ニュースの感想
黒田日銀総裁が追加金融緩和を発表して、日経平均株価は急騰し、円も一気に112円を付けました。
黒田総裁としてはしてやったりなのかもしれませんが、「誰のための、何のためのバズーカ砲か」と疑問を投げかけざるを得ません。
マクロ経済学のイロハに属することでしょうが、「金融緩和」は、市中にお金がない、つまりは銀行にお金がなくて、お金を借りたい人が借りることができない状況の時に、これを改善するこために、銀行の保有する債権を買い取り、それによって経済活動を活発にするものです。従って極めて当たり前ですが、「世の中に十分お金が出回っている。」状況下では、経済-GDPを向上させることができません。これがかの有名な「流動性の罠」で、日本はこれをもう10年以上実証済みです。
そもそも「第2弾の金融緩和-バズーカ砲」をうつ前から、これに先立つ「アベノミクス2年間の金融緩和」で既に市場-銀行には現金がじゃぶじゃぶに供給されていました。TPPで先の見えない我が実家の零細農家(有)セイジローにさえ「(非常に低利で)お金を借りませんか?」と銀行をはじめ複数の金融機関が言ってきていたくらいで、この状況で、今更追加緩和をしたところで、銀行に供給されたお金を新たに貸し出そうにも貸し出す先はなく、株か債権か海外を含めた資産購入にしか向かわないことはほとんど必然です。
もちろんだからこそ、この「バズーカ砲」はダイレクトに株価を上げ、為替を一気に押し下げたのですが、要するにそれは、「株価インフレ」「資産インフレ」「円の暴落」を引き起こしたということにすぎません。
「株を持っている人」は株を売って儲かり多少消費を増やすのでしょうが、そのコストは「株を持っていない人」が日々の物価上昇で支払うことになります。その結果数としてははるかに多い「株を持っていない人」の消費が減り、結局国全体としての消費が増えないのは、アベノミクス2年間の失敗がすでに実証しているところです。
「円の暴落」は「輸出企業」に利益をもたらすかもしれませんが、当然そのコストは「輸入企業」が支払います。そして現在日本は、輸出よりも輸入の方が多い貿易赤字国ですから、国全体としては、貿易収支はさらに悪化し、国富が海外に流出することとなります。
結局のところこの第2の「バズーカ砲」は、「『株を持っている人』と『輸出企業』には利益をもたらすが、そのコストは『株を持っていない人』と『輸入企業』が支払い、国全体としては何の得もしないどころか、むしろ損である」ということになります。
にもかかわらずなぜ安倍政権はこれを実行したのか?その答えは極めて明白で、この「バズーカ砲」が日本という国家に対しては不利益であっても、安倍政権に対しては利益だから、たとえそうでなくても、少なくとも、「安倍政権には利益だと、安倍政権が信じているから」でしょう。
「国家の利益を無視した時の政権の利益のための政策」、更に恐ろしいことに、本当は誰のためにもならないのに、「時の政権の、時の政権の利益になるという盲信による、時の政権のための政策」が、今現在目の前で、極めて大規模に行われていることに、私は心から危惧を感じます。
「安倍政権の、安倍政権による、安倍政権のためのバズーカ砲」が日本にもたらすものが、壊滅的な経済の破壊でないことを、心から祈ります。
追記:
さらにこの政策は、長期的な円安期待を形成してしまいますので、海外の投資家から見ると、「日本で円を借りて、外貨に換え、そのお金を海外で運用して、更に円安になったところで返す。」という円キャリートレードを可能としてしまいます(実際おそらくそれもあって、日銀の追加緩和の発表を受けて海外の株式市場も高騰しています。)。
それは要するに、なぜか日本国民がリスクを取ってライバルの諸外国に成長資金を提供し、ご丁寧に資金まで提供した上で日本の資産を彼らにたたき売るという事に他なりません。
おそらくは確たる出口戦略のないまま、「日銀が時間を稼いでいる間に輸出企業の好業績が日本全体に波及するか、そうでなくても政府が成長戦略を実行してくれるに違いない。」という楽観論に基づいての事だと思いますが、そのような根拠無き楽観論で痛い目を見るのは、もう十分でしょう。
再考を強く求めると同時に、是非議席を獲得して「ヨネノミクス」と「ヨネケア」をはじめとする経済、財政、社会保障制度改革で、本当に強い日本経済を作りたいと思います(正直に言うと、これも相当程度に、「根拠無き楽観論」ではありますがー笑)。
ずばり消費税を今後上げていくための根拠となる各種指標類を改善することではないでしょうか。
1億人をまとめていくのは、誰がやっても難しいことでしょう。
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