靖国問題(3)

  • 米山 隆一
  • at 2006/8/15 23:46:19
  靖国問題(1)、(2)で書いたとおり、私は原則として、参拝それ自体は正しかったが、他国の理解を得る努力が不十分であったと考えています。
  その原則論はそれとして、不謹慎は承知の上で現実論を述べるなら、実のところ今回の参拝は政治的に悪くない判断であったと思います。
  報道でご承知のとおり、中国、韓国は早々に靖国参拝を非難する声明を出しました。しかしそのトーンは今までと比べてかなり抑制されています。大宰相であったとはいえ、任期中唯我独尊の変人振りを演出し続けた首相の退任間際の参拝では、いくら非難したところで、結局は「小泉は悪いやつだ」で終わってしまうことを、彼ら自身よく分かっているからでしょう。そしてこれによって、実はやり方しだいで、次期総理大臣にとって比較的都合のよい状況を作れるようになったのだと、私は思っています。
  次期総理大臣が仮に靖国参拝を行わない場合はもちろん、参拝を行う場合でも8月15日をはずしさえすれば、ただそれだけで、「中国、韓国を思いやる良い首相」となれます。それをうまく宣伝して利用すれば、たとえば歴史問題や、たとえばガス田問題で実質的な譲歩を引き出せる可能性があります。そうであれば、実のところ日本は、不謹慎ではありますが「ただ」で実利を得たことになります。そうして相手の譲歩を引き出した上で妥協するであれば、「日本に安易な批判をするとそれを収めるのに実質的譲歩が必要となる」ことを相手に示すことができ、際限のない批判と妥協の連鎖をとめることができるでしょう。無論国内的には小泉首相との比較で難しい局面を迎える可能性もありますが、小泉首相自身8月15日の参拝は1回だけであり、特例であることを強調して切り抜けることは可能でしょう。
  私は、私の推測が妥当なものであるのか、またそもそも首相がそのようなことを意図して今回の参拝を行ったのか、正直判断できません。しかし結局のところ全ては次期総理大臣が今回の状況を如何に日本に有利に利用するかにかかっているように思われます。意図してか偶然か、次期総理大臣が確実と思われる安部官房長官は4月に靖国参拝をすませ、来年の12月まで外交のフリーハンドを有しています。理念は理念として保ちつつ、冷徹な計算に裏打ちされた外交努力と国内政治で、日本の国益に最もかなった形でこの問題に道筋がつくことを祈ります。守るべき理を通した上で日本のために行うのであれば、私たち祖先の英霊もそれを認めてくださると、私は信じています。
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コメント

今日は。りぃと申します^^政治・経済にとても関心があって、将来政治家を目指している(!)中2の女子です。私も、靖国神社問題には賛成です。うろ覚えの知識なのですが、国際政治学上は靖国神社参拝という首相の決断は表面上は外交関係の悪化を招くものの、経済利益としては悪くなぃという意見を耳にしたことがあります☆マスコミも批判ばかりをして、参拝するメリットをあまり報道しない傾向にあって、支持率を操作しているかのような面もぁるかなぁと私は見ています。では、乱文失礼致しました!

  • Posted by りぃ
  • at 2006/08/20 19:37:38

 りぃさんこんにちは。コメントありがとうございます。  政治家志望とのとこと、すばらしいと思います。まだ中学生ですから今後目指す進路が変わることもあるかもしれませんが、もし将来も政治家志望が変わらなかったら、是非トライしてください。政治はとても大変ではありますが、一方でとても意義深く、やりがいがあることだと思います。  靖国問題の損得勘定を正確に判断するのは大変難しいところです。原理原則の問題であり、そもそも損得勘定などすべきでないと言う意見も成り立つでしょう。しかしそこをあえて考えてみると、りぃさんが書かれたように、よく言われるデメリットと同時に実はメリットもあります。  靖国が争点化されたことで、面白いことに日本は「靖国に参拝しない」と言う交渉カードを手に入れることができました。これをカードとして使うこと自体が不謹慎と思う方もおられるかもしれませんが、私は条件さえそろえば考慮してよいことだと思います。  また一般に、「靖国問題は中国、韓国をはじめとする近隣諸国との外交を壊した」といわれますが、最近両国からの批判に、「日本は一応の謝罪はしているが・・・」「日本は援助をしてはきたが・・・」等、少なくとも事実関係を認めた上での議論が見られるようになりました。これはある意味では「まっとうな外交」が構築されはじめていると見ることができます。  中国、韓国以外から靖国がどう見えるかについては反対派からは「諸外国からも不信を買っている」とされていますが、「反応は多岐にわたるが総じて中立」が本当のところでしょう。これに関しても、「期せず戦後の日本の努力を説明する機会となっている」「議論の中で中国の人権問題がクローズアップされ、むしろ中国にマイナス」等のメリットもあるように思われます。  いずれにせよ、靖国に限らずある政策のもたらす影響は常にプラスマイナスが入り組んでいるもので、一方的な評価は本質を見失うと言うのは、りぃさんがご指摘のとおりでしょう。冷静で多面的な評価に基づいた、粘り強い外交努力が、今の日本に求められているのだと思います。

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