最近何やかにやで忙しく少々ブログのアップがお留守になっていたところ、読者のお一人から「アベノミクスの批判は聞き飽きた。代案を示せ!」とのお叱りを受けました。小学生のいいわけのようですが、「今書こうと思っていた」んです、はい(笑)。
さて、経済の話は、互いに相反する意見が語られ、非常にわかりづらいものと思います。その最たるものが、「国債」の話で、「①国債がこのまま増えていくと大変なことが起こる!」という意見と、「②いや日本の国債は国内で消化しているからいつまででも大丈夫!」という意見が同時に語られ、議論が混乱しています。「アベノミクス」に関する意見の違いも、この点の相互の理解の相違に基づくところがあるかと思いますので、まず、以下の「例」で、①②の両方がある意味正しく、しかし別のことを言っていることを説明したいと思います。
まず、今「ヨネ国」には、(株)ヨネが一社だけあり、(株)ヨネには、社長のAさんと、従業員のBさんの二人だけがいるものとします。そして(株)ヨネの利益は500万円、Aさんの報酬は450万円、Bさんの給与は50万円であるとします。ヨネ国は、課税最低限度が50万円で、それゆえ、Aさんからは50万円の税金をとっていますが、Bさんからは、税金をとっていません。ところが、ヨネ国は医療・年金の福祉が相応に整備されており、一人当たり50万円ほど、合計100万円の福祉予算を支出しているものとします。要するに、ヨネ国は、税収50万円で100万円の支出をしているわけで、50万円ほどお金が足りません。それをヨネ国は、Aさんから50万円ほど国債を買ってもらってまかなっています。これを図にまとめると以下のようになり、現在の日本の姿と割と一致します。
この図から、国債の発行と言うのは、国内の「分配」の問題だという事が分かると思います。国債の発行は、要するに所得の高い人から低い人への所得移転であり、かつ、将来においては、この逆-所得の低い人から高い人への所得移転をしなければならないものです。ヨネ国の国債が増えるという事は、つまりAさんの国債保有が増えるという事で、ある時Aさんが「こんなものこれ以上いらん!今すぐ返せ!」と言ったら、ヨネ国としてはBさんから取り立てることもできず、明日から財政が回らなくなります。従って①は本当です。一方、Aさんが、極めて従順にひたすら国債を買い続け、税金を取られた後400万円あるはずなのに350万円しか使わないという状況に何の疑問も感じないなら、毎年同じように国債を発行し、どこまでも残高を増やし続けることできます。従って②も嘘ではありません。しかし①は現実のAさん行動から生じるリスクが高まることを論じているのに対し、②はAさんが同じ行動をとり続けることを前提とした会計上の区分の話をしており、両者は別のことであることが分かると思います。
さて、前置きが長くなりましたが、これを前提に、ヨネ国に安倍ノミクスを適用するとどうなるでしょう?基本安倍ノミクスは、A社長の給与を増やし、社員のBさんの給与を減らすので、ざっと下の絵のようなことが起こります(A社長の給与が450万円→475万円と増え、社員のBさんの給与が50万円→25万円と減った場合です)。
すると確かにA社長が納める税金が50万円から75万円に増えますから、その分、国債の発行残高は減ります。
更に現在の安倍政権は、昨今の「弱者バッシング」の風潮に載って福祉削減にまい進しており、社員のBさんへの福祉を50万円から25万円に削減して以下のような状況を目指しているものと思います。こうなれば、確かに税収を増やし、福祉を削減することで、赤字国債の発行を解消することができます。
もしかして極めて「保守的」な方々は、「国家」の収支が改善し、A社長のような少数の成功者を見て、「同じ日本人として誇らしい!」と思えるのかもしれません。しかし、本当にこれは「幸せ」な国家像でしょうか。
