安倍総理が、アメリカ議会で演説をし、大きな喝采を浴びました。演説原稿を読み上げているところを報道されたことはご愛嬌として、まずは日米の協調を高める良い演説であったと思います。
一方でバブル時代のジャパンバッシングを知る身としては、逆説的なもの悲しさも感じずにはおれませんでした。穿って見る必要もないのかもしれませんが、今回の演説の隠れた主役は、明らかに中国であったように思います。
尖閣での挑発を含め、中国の海洋進出に日本はアメリカなしに対抗できない。だからこそ安倍総理は、従前の態度とは打って変わって、面はゆいほどにアメリカの民主主義を褒め称えた様に見えます。
そしてアメリカは、AIIBでアメリカに煮え湯を飲ませつつあるライバル中国に対抗するために、一年前の訪日時とは打って変わって日本を歓待したように見えます。
それは裏を返せば、アメリカにとって日本はもはや警戒すべきライバルでは全くなく、離反を疑う必要すらない存在となったことを意味します。
バブル崩壊直後の1995年、日米中のGDPは 5.3兆ドル、7.6兆ドル、7000億ドルで、比率は 8:11:1 で日本はアメリカに迫り、中国はアメリカの1/10、日本の1/7にも足りませんでした。しかしそのわずか20年後の2015年、日米中のGDPは4兆ドル、18兆ドル、11兆ドル、その比率は 4:18:11 となっています。日本のGDPはもはやアメリカの1/4以下、中国の1/2以下であり、アメリカにとっても中国にとっても、日本はもはや単独で警戒すべき相手ではなくなっているのです。
そのような状況下で日本の唯一の生き残り策が対米協調であることに疑いはなく、安倍総理が極めて正しい現実認識のもとに、極めて正しい外交政策に舵をとったことに異論はありません。
しかし、安倍総理の昂揚感とは裏腹にそれは、アメリカがこれまで担ってきた若しくはこれから担うはずだった軍事的負担を日本が肩代わりすること、逆に言うなら、アメリカは軍事に使うお金を減らしてそれを経済成長に向け、日本は経済成長に向けるはずだったお金を軍事に使うことを意味します。これからの20年間、日本には未曽有の少子高齢化が訪れます。1995年~2015年の20年間でアメリカの1/4となった日本のGDPが次の20年でどうなるのか、そしてこの間15倍にも増加した中国のGDPはどうなるのか、その時本当に日米は今と同じ関係でいられるのか、私は空恐ろしさを感じます。
現在の日本に、アメリカとの協調戦略以外の選択肢がないことは、重ねて認めます。しかし日本の未来を考えるなら、アメリカから讃えられる昂揚感に我を失うことなく、自らの実力、GDPによって測られる国民の豊かさを高める努力こそが必要だと私は思います。
折しも今日日経平均は500円を超えて下落しました。「面白うて やがて悲しき 鵜飼かな」日本がそうならないために何をすべきか、何にお金を使うべきか、我々は真剣に考えるべきだと思います。
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