そのときの為に、国民の自由を制限する法律は出来る限り限定的に作るということは、人類が営々と築いてきた知恵であろうと思います。

忘れてはならないのは、それに対するコストを支払う覚悟を、社会全体が持たなければならないということでしょう。自由は、とても大切で、そしてとても高価です。自由を保とうとしたら犯罪の可能性は残る、だがそれを完全に排除しようとしたら、自由はなくなってしまう。だから相応のコストを負担しても、我々は自由を守るのだと言う覚悟がなければ、自由は保ち続けられません。自由を保ち続ける為には、自由の乱用がなされないように、きちんとした教育がなされなければなりませんし、法律の隙間をついた犯罪に巻き込まれないように、自らを守る努力も欠かせません。そして不幸にして法律の隙間をついた犯罪起こったときにも自由を否定せず、社会全体でそれに対処する方法を考えていくタフさがなければなりません。

そういった覚悟を持ったタフな自由社会、それが今後の日本の目指すところであると、私は思います。そして今国会の審議が国民の自由を保つ為に深められることを、心より希望します。

 

(尚自分の意見と所属する政党の意見が異なったときには、堂々と自らの意見で所属する政党の仲間を説得するべきだと思います。ただ同時に、議論を尽くした末に集約された意見には、例え個人としては反対でもそれに従うのが、民主主義のルールであると思います)

 

政府案: http://www.shugiin.go.jp/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g15905046.htm

与党修正案、民主党修正案、解説

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%B1%E8%AC%80%E7%BD%AA

民主党修正案

http://www.dpj.or.jp/seisaku/kan0312/houmu/image/BOX_HOM0070_keihou-shuusei.pdf


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