社員のBさんは、年収25万円福祉25万円では、結婚も子供も作れませんし、仮に子供が出来ても十分な教育を与えることができません。この例ではヨネ国には社員はBさん一人ですが、実際の日本国では、Aさんの立場の人よりもBさんの立場の人の方がはるかに多く、結局これは、国民の大半が極めて貧しい状態になり、次の世代を育てることどころか、自分が誇りを持って働くことさえできなくなってしまうことを意味します。
「日本の誇り」は取り戻せても、「個人の誇り」はまるで置いてきぼりの政策では、国民が疲弊し、次の世代を育てることができず、結局永続する社会は作れません。
ではどうすべきか?ご批判に応えて、代案、その名も「ヨネノミクス」があります(笑)。その発想はいたってシンプルです。A社長が社員のBさんに払う給与を、増やし、その分Bさんに税金を支払ってもらえばいいのです。たったこれだけのことで、国債発行額はぐっと減らせます(以下は社員のBさんの給与が、一気に150万円になった場合です)。
更に、福祉の規制緩和を進め、国家からの福祉に頼るだけでなく、給与が増えた分で、民間のサービスを自分で代金を支払ってもらうことで、福祉を削減すれば、赤字国債もなくすることができます。
この状態は、確かに大金持ちはいなくなるかもしれません。しかし、国民の大半を占めるBさんの立場の人たちは、自分の力で、自分の暮らしを形成することができるようになります。結婚し子どもを育て、十分な教育を与えることができ、「自分に誇り」を持てるようになります。多くの国民が「自分に誇り」を持っている、それこそが「国に誇りを持つ」ということだと、私は思います。
また、鋭い人はお気づきだと思うのですが、社員のBさんの給与を50万円から150万円へ100万円も増やしている割に、(5)のA社長の可処分所得は、(1)の350万円から50万円しか減っていません。これは、A社長がいくら自分の給与を増やしても、社会を維持するために税金や国債を買わなければならないのであれば、結局使える額はそれほど増えないことによるものです。
従って富める人にとっても、配分は必ずしも他人に「あげる」ものではなく、社会の維持のために結局負担しなければならないコストの支払方法を変えるだけであるという面があることに着目していただければと思います。
「『AさんがBさんに払う給与を、増やす』と言うが、どうやってやるのか?」と言われるかと思いますが、それこそが私がかねてから主張している「残業代をすべての会社で、完全に払わせる」ことを筆頭とする「ルールによる民間分配政策」です。
「分配政策」は「バラマキ」的印象があって近年非常に不評です。確かに民主党的(自民党的)「国家による分配」は(1)の状況を作って、大量の赤字国債の原因となりました。しかし、これが「民間による分配」すなわち給与の分配を増やすのであれば、状況としては(4)または(5)になるので、赤字国債は増えません。
こういうと、それこそブラック企業の経営者が「皆に残業代を払ったら会社がつぶれる。」的なことを言いますが、それは、「ルール」が徹底されないために、ルールを破ったもの勝ちになっているからです。全企業に同じルールが適用され、かつ、ルールを破った企業は一発レッドカードで厳罰に処して市場からご退場願えば、競争の問題は生じません。
また、現在の日本は、「ルール無視」の長時間労働が当たり前になっているために、結局「ルール無視競争」に強い経営者-すなわちブラック経営者が生き残り、「悪貨は良貨を駆逐する」的に、本当にアイデァやマネージメント能力のある経営者が育たなくなっている面があります。厳格なルールの適用がなされ、労働の流動性が確保されて、労働する側も経営者を選べる環境をつくることは、「アイデァとマネージメント能力で勝負できる経営者」にとっては、むしろ無能なブラック経営者に勝つことにつながり、結果として、本当に優良な企業を勝ち残らせて、日本全体の経済力を向上させることになると私は思います。
