自民党は、景気対策の公約として、「国土強靭化」と称して10年間で総額200兆円の公共投資を掲げています。また安倍総裁は、デフレ対策として、日銀の国債引き受けを打ち出しました。
私は端的にこれに、反対します。
まずもって、政府支出増大による景気対策は、ほとんど意味をなさないことを、我々はここ30年間の経験から学ぶべきです。日本の税収は40兆円ですが、歳出は90兆円になります。これはマクロ経済学的には、毎年50兆円の公共事業をしていることとまったく同じです。政府支出を公共事業に使った時だけ景気が回復し、その他の用途に使うと景気が回復しないと考える合理的理由は、ありません。毎年数十兆円の財政赤字を30年間もの間垂れ流し続けた結果もたらされたものが、景気の回復ではなく1000兆円の借金だったことを、私たちは直視すべきです。
また、「国土強靭化」という構想そのものに、私たちは慎重であるべきです。「安心・安全」はもちろん大事です。今回のトンネル崩落のような事故を防ぐために、老朽化した設備のメンテナンスは欠かせないでしょう。しかし、世の中に絶対はなく、「安心・安全」を過度に追い求めたら、きりがありません。1000年に一度の地震に耐えられるけれど、耐用年数は100年という橋(橋の耐用年数は長くてもそんなものでしょう)を作ったら、1000年に一度は強い橋を作ってよかったということになるけれど、1000年中900年間は、強靭な橋を作って壊して、作って壊してを繰り返すだけです。お金が余るほどあるならそれをやる意味もあるでしょうが、消費税をアップしてやっとのことで社会保障を維持している日本がそれをするのは、さすがに無駄というものです。
貴重な財源を使って行う景気対策です。私たちは、今の日本の経済に最も欠けているものを見据えて、それを補うことによってこそ、景気を回復すべきです。
日本の経済に最も欠けているもの、私はそれは、強靭な橋や道路ではなく、企業の競争力であると思います。そして企業の競争力を高めるために必要なもの、それは、投資優遇措置や研究開発支援といった企業そのものに対する支援、経済制度の整備や、TPP・FTAの構築を通じた市場の獲得といった経済環境の整備と、そして何より、企業で働く人に対する支援であると思います。そもそもの初等・中等教育から始まって、競争力あふれる人材を育成し、子育てと仕事を両立しやすい環境を整備して女性の力を社会に生かし、雇用制度を整備して現役世代の実力を十分に発揮してもらうことこそが、最大の景気対策であると、私は思います。
上にあげた一つ一つの対策は、制度構築に時間を有し、橋や道路のように、目の見える形が、すぐに出来上がるものではありません。しかし、世の中に、魔法の杖はありません。輪転機でお札をすれば、そのお金で何も考えずに橋や道路を作れば日本経済が強くなるなどいうのは、夢物語です。私たちの、地域の、そして日本の豊かさは、私たちの、地域の、そして日本の汗と努力によってしか獲得できません。
私は、地道に、しかし着実に、日本の競争力を高める政策にこそ、貴重な税金から頂いた、景気対策予算を使いたいと思います。
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