以上、長くなりましたが、私は、すべての会社が、労働市場のルールを厳正に守り、働く人が正当にその報酬を受け取り、労働の流動性が確保されて、労働する側も経営者を選べる環境をつくることで、働く一人一人が、豊かな生活を享受し、次の世代に十分な教育を与えることができ、「自分に誇りを持てる」社会を作る「ヨネノミクス」を、安倍ノミクスの代案として、高らかに提案させて頂きたいと思います(笑)。
働く日本人一人一人が「自分の誇り」を取り戻してこそ、本当の「日本の誇り」が取り戻されるのだと、私は、今までも、そしてこれからも、信じています。
米山さん
他人の批判だけでなくご自分の提案を提出するとは立派です。が、このヨネ国どこかおかしいのですが…
残業代ルール、日本の全会社がこのルールを守るという理想のヨネ国、もし実現すると、(諸先進外国と比べて)著しく仕事の効率の悪い日本人がやりたいだけ残業し(皆お金が欲しいので無理にでも残業しようとする)、会社が無制限に残業代を払う(と給料は簡単に倍になる)と会社はキャッシュを失い、仕事の効率はもとから悪いので諸先進外国との競争に負けて、全ての会社はたちどころに倒産し、たちまちヨネ国は潰れてしまうと思うのですが。どうでしょうか。米山さん、日本の平均的会社員は米山さんが残業される時のようには効率的ではないのです。このヨネ国は社員が全員米山さんだと確かにうまくいきますが、実際はそうではありません。平均的国民が平均的な仕事をしても成り立つような仕組みを考える必要があります。
外国から冷静に日本を見ていると、大きな災害により日本にもたらされた多額の借金を全日本国民が共同で払わなければならないこと、現代社会の風潮に従って日本にも貧富差が形成されつつあること、を多くの日本国民が了解しているように思えます。それが正しいとすると、ご提案のヨネノミクスのように、単に税収を減らしたり、富の分配をやることよりも、軍事産業や資源に頼ることができない日本が海外から取得するキャッシュを増やす政策を考える以外にないでしょう。その意味でアベさんがやっている外遊は過去の総理にはなかった新しい、そして唯一の方法だと思います。それが唯一の方法だと分からない人(もしくは分かっていても分からないふりをする人)には日本を少なくとも経済的によくすることはできないでしょう。(もちろん経済的によいことだけがよいとは限りませんが。)
でも応援していますのでがんばってください。
思うに貴方の現状は周りに策士も切れ者もいらっしゃらない、ある意味唯我独尊な状況と拝察いたします。
米山さんを09・06より信じ支援してきたことがこの程度の戯言では、貴方を責める前に見る目のなかった自分を責めるしかありません。
「もしも世界が100人の村だったら」と同じように表現したかったのかもしれませんが、自己都合の作為的解釈が過ぎます。
選挙に勝ちたいお気持ちは良くわかるのですが、自民・民主・公明の部分的に美味しいとこ取りして「維新は違う!」って言うのは随分と情けなくズルくありませんか。
そういわれると、反射的に「根本から違います!」っておっしゃる・・・あなたに政策の根本の欠片すら見えませんが?
つくづく思いました。貴方はせいぜいリアクション芸人(上島竜平さんとか出川哲郎さん)レベルですから、勘違いなさいませんように。
主役になろうとするのは結構なのですが、何故今まで、そして今も主役になれないのか、ご自分の自信作「ヨネノミクス」をもう一度読み直してはいかがでしょう。
改訂版が出るまでは、私も決定的に離れることにしました。(あなたは言葉遣いが下手です。核心を突くはずの演説も自己満足のヘボだと思います。正確な分析と言葉を身に着けたら、どっかで勝っていたかもなのにね。それではさようなら!)
長岡市民(由美子)さん、コメントありがとうございます。
勿論この「ヨネ国」は、私の政策を分かりやすく示すためのものですので、デフォルメされていますし、ある意味それに良い方に書いてあるのはご指摘の通りです。
本当に政策を作る時になれば、正確な事実に基づいた正確な数字を入れ、詳細で膨大な法案と実行方法のセットを作ることになろうかと思いますが、それは本ブログの趣旨を外れるものと思います。
ご指摘の点、思い当るところも多々あります。正確な言葉遣いや演説の練習については研鑽に努めさせていただければと存じます。
from Boston さん、コメントありがとうございます。また、応援ありがとうございます。
残業と言うのは、会社が承認しなければできません。従って、「著しく効率の悪い社員」が残業をしようとしたら、会社はそれを許可しなければよいだけです(そうすれば従業員は大手を振って早く帰ることができます。もちろん許可したら許可した分払うことになります。)。「残業代を全部払ったら会社がつぶれる」と言うのは、結局のところ本来会社のマネージメントの仕事である、「残業の管理」を完全に社員に丸投げしていることの言い訳に過ぎないように思います。
また適切な残業の管理をしても尚キャッシュが漏出して会社がつぶれるというのなら、その会社はそもそもビジネスモデルとしておかしいのだから修正するべきだし、それが不可能ならつぶれるのもやむを得ず、そうやって産業の新陳代謝を勧めることこそが強い経済につながるのではないでしょうか。
因みにヨネノミクスは、課税対象が広がるので、税収はむしろ増えます。また、富の分配は無理にという事ではなく、「きちんと働いた人がルールに従ってきちんと報われる。」という事です。
「アベさんがやっている外遊」は基本ばら蒔いているお金の方がビジネスとして成約しているお金よりはるかに多いですので、「海外から取得するキャッシュを増やす政策」にはなっていません。
「軍事産業や資源に頼ることができない日本が海外から取得するキャッシュを増やす」には人材の育成しかないと思うのですが、ご指摘の「(諸先進外国と比べて)著しく仕事の効率の悪い日本人」が事実だとすれば(私はそれは働く人の問題と言うより、上記のマネージメントの問題だと思いますが)、ここを是正することが喫緊の課題だという事になります。適正なルールの厳格な適用は、まさにこの日本企業のマネージメントに是正を促し、一人一人が効率的に働き、得た報酬と余った時間でより自らの能力を高める機会を作るものだと、私は思います。
勿論トップセールスも必要なときは必要でしょうが、日本企業のマネージメントと働き方の非効率と言う根本的な問題を是正しない限り、それこそ日本企業が、先進諸外国との競争に勝ち残ることはできないでしょう。
自らの誇りは、他人が与えてくれるものではなく、自らの力で勝ち取るべきもので、国家が出来るのは、その意欲と能力のある人に、それを発揮する場と適正なルールを整備することであると、私は思います。
米山さんのモデルは社会主義に近いですね
日本に向いているのでしょうけど
何か理屈を作るときは理想モデルを構築しないとはなしがややこしくなるのはわかりますが
ちと性善説に傾きすぎでは
誰もが誇りある人間であれば、今こんな事になっていないわけで
日本で再び紀伊国屋文左衛門みたいな人が経済を回す時代が来ればきっと愉快だと思うのですが・・・・
そういう金持ちに、国内で金を使わせる方策は無いんでしょうかね
日本の財政状況が、そこそこ正確に読めている人の数は、極めて少ないのだろうと思います。私が実際に、周りの人たちに説明していても、そう思います。もはや日本の国債には、ほとんど信用はありえません、が、そのように理解している人は、まずいません。その中で、あなたが解決策だと言って、ああいう政策を提示しても、漫画っぽい戯言にしかみえないのでしょうね。由美子さんのような人物が、普通の人なのでしょう。
あたりまえに国際競争力を失うわけですから、あんな政策は、政策たり得るわけがないのですが、一面の真理を嗅ぎ取ることも可能なのかもしれません。また、現実に実施したら、全ての工場が、海外に移転するでしょうが。まあ、議論のたたき台を出しただけで、ひんしゅくを買うのですから、この国の国民は了見が狭いというべきでしょうね。
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